表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/3

2_最初の間違い

 (やった〜!今日はお買い得な食材、いっぱいゲットした)


 私は上機嫌で帰り道を歩いていた。両手に紙袋を提げて、鼻歌まで出ちゃうくらい。


 親はいないから、全部自分で稼いで生活してる。パン屋の仕事は給料カツカツで毎日大変だけど、節約しながら美味しいものを作るのが最近の楽しみになっていた。


 「明日は何作ろうかな……」なんて考えながら下を向いて歩いていたら――


 ドンッ!


 前から来た人とぶつかってしまった。


 「ご、ごめんなさいっ……!」


 慌てて顔を上げると、そこにいたのは……まるで絵画から抜け出したみたいな人だった。


 肩まで伸びた金髪が陽の光を浴びてキラキラ輝いて、眩しい。端正な男性が、心配そうに私を覗き込んできた。


 (……え、綺麗すぎ……)


 直視できなくて、思わず顔を背けた。


 「僕こそごめん! どこか痛いところはない……?」


 その声も優しくて、ドキドキしてしまう。


 「だ、大丈夫です……!」


 慌ててその場から逃げるように走ってしまった。


 ……家に着いてから、やっと気づいた。


 「あの人、怪我してないかな……? 私がぶつかったせいで……」


 反省しながら翌日パン屋に出勤すると――


 なんと、その人がお店にやってきた。


 「あの……昨日は本当にごめんなさい。怪我、大丈夫でしたか……?」


 彼の会計をしながら、おずおずと声をかけた。


 「あ! あの時の子! 僕、全然平気だよ。むしろ君の方が、僕固かったから痛かったんじゃない?」


 「ふふっ、何それ」


 貴公子みたいにキラキラしてるのに、話すとめっちゃ気さくで、思わず笑ってしまう。


 「僕、この町に来たばかりでさ。何も分からなくて……よかったら、いろいろ教えてくれない?」


 「うん、いいよ!私はシエル」


 私の名前を聞いた彼は、ほんの一瞬、目を少し見開いた。


 「……シエル、か。かわいい名前だね」


 小さく呟いて、にっこり笑う。


 「僕はルカ。よろしくね、シエル」




 それから一週間。

 ルカに誘われて、小さな食堂で一緒に夜ご飯を食べることになった。


 お酒も少し飲んで、会話がどんどん弾む。


 「お父さんもいないんだ。幼い頃に亡くなったみたいで……お母さんもあまり話してくれなかったから、どんな人だったのかよく知らないの」


 自然と家族の話になって、普段は友達にもあまり言わないことを、ルカには全部話してしまった。


 ルカは本当に聞き上手で、優しい目でじっと聞いてくれるから、つい心を開いてしまう。


 「お母さんが亡くなったのは、私が15の時。病気に気づいたとき、もう手遅れで……恩返しもできなかった」


 思い出したら、やっぱり涙がにじんできた。


 「シエル……!ごめん、辛いこと思い出させちゃって……」


 ルカが慌ててポケットから白いハンカチを出して、そっと差し出してくれた。


 「ううん、大丈夫。お酒のせいもあるし……ありがとう。大泣きしているように見えた?」


 「…………違う。ジェルの泣いてる顔、誰にも見られたくなくて」


 ルカは肘をついて、そっぽを向いてボソッと言う。

 よく見たら、耳まで真っ赤になっていた。


 「それって……ルカ、私のこと好きってこと?」


 冗談のつもりだった。だって、私みたいな普通の子が、ルカみたいな人に好かれるわけないと思ってたから。


 なのに――


 ルカの顔も、みるみる真っ赤になって。


 「まだ……伝えるつもりじゃなかったんだけど……!」


 彼は大きく息を吸って、私を真っ直ぐ見つめた。


 「僕と、付き合ってください……!」


 その瞳が、あまりにも真剣で。


 王都から来た商人で、5歳年上。いつまでこの町にいるかもわからない。出会ってまだ1週間なのに、本当に私のことが好きなのかもわからない。


 でも――


 ルカの必死な顔を見ていたら、胸の奥が熱くなって。


 「……うん」


 小さく、こくんと頷いた。


 「えっ? えっ? ガチで!? やったぁ〜!!」


 ルカは子供みたいにはしゃいで、私の手をぎゅっと握った。


 「シエル、絶対幸せにするから……!」


 年上なのに、こんなに可愛い人、初めて見た。


 私も、ルカと一緒にいたい――そう思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ