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第7話

こんにちは。よろしくお願いします。

 ハルマの一言で凍った空気は王が来たことで戻った。アルフレドは、前の彼のように貼り付けた笑顔を見せていた。挨拶もほどほどに、王は席に着いた。


「新しい神子がそなたに会いたいと申してな。わざわざ登城してもらった。礼を言う。」


「いえ。」


 ハルマの方に目を向ければ、彼も私を見ていた。目が合うと楽しそうな笑みを見せた。つられて私も少し微笑めば、アルフレドが咳払いをした。


「非公式の呼び出しですが、何か問題でも起こったのですか。」


 アルフレドが率直に尋ねれば、王は座り直した。アルフレドを見た後、私に顔を向けた。


「エルピン侯爵夫人に、新たに神子になったハルマの世話を頼みたいのだ。もちろん、侍女の様なことではなく、神子としての祈りの仕方、魔法の使い方を指導願いたい。これは彼の頼みでもある。」


「同じ神子だった人なら安心だなと思いまして!嫌だなとか、無理だなと思うなら断ってもらって大丈夫です。」


 ハルマはそんな事を言うが、王は有無を言わせぬ様に私を見つめている。あらためて新しい神子に顔を向ける。この国が神子をどのように扱うのか、それをまだ知らない。彼はこの国の一般常識さえも怪しいだろう。年も私より下に見える彼を、そのままにはできない。私が口を開くよりも先に、アルフレドが口を開いた。


「…一度持ち帰らせてください。重要な依頼ですから、よく考えてから答えを出した方がいいでしょう。それに、我々はまだ新婚で、おまけに彼女は結婚式の後から休めておりませんので。よろしいでしょうか。」


「……急ぎではない。また後日手紙を送ろう。そこで返事を聞かせてほしい。」


 アルフレドはそれでいいかと私に聞いた。確かに急いで答えては相手の思うつぼ。冷静になる為にも、一度家に帰った方がいい。私は頷いた。ハルマも気にしていないようで、また会いましょうと笑顔を見せた。

 王とハルマから別れて、私とアルフレドは王城の廊下を歩いていた。彼がいなければ、こちらに不利な契約が結ばれていたかもしれない。


「アルフレド様、ありがとうございました。貴方がいなかったら、二つ返事で応えていたかもしれません。」


「いえ、陛下は返事を急ぐ癖がありますから。」


 馬車に乗り、王城を出れば、少し緊張が解ける。向かいの彼を見れば、こんな事を言い始めた。


「今回の神子、ハルマはこの国のことを知らない、世界のことも知らないでしょう。指導者が必要なのは理解できますが……王室と神殿で何かあったのでしょうね。」


 確かに、神子は神殿が面倒を見るのがいつものこと。外の神子でもそれは変わらない。それに、ハルマが王城にいるのも不思議な話だ。私に指導を頼む理由はなんだろうか。


「……あのハルマという神子について、エドナはどう思いましたか。」


「どう……そうですね、人懐っこい性格なのかとは思いました。」


 彼は私の意見を聞いて、しばし思案すると向き直った。これから言うことは他言してはならないような、そんな緊張感がある。彼が私の手を取る。


「おそらく陛下は、貴方とハルマを結婚させようと考えています。その為に接点を増やそうと指導などと話したのでは、と私は考えています。」


「私とハルマを?」


「ええ、神子と神子の結婚で、次代が生まれればよいと考えているのでしょう。神子と神子の婚姻は前例がありませんが、実験とでも思っているのではないかと…」


 だとすれば、王の言った指導係は、とんでもない提案である。もし、引き受けて部屋の中で二人にされてしまったら、既成事実だと言われかねない。


「私ではなく、神官達に指導はお願いすべきだと思います。それに…私はアルフレド様の、家族でいたいです。」


「必ずそうするようにしましょう。貴方と私が引き離されないように、ね?」


 娘として私を引き取ろうとしてくれたアルフレド。私を家族だと言ってくれる。私の勘違いだとわかってはいるが、口説かれているように聞こえてしまう。静々と頷けば、我が家が見えてきた。私達の家だ。

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