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  作者: 縄奥
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26話

◆◆◆◆◆26話






 白の上を黒々と覆い尽くし、家の周りの畑と言う畑がまるで暗闇に染まるかのような光景が延々と続く。




 アチコチの畑の隅では青白い煙がモクモクと空に舞い上がり、見上げれば白く大きな流れる雲ですら青白く見えるほどだ。




 里人たちは手を顔を黒に染め、白の上に豆撒きでも始めるように音頭リズムをとりながら、畑の上に圧し掛かる白の上にサラサラと蒔いている。




 時折り吹く風の方向に敏速に反応するように、身体の位置を変え微妙な手さばきで黒を袋から取っては白の上に塗して行く。




 黒は里人の手から放たれると、風に乗ってスゥーッと大きく扇状に広がり数メートル先へと、タンポポの種子のように飛んでは白を覆う。




 緩い傾斜地を溶ける白の上をゆっくり上れば、遥か遠くにまで視界は広がり大地を覆う白の上に黒い絨毯が何処までも続いている。




 風に乗って里人の声が遠く離れた場所から飛んで来ては、まるで直ぐ側に人が居るごとくの錯覚に陥る。




 目を瞑って耳を澄ませば、ヒヒイーィンと馬の声や、鶏の鳴き声が飛び交う中に、里人の楽しげな笑い声、雪ん子たちの元気な声、わっはははは♪と言う何処かの年寄りの声に包まれる一時ひととき。




 青白い煙は、流れる空の上の雲に届けとばかりに立ち上り、お日様に背を向け輪を描く鳶トンビも煙いとばかりに「ピィーヒョロヒョロヒョロ~♪」と、途中で輪を止め遠くへと逃げて行く。




 そして高台から見渡せば無数に立ち上る青白い煙の中に、ポツンポツンと黒と白の混ざった煙が、青白い煙に負けるなとばかりに空に吸い込まれ溶け込んで行く。




 里家から少し離れた風呂屋敷ふろばでは、女子衆おなごしゅうが水を汲み上げ、手も顔も真っ黒に染め煙突掃除をして、積み上げた薪を湯沸し釜に入れ勢い良く燃やす。




 燃やされた薪からは、黒と白の混ざった煙が煙突を伝って空に吸い込まれ「ボッボッボッ!」と、威勢の良い音を辺りに響かせる。




 風呂屋の中の神棚には、濁酒と塩が供えられその真下には一升の濁酒どぶろくの入った樽と、漁村から分けて貰った干した魚が大ザルに盛られていた。




 風呂屋の外では大勢の雪ん子たちが、積み上げられた薪を手に手にしっかりと持っては次々に釜場へと入って行き手も顔も真っ黒に染まった。




 今日は畑で燃やした藁で出来た灰を、里人たちが豊作を祈りながら大地を覆う白を天に返す日だったようだ。




 真っ黒になった男衆おとこしゅうを、真っ黒になった女子衆おなごしゅうと、真っ黒になった雪ん子たちが一年に一度真っ黒になって春を呼び込む大切な一日だったようだ。




 数軒で共同で作った風呂屋ふろばが一段と賑わう一日でもあった。




 

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