10話
◆◆◆◆◆10話
薄暗い家の中の中央にある囲炉裏でパチパチと音を響かせ炎を上げる薪。
時折り、バチンバチンと強い音を出し、辺りを景気づけながらユラユラと左右に踊る炎。
まだ小さい雪ん子が白いホッペをプルッとさせて後ずさりするものの、音が静まるとまたジーッとまん丸な瞳で炎に見入る。
赤や橙色した炎が揺らめくと、お湯の入った大きな鍋がグツグツと白い湯気を出し、側にいる御婆ちゃんに差し水を合図を送る。
薄暗い中で僅かに入った陽の光で、手元を照らしながら縫い物をする御婆さんが、立ち上がろうとすると「バーバこれ」と、小さな柄杓に入った水を雪ん子が手渡した。
御婆さんは嬉しそうに口元を緩ませ「まあまあ、いい子だごど~♪」と、雪ん子の頭を撫でると直ぐ側の母親も嬉しそうに口元を緩める。
すると土間で農具の手入れをしていた御爺さんが「どっこいしょ」と、掛け声と共に立ち上がると、曲がった腰を一度伸ばしてから、台所の横の手押し井戸から水をくみ上げる。
汲み上がった水を桶に入れ直すと、今度は父親が出て来て「ジッちゃん、オラが持ってゆぐがら」と、桶に両手を添えた。
囲炉裏の中でグツグツと白い湯気を上げる大鍋の横に、燃えた薪の破片が飛んで小さな小枝に燃え移ったのを、ジーッと小さな炎を、まん丸な瞳が見詰めている。
小さな雪ん子が囲炉裏の端っこで小さく燃える炎へと、小さな愛らしい手を伸ばすと、側の母親が慌てて止めに入ろうとした。
そんな母親を行かせまいと、片手で母親の道を塞いだ笑顔の御婆さんと、心配そうに我が子を見据える母親に御婆さんが、無言で首を左右に振った。
土間で心配そうな顔する御爺さんに、水の入った桶を持ったまま立ち尽くす父親。
雪ん子が手を伸ばして小さな炎に触れた時「あぎゃぁーー!」と、大きな泣き声を薄暗い家中に響かせた雪ん子。
顔を引き攣らせて立ち尽くす父親から水の入った桶を、取った御爺さんは雪ん子の側へ行くと「坊ー あっははは♪ 熱かったがや♪」と言って、桶を床に置くと雪ん子の手を持って自分の手と一緒に桶に浸した。
我が子の悲痛な声に驚いて涙し父親に寄り添う母親と、ニコニコと笑顔で雪ん子に語りかける御爺さん、薬箱から薬を取り出して準備する御婆さん。
雪ん子は家族に見守られながら大切な二つを学んだ。
小さな水の入った柄杓をバーバに届けた褒美に、雪ん子は炎は熱いものだと言うこと、そして水は火傷を癒してくれると言うことを、バーバから褒美として受け取った。
そして一番、より多くを学んだのは御母さんと御父さんだったのかも知れない……
その後、雪ん子は、けして手を囲炉裏の中に入れることは無かった……