23話
◆◆◆◆◆23話
家中の囲炉裏の前に敷いている布を被せた藁で編んだムシロを、モンペ姿の御婆さんが何やら丸めている。
チャンチャンコを羽織った雪ん子が外から家中に戻ると「ばぁーばー」と、小さな手を御婆さんの肩にそっと乗せると「今なぁ~坊さ、めぇーもん(美味い物)さ作って食わせっどぉー♪」と、赤いホッペをそっと撫でた。
布をムシロから外した御婆さんは「ドッコイショ」と、一声掛けると外して丸めたムシロを「ヒョィッ」と、持ち上げ土間へと降りると「タッタタタッ」と、雪ん子も後を追いかけて来た。
土間へ降りた御婆さんが、土間で農具の手入れをしていた御爺さんに「おどぉー いいべが?」と、準備が整ったことを知らせると「おぉー 坊も一緒だったがぁ、あっははは♪」と、白いヒゲを緩ませた。
家のアチコチから集められたムシロを、玄関の横に置いてある手押し車に御婆さんが乗せると「よっこらせ~」と、御爺さんが手押し車を押し始めたる
玄関から御婆さんに手を引かれた雪ん子が、おぼつかない足取りで御爺さんの後を追うと「ばぁばー! 忘れもんだぁ~」と、雪ん子のお母さんがカマを持って駆け寄っる。
家の前の一つ目の畑の端に来た御爺さんが「どっこいしょ」と、手押し車を置くと木の切り株に腰を降ろし「おどぉ、ほりゃ♪」と、御婆さんからカマを渡された。
古く厚みの無くなったムシロをカマで半紙ほどの大きさに切って行くと、叔母さんは畑の端に古くなって活字も読めなくなった一冊の雑誌を出して「ビリビリビリッ! モヒャモヒャモヒャ!」と、裂いた紙を丸め黒の上に置くと、マッチで火をつけた。
風も無い畑の端っこで「ポッ! ポッ!」と、赤い炎と白い煙が空に舞い上がると「ほいさ♪」と、御爺さんが切り取ったムシロをそっと炎にかぶせた。
その光景に見入った雪ん子は目を細め、御婆さんの陰に「スッー」と、隠れては時折り顔を出して少しずつ火が回るムシロに見入った。
小さな焚き火は少しずつ大きくなり「ほほぉぅ♪ 燃えたのおぅ~♪」と、御爺さんが頬を緩ませると「どりゃどりゃ!」と、御婆さんは雪ん子の手を引いて、少し離れたコンモリと盛り上がった黒をを置いてあった鍬クワで掘り起こした。
御婆さんが肩から掛けてあった担ぎ籠を、黒の上に置いて掘り起こすと「うわあぁ♪」と、目を輝かせて「ばぁーばー」と、雪ん子も一緒に小さな両手を穴の中に入れた。
黒に塗れた紫色を手にとって、ニッコリと微笑む雪ん子は籠の中に紫を放り投げると、嬉しそうにピョンピョンと跳ねるように籠と穴を往復した。
パチパチと音を出して勢い良く燃える焚き火の中に「ヒョイッ」と、御爺さんが紫色を放り込むと手押し車に一緒に積んで来た湿気った薪をを、焚き火の中に数本投げ入れると「じゅうぅぅー、じゅわあぁぁー!」と、勢い良く燃えている焚き火は徐々に衰えていった。
雪ん子を挟むように手を繋いだ御爺さんと御婆さんは、雪ん子の歩みに合わせ白の中に伸びる黒と緑の上を散歩して歩いた。
白で覆われていた場所から顔を出す案山子や、小さな緑が点々と顔を出した木々に白が姿を変え出来た水溜や小川へと雪ん子に話し掛けながら歩みを合わせた。
雪ん子の白いホッペが赤々に変わり始める頃「おどぉー♪ そろそろええべかねぇ~♪」と、御婆さんが御爺さんに聞くと「うんだなぁ~♪」と、返事して雪ん子のホッペを軽く撫でた御爺さん。
御爺さんと御婆さんに挟まれて、熱々のホッカホッカの紫に「ふぅ~♪ ふぅ~♪」と、笑顔を見せる雪ん子だった。
「山から貰ろた物は山に返せばぁ♪ ほりゃ♪ こんだに、うめぇもんを授けて貰えるでなぁ~♪」と、紫を頬張る雪ん子に、言い聞かせるようにムシロを少しずつ燃やす御爺さんと御婆さんだった。
そして紫も焼きあがって雪ん子も満腹とばかりに立ち上がると、残り火に小さな両手で白を掬って来ては「じゃぁぁー♪」と、楽しそうに残り火の上に投げ入れた。
白は残り火を消し黒の上へと姿を変えて流れて消えると、白い煙が天へと駆け上って行った。




