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神さまの下請け  作者: 城異 羽大
さまざまな神さま
9/9

神さまに欲しがられた



タクシーが目的地に着いた。

お代はいらないらしい。たぶんあの教主が出したのだろう。


薄暗い紫の夜空が少し狭く見える。

それなりに賑わっている住宅街だからだろう。車はあまり行き交ってないけれど、人はそれなりにいる。落ち着いたいい街だな。


でも胡散臭い宗教があるのか。地味に嫌だ。


ところ狭しに並ぶ民家に違和感なくあるそこそこ大きな会館。看板には『宗教法人 光色コウジキ教」と書かれていた。


教主も胡散臭ければ、場所も胡散臭い。


帰りたい。


「先に謝っとくね!ごめんね!」


何度か説明しろとは言ったが、これは求めていない。


ってか申し訳なさとかないだろ。むしろ俺の反応を楽しんでるようにも見えるんだけど。


「一応聞いとく。拒否権は?」


「君の予想通り。絶望しちゃダメよ?」


「もう一歩手前だ」


「終わったらまた褒めてあげる」


「、、、!!いらん!!!」


ボロ団地での仕事の後ナギに撫でられたのを思い出した。あの時は流れで受け入れたが、正気に戻った今、羞恥心が込み上げる。


忘れて欲しい。


ナギはニヤニヤ笑うだけだった。

これ以上からかう気はないらしい。


「それで今日のお相手は?」


会いたくもないが話題を変えたくて聞いてた。


「私がトカって呼んでる神さま」


「変な名前だな」


「あだ名だよ。神さまの名前は気軽に呼んではいけないから。君は思考がダダ漏れだしね。知らない方が都合がいいんだ」


「勝手に見てるだけだろ、、、」


「君は見えやすいんだよ。それに描けるってことは、伝える力が強いんだ」


わかるようなわからないような、、


「変なことは考えないようにね?」


「うるせぇ」


なんか話題を逸らされた気がする。


ナギは黙ったままポケットから鍵を取り出して、会館の扉を開ける。


いつもだったらからかってくるタイミングだったよな?





扉の向こうは左右に広がる長い廊下があった。すぐに教会みたいなのがあると思っていたから少し驚いた。左の奥にはまた扉がある。右には曲がり角が見える。電気はつけたままにしてくれたようだ。


「とりあえず表から行こうか」


「おう、、」


なにもわからないままナギに着いていく。


一度角を曲がって、また少し長い廊下を抜けた先に、荘厳な扉があった。


いかにも金かかってるな。


「今回は、気をつけてね?」


急に怖いことを言うなよ。やっぱヤバいのか。


「ちゃんとアタシが守ったげる!」


「命の危険とかあるの?」


「君を欲しがると思うんだよね〜」


「はぁ?」


「安心して?アンタは私のもんだから」


「俺はモノじゃないだけど、、?」


「話は私がするから、君は指示に従ってね」


俺の抗議も虚しく話を進められる。


「いい加減教えろよ!どんな神さまなんだ?」


「まぁ変わってるね。私が嫌いなタイプ」


教主に加えて神さまもか。


「なんでこの仕事受けたんだ?」


「いろいろあるの!」


教えてくれないらしい。


「ちなみにトカは最近機嫌が悪いんだよね」


嫌な情報がさらに増えた。


「ってことでシャキッとしな!」


ナギが急に背中を叩く。そのせいで背筋が伸びた。満足気に微笑んでナギは、扉を開けた。


さっさと済ませたいんだろうなぁ。俺は覚悟を決めて奥へ進んだ。





 中は白を基調とした広い空間が広がっていた。

長椅子が大量に並べられ、天井が高い。ところどころに金の装飾があって目がチカチカする。


正面奥には、壁に隣接するように半円型の低いの階段があり、頂上は少し見上げるくらいの高さ。

これは玉座だ。そして人が昇るためのものではない。


玉座には3mほどの大きな岩があった。


よく見るとしめ縄が施されており、しっかりと祀られている。でも少しおかしいのが壁から飛び出ているように見える。


そういえばナギが表と言っていた。

じゃあ裏がある。岩の露出していない部分は裏に繋がってるんのか。


ナギが振り返ってニタついた。どうやら正解のようだ。


ホール?と言えばいいのか、中に入るとおごそかで神聖な空気が流れている。たぶん力が強いんだろう。四畳半の一室とは、質が全然違った。


そして、少しピリついている


「トカ!来てやったよ!」


「ソラナギちゃん。だいぶ待ったわ?」


またあの感じだ。声は聞こえず、言葉だけ認識できる。それ体に響く感じがする。


「今はナギと言え!」


ナギが怒鳴った。


「だったわねぇ。そう怒らないでちょうだい」


「わざとでしょ?」


「なんのことかしら?」


空気が痺れる。冷や汗が出てきた。


「それでその子はなぁに?」


「アンタの依頼叶えに来た」


突き刺さるような視線を感じた。緊張感が重くのしかかる。全身をスキャンされてるような感覚でして脳が一切嘘を吐くなと信号を出している。


「ふぅん、、いいわね。それに、ふふ!」


「でしょ?」


「なんで私のとこに来なかったのかしら」


「あげないよ?」


「だめ?」


「ここ潰してアンタを抹消してもいいなら」


「あら、怖い」


静電気が身体中に纏わりついてる感じで、バチバチしてる。


どうしてこんなことになってんの?


ねぇ、俺のために争わないで。


マジで! 命の危機を感じるんだけど。


ナギと神さまはしばらく揉めていた。


お互いに威圧感を放ちながら。

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