11話
◆◆◆◆◆11話
陽の光が白の水平線に隠れる頃、雪ん子たちはぞろぞろと数珠のように連なって、大きい雪ん子を先頭に徐々に後ろは小さく並ぶ。
空に浮かんだ丸い月が雪ん子達の足元を照らし、白を纏った木々が道標の任を担う。
大きい順に月明かりで出来た影が白の上に黒い柱を醸し出す。
ザクザクザクと藁の長靴の向こう側に白い煙がモクモク見え隠れすると、後ろの小さな雪ん子が「わあぁぁーい♪」と、喜びいさんで前に出る。
すると前を歩く大きめの雪ん子が「オバケが出るぞぉぅ~」と後ろから近寄る小さな雪ん子を脅かすと、慌てて元の場所へ「うわぁー!」と戻る小さな雪ん子たち。
それでも暫くすると小さな雪ん子たちは我慢出来ずに「ソロリソロリ」と、前に来ると二番目に大きい雪ん子が「うわぁ! オバケだぁ!」と、屈みながら辺りをキョロキョロして低い声を出す。
それを何度も繰返し、ようやく煙の出るところへ来ると突然「うわぁー!」と、声を上げて小さな雪ん子たちは一斉に、引き戸から明かりにしがみ付いた。
中から「あーっはははは♪ オバケは出ねがったがなぁ~♪」と、笑みを浮かべて雪ん子たちを見回しながら出て来た白いヒゲの御爺さん。
この時ばかりは小さな雪ん子たちが先頭きって、御爺さんの腰に纏わり付きながら中へと入り、おっきい雪ん子たちも嬉しそうに後ろから眺めた。
中に入って出迎えてくれたのは、低い天井から吊るされた金色の傘のランプ。
ランプは嬉しそうにハシャグ雪ん子たちを見守るように炎を揺らし、楽しげに大きな声で「オバケだどおぅ~♪」と、ハシャグ雪ん子たちに「坊ー! ちゃんとおー 肩まで浸かれよぉぅ~♪」と、薪を風呂釜に放り込む笑顔の御爺さん。
内風呂の無かった時代に、家々が共同で作り守って来た外風呂は今は遥か昔の思い出……
風呂場で聞こえた「チャポ~ン」そして「ドサッ!」と、屋根から落ちた白に雪ん子達は「わぁぁー♪ うわぁー♪」大歓声を上げていた。