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2サイクル

 シナリオ二日目の朝。KPタブレットには、次のフェーズの情報や指示が映し出されている。


『N市レルムで自身が懸賞首として掛けられていることを発見します。準備フェーズ終了後、行動場所に応じて戦闘が確定で発生。襲撃については行動先を宣言後にプレイヤーへ通告』


 なるほど、今襲撃しますとは言えないわけで。こういうところでネタバレをせずに回していくのが、パラメータとかに反映されない実卓スキルみたいなところはある。


「朝になると、筋次郎はN市レルムへと足を運びます。いつものように賞金首リストを見ると――自分の名前が!」

「始まったな」


 筋次郎が懸賞状態となった。リベアレの世界で復讐をしたいのはPCだけではないからね。


「襲撃イベが来ると厄介だし、レルムの百面屋に顔を変えて貰おうか」

「新規キャラなので、コネやリソースが足りてないですね」


 一瞬訝しげな表情を浮かべた狩南だったが、すぐに短い頷きを返してきた。

 やはり、これまでのTRPGで相当使い込んだキャラなのか、前世の記憶……もとい前世のリソースに引っ張られたのかな。


「このまま行くか――不遜な輩には二ノ腕の腕前を見せてやる……すなわち、上腕二頭筋!」

「初期キャラの準備フェイズは割とやることないですよねー。上腕二頭筋さんの行動先を指定してください」

「俺は二ノ腕筋次郎だ……うん? 襲撃判定はないのか?」


 勘が鋭いな。あちらが疑問に思ったのなら、下手に隠さず、とはいえ誘導もせず、無難に返そうか。


「懸賞中と言ったらランダムイベだけど、細かい処理はシナリオによってまちまちなんでね。忘れてないから大丈夫だよ」

「それなら、神社へ向かう」


 さあ、このタイミングで襲撃者が明らかになるはず。ロールプレイもしたいが、今は進行も大事。というか、頭に入れながらのキーパリングはやはり忙しい。


「あ、なるほどね」

「なんだ、タブレットを見て妙に納得した顔をして」


 やべやべ、言ったそばから油断してるよ。


「神社ということで、このタイミングで襲撃が来ます。相手は……仇果衆!」

「なるほど……神社で仇果衆なら、モールではネメシスグループか」


 情報を告げると、あちらも妙に納得した顔を浮かべる。

 仇果衆は神職に由来があると言われる復讐者の組織で、神社とも関連が深い。このシナリオ、行く土地に関連した襲撃者が来るらしい。


「残りはシーパーク……何が来たんだろう」

「廻り送りの会とか? 自然災害に見せかけて人を殺すヤバ集団」

「それなら、神社で良かったかも――とはいえ、戦闘開始!」


 宣言と共に持っていたKPタブレットを机に置く。すると、ホログラムのように敵のアイコンと狩南の駒が投影される。NPCを動かすのはKPの役目だし、敵ではあるが気合を入れていこう。


「先手は俺か。通常を振る……成功。俺の両腕を食らいな!」


 判定に成功した狩南。


「返り討ちと言わんばかりに先制する筋次郎――ようやくPCの姿が拝めるよ」

「どういうことだ?」

「戦闘時のいくつかのアクションには、カットインが割り当てられてるんですよ」

「カットインね……」


 そんなことを言っていると、何もない空間に一つの映像が投影される。恰幅のいい青年が神職のような男性にラリアットをかます瞬間。まあまあシュールとも言える。


「こういう演出は実際のTRPGにも欲しいよなー」


 横目に狩南を見るが、その表情は厳しい。


「そういうことか」

「……妖怪の飼育員みたいなセリフと共に相手にぶちかます筋次郎。ダメージは……2点ですね」

「あれ、打点が低くないか?」

「RTRPGは基礎パラメータとか火力の計算も、セッションによって変わりますから」

「ステ振り段階で一部の情報がマスクされて見えなくなってたのも?」


 そう。実際のTRPGでは強い型などが限定されがちだが、RTRPGでは良くも悪くも一回ごとに値が変わるから、決め打ちが出来ない。しかも――


「狩南さんの予想通り、PLには見えないようになっている情報もありますね」

「クs……両腕をクラわせると言ったが、片腕だけだったようだ」


 ナチュラルに悪口を言いかけて踏みとどまる狩南さん。まあ、考え方によっては手探りなのも面白いみたいな所あるしな。


「事前に伝えてなくてすいませんね」

「気にしてはない」


 さて、頭を相手の行動に切り替えなくては。大技の抱え落ちは避けたいが、早く切りすぎても致命的か……?


「この恨み、晴らさでおくべきか。いや、まだ晴らさんでおこう……」

「とっとと来ないと腫れるのはてめえの方だぜ」


 通常技で筋次郎を攻撃! 判定は成功! ちなみにモブのカットインは基本的にない。悲しい。


「いて、堅実に削れるだけ削るつもりか――覚えておくぜ、テメェとの因縁もよお!」


 攻撃を受けると因縁というスタックが溜まり、必殺の一撃の火力が上がっていくのだ。まとめて食らわせられれば、戦いの内容がひっくり返ることも。


 ――何ターンか殴り合った末、徐々に削られた体力が致命的に。先撃ちにさせられたのはやや微妙だが、ベストは尽くさないとね。


「そろそろ見せようか、仇果衆の意地を。大社落とし! ――ここの神社を使って筋次郎を攻撃!」

「神……これ絶対恨まれる相手増えるだろ」


 因縁によって生まれる起死回生の一手こそ、復讐者の必殺技、リベンジアーツである。


「よしよし。次に倒せるなー」


 次はないことは自明。いや、行動を先に宣言する都合、ここで狩南が通常攻撃を選択していたら!


「こっちもリベンジアーツを切ろう――千筋烈苦!」

「いや足なんかい」


 演出に慣れてきたのか、山場となると興奮するのか、戦いが始まる前よりイキイキした表情に見える。

 まあ、どちらにせよこの戦い終わったな……。ダメージを決めるためにダイスを振る狩南。一回、二回……。


「なんか振る回数多くない?」

「クリ型だしな。キャラクリの時にマスクされてない中で、効果が明らかに強かったのを取った……もしかして、初期情報を看破するKP技能とかあるのか?」

「あー」

「絶対忘れてただろ! 食らえ!」


 必殺のカットインがホログラムに映し出され、ラッシュ系の足技がモブを襲う。さよなら数分間の相棒。


「グフ……TRPGあるある、ポイントの余りで取った技能存在を忘れがち」

「そうだけども!」


 壊れ気味に強いリベア拾えたのはデカいな。RTRPGをクリアしたときを想定してなかったけど、このセッションの経験値貰ったら情報看過伸ばそうか。


「ちなみに、仇果衆は余裕で爆散……無力化に成功します」

「わざわざ無力化と言い添えたと言うことはつまり、この後に襲撃者達に関連したパートが待っているということだな?」

「メタ読みやめてくださーい」


 とはいえ、KPタブレットに書いてある指示は中々癖がある。狩南、この後の尋問で必要な情報を拾ってくれよ……!

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