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神獣


 メアリーデはハルセントの騎士たちに向き直る。


「ハルセントの皆様、改めてよろしくお願いしますわ」


 セントハルの騎士たちは目の前で起きた出来事に驚いていた。


 マールス王国の王女の神聖力は他の人のそれより圧倒的に多く強い力を持つ。


 マールス国王の姫は女神の愛し子で特別自らの力を分け与えたと云われている。


「皆様?」


 女神の愛し子はマールス王国にしか生まれない。そのため今のような光景は見慣れないのだ。


 その力に圧倒されていたセントハルの騎士たちだがすぐに切り替える。


「姫様の素晴らしい神聖力に圧倒されていました。素晴らしいですね」

「そうでしょう。あれでバッタバッタと魔物を斬り倒すと達成感が「ゴホゴホ!!」あらあらー神聖力を使いすぎてふらふらになっちゃったわぁ」


 メアリーデは後ろに控えるクレランスの咳払いでか弱王女を思い出す。


「大丈夫ですか?姫様、少し休憩してから参りましょうか」

「あら、大丈夫よ。早く面白い皇帝に会いた」


 後ろから再びクレランスのゴホゴホという咳き込みが聞こえる。


「ゴホゴホーゴホ!!」

(か弱王女で!!)


「えっとぉ、早く王宮に着きたいから休憩は良いわぁ」

「そうですか。では姫様を抱えて行くのはどうでしょうか」

「あらまあ!!抱えられるの!?」

「はい、お身体に触れても?」

「ええ!!」


 ターニャは軽々とメアリーデを横抱きにする。


「すごいわ!!女性に抱き上げられるなんて幼い頃以来!!」


 興奮するメアリーデにまたも後ろからゴホゴホ咳き込む声がする。


「ゴホゴホーゴ、ゴホ!!」

(か弱王女、しろ!!)


 主に暴言だわ、さすがクレランスと怒るでもなく面白がるメアリーデ。


 ちなみにこのクレランスの咳き込みでの会話はメアリーデが公務をする時に多様される言語だ。


「姫様、このまま進んでよろしいでしょうか?」

「もちろん!!」


 もはやか弱王女を装えないメアリーデに頭を抱えるクレランス。


 一行は魔の森を進んでいく。


「ターニャは昔から騎士を目指していたの?」

「はい」

「毎日鍛えてるの?腕が固いわ」


 そう言ってターニャの腕をつついてみるメアリーデ。


「あはは、姫様はとても知りたがりのようですね」

「ねぇ、教えてちょうだい」

「毎日鍛えてますし兄と手合わせしたりしますね」

「お兄様はどんな方?」

「兄は岩のような男です」

「岩?」

「はい、岩のように頑丈で無口なのでぶつかってもびくともしないのです」

「まあ!!」

「幼い頃岩と間違えて兄によじ登っても母が呼びにくるまで数時間物も言わずじっと座っていたのですよ」

「嘘!!」

「岩と間違えたのは嘘ですが数時間なにも言わずにじっとしていたのは本当です」

「えー!!ふふふ、面白いわ」

「姫様はお可愛らしい」

「キューーー!!」


 突然が甲高い鳴き声が聞こえ一同は警戒する


「姫様、魔物です」

「まあ、魔物?」


 ちょっと行って倒してこようと思ったメアリーデはターニャに下ろしてもらう。


「姫様、こちらでお待ちください」


 当然守るために騎士たちに囲まれたメアリーデは魔物を探す。


「あ、いたわ!!」


 熊のような姿をした魔物3体が木を取り囲んでいた。


「木に何かいるのかしら……」

「キュイー!!」

「あれだわ!!毛玉!!」


 木の枝にいた白い毛玉と目が合ったメアリーデはクレランスの腕を興奮しながら叩く。


「クレランス、見て、あの毛玉目があったわ!!目が合ったの!!」

「メアリーデ様、おかしなことを言ってないで静かにしてください」


 いつも魔物退治に行くメアリーデに付き添うクレランスは怯えるセレナを宥めながら騎士たちの邪魔をしないようにメアリーデに注意する。


 その間に騎士たちはあっという間に魔物を騎士が倒す。


「ターニャ、あの毛玉は何かしら?」

「あれは神獣です」

「まあ、あれが!!」


 神獣は神の目と云われ神様の代わりに世界を見ている神聖な生き物。


 メアリーデは魔物が浄化された場所に駆け寄り木を見上げる。


「神獣様、降りて大丈夫ですわ」

「キュイ……」

「まあ、怖がりな神獣様ですわね。良いですわ、私が助けて差し上げます」


 メアリーデは魔法で風を操り神獣をふわりと持ち上げそっと下に降ろし抱き抱える。


「キュイ……?」

「ええ、もう大丈夫ですわ」

「キュイー!!」


 神獣はメアリーデの胸に体を擦り寄せた。


「まあ可愛い!!見てクレランス、セレナ!!」

「神獣ってこういう生き物でしたっけ……?」

「ターニャ、神獣連れていって良いかしら?神獣って飼える?」

「え?えっと……恐らく。陛下の側にも神獣がいますから」

「え!!皇帝のそばに毛玉!?」

「あ、いえ、神獣にも様々いまして、陛下のそばには狼の神獣がいます」

「まあ……」

「なんで毛玉と狼なんでしょう……」

「そうよねぇ、せめて動物にしてあげれば良いのに」

「あの、姫様、その神獣うさぎです」

「え?」

「うさぎです」


 ターニャの言葉にメアリーデは毛玉を顔の高さまで持ち上げる。


「神獣様はうさぎですの?」

「キュイ!!」

「毛玉じゃなくて?」

「キュイ!!」

「……」


 どう見ても白い毛玉に藍色の目があるように見える。


「まあどっちでも良いかしらね。とにかく名前よ。名前をつけなくちゃ。キュイって鳴くからキユイ……キウイにしましょ!!美味しそうだし」

「キュイ!?」


 毛玉の神獣、ではなくうさぎの神獣は慌ててメアリーデの腕から飛び出すとセレナの頭の上を踏み台にしてターニャの腕に収まった。


「嫌ねキウイったら。食べないわよ」

「キュイ?」

「本当よ」

「メアリーデ様、先程から神獣の言葉がわかるのですか?」

「わからないけどなんとなくよ。ほら、キウイ」


 ターニャの腕に抱かれる神獣に向かって腕を差し出す。


「キュイ……キュイ!!」


 ターニャの腕からポンと飛び出してメアリーデの腕に戻る神獣。


「さ、それじゃあ行きましょうか。楽しみだわ悪魔皇帝」

「……メアリーデ様」

「ん?クレランスどうしたの?」

「意味ないかもしれませんが……ゴホゴホーゴホ!!」

「あ……」


 もはやか弱王女のかの字もなかった。


「わ、わぁん、慣れないことして疲れちゃったわぁ」

「姫様、休憩されますか?それともハルセントに急ぎますか?」


 座り込むメアリーデの前にターニャが立て膝をついて笑いかけて手を差し出す。


「陛下にお会いになりたいのでしょう?」

「ええ!!」


 メアリーデは差し出された手を取って立ち上がる。


「……立派なか弱王女になられましたよ陛下」

「ん?ターニャ、何か言った?」

「いいえ。それでは行きましょう」


 そしてメアリーデたちは魔の森を進みハルセントにたどり着いた。

 



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