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  作者: 縄奥
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21話

◆◆◆◆◆21話






 北風が東の風そして北風へと交互に変る頃、麓の方から最後の活躍とばかりに黒と緑と白に塗れた馬ソリが尋ねた。




 馬の鼻から出る湯気も白から透明へと変化を伴い、白が少なくなった所為か幾分、ソリ引く馬も辛そうに見える。




 馬の首にぶら下げられた大きな鈴の音が里の家に届くと玄関の並び、家の端っこの大きな扉が開いて「しばらくだのぉ!」と、手をふる家人たち。




 濡れた黒の上に木で出来た箱を置き、次々に家の中から箱の上に置かれる折り畳まれた物は、お日様の陽にキラキラと輝き黄金色を照り返す。




 麓から来て馬ソリから降りた馬主は頬かむりではなく、首に手拭いを巻きつけ里が確実に春になっているとこを無言で表している。




 馬の身体を労とうように大きな布タオルでゴシゴシと、汗と汚れを拭き取っては頭を撫でる馬主を心地よいとばかりに目を瞑る馬。




 家の歌人達に背を向け、馬を労とう馬主の後ろから「よっこらせぇ! よっこらせぇ!」と、家人たちが忙しく何かを運んでいる。




 後ろの家人たちの「よっこらせぇ!」に、合わせる様に馬主の口からも「よっこらせぇ!」と、馬主が馬の腹辺りに手を伸ばすと「お馬しゃん、ほれぇ♪」と、毛糸の帽子にチャンチャンコ姿の雪ん子が木桶を持って来て橙色を馬に与えた。




 美味しそうに馬の頬も緩みを、雪ん子に何度も頭を下げ御礼をいいながら「ポリポリポリ」と橙色を食べ喜んでいる。




 馬主の後ろの「よっこらせぇ!」の掛け声も止まると「馬主さん! これで全部だぁ♪」と、家人たちの声も弾み「ひぃ、ふぅ、みぃ」と、馬を拭き終えて布をソリに積み込むと家人たちの運んだ物を数え始めた。




 数え終えた馬主が家人に「全部で11反だなぁ」と、手帳に筆記を始めると「いんやぁ馬主さ~ん、10反だってばよおぅ♪ あっははははぁ~♪」と、家人が照れ笑いすると馬主が「いんやぁ~ 確かに11反ある」と、もう一度数えた。




 不思議そうな顔して見入る家人たちの前で馬主は「ひぃ、ふぅ、みぃ」と数え「ここのつ、とお」と、箱の上の物を数え終えると箱の上から数える指を避け、雪ん子を指差して「じゅういち!」と、声を少し大きくした。




 えっ? と言う顔をする家人たちを一瞬だけ見た馬主は突然ニコニコして、雪ん子を見ると「一反は、坊ーの分だで、坊から馬さ褒美もらったでその御返しと、坊への馬っこだぁ~♪」と、雪ん子の頭を愛おしそうに撫でた。




 すると家人たちは皆、馬主に「すまねえなぁ、馬主さんよぉ~」と深々と頭を下げると馬主は「おらの子供みてぇな馬っこへの心尽くしもろおうたでなぁ♪」と、嬉しそうに微笑む馬主だった。




 そして家人たちの前で馬主が「どりゃどりゃ! 少し遅いが、馬まさ乗せるがぁ!」と、言うと箱に積み上げられた物を馬の背中に引くと「ほうりゃ♪ 坊ー! 今年一年良い年でありますように!」と、雪ん子を抱いて馬の上に乗せると、一斉に家人たちは拍手して馬主に感謝した。




 家人たちは馬ソリに厳しい冬の間に、一生懸命作った黄金色に輝く筵ムシロを丁寧に積み終えると、家を後にした馬主が見えなくなるまで雪ん子を抱っこして見守っていたと言う。




 


 ※橙色にんじん


 ※黄金色(藁で編んだ縦180・横90のムシロ)


 ※馬まに乗せる(動物の馬ではなく、お年玉の意味で馬に乗るのは身分の高い者、又は大金持ちであるから、馬に乗せる=金持ちになると言う意味)


 ※ムシロは里から買われ、馬主たちはそれを漁村や集落に行き毎年、交渉して売買をしている


 ※価格は全国ではなくその地域単位の相場で値が付けられ年号、場所にも依るが一反あたり2万円位だった


 





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