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  作者: 縄奥
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8話

◆◆◆◆◆8話




 「よっこらせぇー! よいっこらせぇー!」と、白で覆われた里の一軒家の軒下に響く、人々の声が白い衣を纏った木々の間を駆け抜ける。




 一切れのみかんを横にしたような木に、薄くて細い鉄板を釘で打ちそれを地面に置いて上から板を横に並べて打ち付ける。




 家々で異なった形を持つソリは雪ん子たちの遊び道具を兼ねながら、その上に大きな樽をのせ大人たちが掛け声と共に、積もった白を入れては遠くに運び出す。




 樽に白を入れる道具は木で出来ていて、塵取りのオバケのように大きくズッシリと重い、縦横40センチほどだろうか山から切り出した太さ10センチの枝を、針金でその塵取りのオバケに縛りつけて使う。


 


 ただでさえ重たい道具だが、里に生きる人々の暮らしを支える重要な任を担っている。




 そんな道具を、密かに大人たちの横で真ん丸い目をしてソリを引いて手伝う雪ん子たちが尊敬の眼差しで見守っている。




 山積みになった大きな樽を載せたソリを後ろから押す、女衆と積み込んではソリについた縄を引く男衆は「よっこらせぇー!」と、力を合わせる。




 白にも負けぬほどの白く透明な吐息を立てながら男も女も「よっこらせぇー!」と、掛け声と共に平らに積もった白の上に二本の細い線をうがい手行く。




 ソリで運んだ白は御爺さんが藁靴を履いた足で無言で踏み固めている。


側で御爺さんに負けまいと、小さな藁靴も時折り白にズボッと嵌りながらも一緒に白い吐息を吐きだす。




 足を休めることなく御爺さんが側の雪ん子に「坊ーも、早く団扇が使えるようになりゃえぇなぁ~♪」と、白いヒゲを緩ませて笑う。




 時折り吹く雪風に鼻の頭を紅く染め、小さなチャンチャンコの裾を揺らしながら御爺さんに見入る雪ん子。




 運ばれて来た白と真剣勝負をするがこどく、大きな団扇の枝を肩に掛けて奮闘する少し大きい雪ん子も、後ろの方で樽に白を積み込む大人たちに負けじとばかり顔を顰める。




 肩に天秤棒を乗せてザルに入れた白を運ぶ御婆ちゃんが「こりゃこりゃ、まんだ早いってばー♪」と、奮闘する雪ん子に頬を緩ませる。




 家の周りは、雪ん子たちの気迫に押された大人たちが白い吐息を吐くたびに地面を平らにして行くと、やがて白のしたから緑が顔を出し始める。




 白の下から見え隠れする緑に円を描くように雪ん子たちが、シャガんでジーッと見入ると「じーじー! ばーば!」と、大きな声で雪ん子。




 頬を伝う汗を手拭いで拭きながら、御爺さんと御婆さんが雪ん子の側へゆっくりと近づくと、雪ん子が「ほれほれー!」と、目を真ん丸くして小さな指を指す。




 御爺さんと御婆さんも雪ん子たちの輪に入って、久々に見る緑に見入っていた。




 何もない山の里では白の下から見える緑がなにより御馳走だったのかも知れない。






 じーじー! オラもおっきくなったら団扇でいっぱい緑色出すんだ!! 緑の上に寄り添う雪ん子達だった……






 ※団扇(木で出来た雪かきスコップのことで15キロほどの重みで使うたびに重量は増して行く)


  


 ※里では団扇を使えることが大人の証とされ、雪ん子たちの憧れの道具の一つでもある。




 


  




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