13話
◆◆◆◆◆13話
外から戻った雪ん子たちを、薄暗い土間の中で藁を打つ御婆さんがニッコリ頬を緩ませる。
雪ん子たちの着物の裾が白から土色に変る頃、閉ざされた窓の雪囲いを外ではずす御爺さんと雪ん子の父親の掛け声にも張りが感じられる。
薄暗かった土間から入る陽の光に、深々と頭を下げ両手を合わせて感謝する御婆さんに雪ん子が「ばーばー♪ ほれ♪」と、小さな両手に零れそうなほどの蕗の薹を見せる。
蕗の薹を御婆さんに嬉しそうに手渡すと、雪ん子は土間から上にあがり込み、外から次々に入る陽の光を追いかけるように家中を駆け回っては歓声をあげた。
屋根に降り積もった白はその量を減らし、囲炉裏の真上にも数ヶ月ぶりの陽の光が立ち込めさせると、赤かった囲炉裏の炎は恥ずかしそうに薄色に変わった。
台所からも「わあぁぁーー♪」と、喜びの声を上げて出て来た雪ん子の御母さんが「ばっちゃーん♪」と、嬉しそうに御婆さんと顔を見合わせる。
薄暗く側まで行かないと解りづらかった壁掛け時計が「ゴォ~ン♪ ゴォーン♪」と、数ヶ月ぶりの陽の光を出迎えると「いんやぁ~腹減ったー♪ あっはははは~♪」と、土間の引き戸が開いた。
ほんのりと緑と土の香りが土間に漂うと、台所の方から負けじとばかりに味噌汁の匂いが立ち込めた。
笑顔で陽の光を浴びて、囲炉裏を囲む家族たちの椀の中には蕗の薹みどりが浮かんでいた……
お日様に感謝しながら暮らす里の家族の心は澄んでいた……