高校生という仕事
2年3組
『平社員』笠松 大地
高校生という仕事には一度だって失敗は許されない。それはリストラを意味する。だから俺は平社員のままでこの風下の位置を維持している。
波風立てることなく毎日を過ごすことに必死になって、楽しんでるひまなんてない。恋愛は不便。ほんとは嫌だけど断れば傷つけただの言われて居心地が悪くなるから付き合わざるを得ない。早く外に出たいと思う。卒業証書と思い出 って名前のついた退職金を貰って。
『課長』月城 雪子
高校生活は毎日がすごく楽しい。好きな人が居て、友達が居て、毎日バカやって。ここには大好きがたくさんある。その中でも大地くんは一番好きだ。彼はとってもクールだ。
告白してみた。断られちゃった。わたしの友達の優海と付き合ってることを初めて知った。ごめん、って言い合って笑って少し泣いて、わたしのほろ苦い初恋は終わった。
次の日に優海に呼ばれた。
……どうして? どうしてそんなことするの?
わたし、知らなかっただけなのに。
『監査役』木腹 龍治
俺は中学でいじめを受けていた。名前負けしてる。それだけが理由だった。以来、俺は人と関わることをしなくなった。高校生の俺は独立した特異点。ギラギラした敵意を振り撒いて誰も周りに寄せ付けない、孤独なやつ。
眺めて遊ぶ。それが俺。長瀬 優海の彼氏に月城 雪子がコクったのを教えたのは俺だ。あいつはこれから毎日が楽しくないだろう。滑稽だ。
ケタケタケタ
ケラケラケラ
眺めて遊ぶ。それが俺。
『重役』長瀬 優海
退屈。なんか、おもしろい遊び、ないかな。
『平社員』石垣 愛子
あ、月城さんかわいそう。
………………
うわ、なに? ちょっとこっち来ないでよ。
巻き添えとか死んでもごめんだし。
『平社員』遠藤 赤司
高校生ってのは一体全体なにを考えてるんだろう?
群れて、潰して、孤立して、自分殺して、ひま潰して、
お前らもっとやることないのかよ。
なんでお前らそんなに笑ってるのにちっとも楽しそうじゃねーんだよ。
それじゃまるで仕事みたいじゃないか。
『人事』山本 信吾
お、長瀬はまた学年トップか。我が校の誇りだなぁ。
月城のやつ、またこんな点数取ってやがる。まったくあいつはなんで学校来てるんだ?
職業小説企画っていうのを見てふと思い付いた話です