19話
◆◆◆◆◆19話
白が姿を変え黒が目立ち始める頃、里人の家の中では囲炉裏の上の渡し網の上に橙色が並べられ、その横に鶯うぐいす色に塗れた白い四角い物が鼻チョウチンを時折り見せる。
囲炉裏を囲む家人たちは白の終わる季節を皆が、思い思いの何かを心に描き囲炉裏を見詰めては何を語る訳でもなく、ただジーッとして揺らぐ炎に見入る。
渡し網の上の橙色に切れ目が入ると「プスプス」と白い湯気が立ち上がり、ツゥーンと鼻を突く甘酸っぱさと何かが焦げたような匂いが家人たちを包み込む。
鶯色に覆われた白の四角から大きな鼻チョウチンが壊れては出て、出ては壊れるを繰返すと60センチはあろうかと言う、長い鉄の箸で「ヒョイッ!」っとひっくり返された。
囲炉裏を囲む家人たちの前には、醤油と味噌が入った木の皿に家人が作ったであろう手製の箸が添えられ「さぁ! これで終わったでゃ!」と、御婆ちゃんがが一声掛けた。
すると御爺ちゃんが「よおぅも、まぁまぁみんな頑張ったなぁ!」と、囲炉裏を囲む家人たちを確かめるように見て声を掛けると、正座していた家人たちはようやく足を崩しコンガリと焼けて香ばしい匂いを漂わせる餅に手を伸ばした。
囲炉裏の真横に爺ちゃんと婆ちゃん、向こう側には雪ん子の父親とその横に大きい年の順に雪ん子が並び、そして竈かまどを預かる雪ん子たちの母親が左右を仕切るように座る。
渡し網から下げられた橙色は囲炉裏を囲む一番手前側の木の縁に並べられると「いただきますっ!」と、全員が声を揃えて囲炉裏の炎に手を合わせた。
厳しい寒さから命を守って下さった火の神様への感謝の念だったようである。
餅を食べた後はコンガリと焼けた、ミカンの皮を手の上で踊らせながら剥いて「ハフハフ」しながら暖かく甘酸っぱいミカンをみんなで食べた。
橙色みかんは子孫が代々続きますようにとの願いが込められていたと言う。