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神聖力

ターニャの父親について修正しています。


「さ、今日は遂に王宮に着くわよ。完璧なか弱王女にしてちょうだいな」


 マールス王国を出発したのは3日前。途中で宿に泊まったメアリーデは化粧品を用意した侍女たちに催促する。


 メアリーデは化粧をしなくても可愛らしい顔立ちだがクレランスによる化粧を施すと誰が見ても臆病なか弱い王女らしくなるのだ。


「あーあー……怖いですぅお姉様ぁ。ひゃーお母様ー助けてー」


 メアリーデにとって完璧なか弱王女の見本は妹だった。妹が言いそうなことを口にすることで演技に磨きをかけている。これがメアリーデの日課だった。


「でも可笑しな話よね。私だから蛾が飛んできて助けてって言われてもパッと払えるけどお母様じゃ一緒になって助けてって叫んでるのよ?助けにならないじゃない」

「私も蛾は怖いですー。お友達と抱き合って助けてーって言っているとお兄様がいつも助けてくれましたわ」

「マールスの女というのは女同士で助けてと言っても互いに助けになるとは思っていないのですよメアリーデ様」

「ふーん」

「恋だってそうです!!殿方の姿を見てどうしたらお近づきになれるかしらって相談してもどうすれば良いのかと答えは求めてないのですわ!!」

「それは意味があるの?私なら的確なアドバイスをしてあげるわ」

「メアリーデ様に恋愛相談などできましょうか……」

「私だって相談に乗ることくらいできるわ。あなたたち、好きな人ができたら私に何でも相談してちょうだい」


 メアリーデたちは話しながら支度を済ませ宿を出発した。




 そしてハルセント帝国の手前、魔の森にたどり着く直前。


「姫様、私たちはここまでです。魔の森からはハルセントの騎士たちが護衛します」

「ふぇーん、私とっても怖ぁい」

「はい、その調子で頑張ってください姫様」


 ここまで護衛してきた騎士団長はメアリーデに笑いかける。


「どうせ魔の森わくわくしちゃうわ、とでも思ってらっしゃるのでしょう?」

「コホン……だって魔の森よ?挑みがいもあるってものじゃない」


 メアリーデが幼い頃兄たちの訓練に紛れていた際兄たちの剣の指導をしていた団長は苦笑いで答える。


「いくら姫様の神聖力が並外れてるとはいえ、魔の森は危険な場所です。油断なさいませんよう」


 魔物に対抗する一般的な手段は神聖力と呼ばれる力だ。神聖力は魔物に使えば浄化、人に使えば治癒や守護の力になる。


 神聖力を持つマールス王国の王女は女神の愛し子と呼ばれ、その力を騎士や国民の加護に使っていた。


 そんな神聖力で密かに魔物退治をしてきたメアリーデは手首を回してニヤリと笑う。


「腕がなるわねぇ」

「腕試ししては駄目ですよメアリーデ様」


 黙って2人のやりとりを見ていたクレランスがピシャリと釘を刺す。


「見てください。あんなにハルセントの騎士様がいらしているのです。守ってもらうのです。か弱王女に徹してくださいませ」

「えー……あら?見て、あの騎士の方、女性ではないかしら」


 メアリーデの言う通り魔の森の手前で整列する騎士たちの中に1人女性がいた。


「ハルセントでは女性騎士もいると聞いたことがあります」

「まあ、凄いわ。私も騎士になれるかしら」


 目を輝かせて言うメアリーデに周りは沈黙する。


「メアリーデ様、メアリーデ様がおなりになるのはか弱皇后です」


 またもクレランスがピシャリと言う。


「こっそり副業ってことで騎士もできないかしら」

「マールス王国ではないのですから無理でしょう」

「いつもみたいにセレナが私の代わりを」

「む、無理ですぅ!!」


 メアリーデがこっそり魔物退治をしている間メアリーデの代役をしていたのはセレナだった。もっとも、国王や王子たちの知るところだったため口裏を合わせは完璧だったのだが。


「マールスではないのですからそのようなことはできません」

「えーケチねぇ」


 そうこうしている間に馬車は魔の森手前まで着いた。


「マールス王国第一王女メアリーデ・マールスですわぁ」

「ターニャ・エスキャリーデと申します。ここからの護衛はハルセント帝国騎士団が務めます」

「ええ、よろしくお願いね」


 メアリーデは一国の王女らしく堂々と、しかし庇護欲を掻き立てられるように言う。


「魔の森は恐ろしい場所なのでしょう。私とっても怖いのぉ」

「ご安心ください。私たちはみな魔の森を知り尽くす精鋭です。必ず姫様をお守りいたします」

「まあ……」


 メアリーデがか弱王女を演じられたのはここまでだった。


「まあまあまあ、女性騎士で精鋭なのね!!強いのね!!」

「はい、我が国は女性でも実力主義ですから。私は本日より姫様の近衛騎士となりましたが先日まで騎士団第二部隊隊長を務めていました」

「まあ!!私とあまり変わらない年に見えるのにすごいわ!!」

「ありがとうございます。私は19になりますので姫様の2つ上ですね」

「19!!そういえばエスキャリーデというのは騎士の家系ね」

「はい。父が引退していますが騎士団の元将軍、兄が陛下の近衛を務めています」

「姫様、姫様、私たちはこれで」


 騎士団長の言葉にメアリーデはか弱王女を思い出す。


「ええ、皆ここまでありがとう。女神メアリーナ様、これから先も皆をお守りください」


 メアリーデが胸の前で手を組み祈りを捧げるとメアリーデの体が黄金に光り立て膝をつく騎士たちが一瞬その光に包まれた。


 騎士たちはメアリーデに感謝の言葉を伝えマールス王国へと戻っていった。



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