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  作者: 縄奥
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1話

縄奥




◆◆◆◆◆1話




 真っ白い雪が舞い地面を白く染め、山々から徐々に緑を奪う。


その白さは山の頂上を超え、空の雲との交わりを求めるかのように勢いを増す。


やがて山々を覆い尽くした白さは流れる雲達と一年ぶりの再会を祝い、山々から聞こえる


木割れの音が、カーン、カーンと白さの中に溶け込んでいく。




 葉を落とした木々は僅かな陽の光で自らを暖め、木割れして行く仲間達を無言のまま偲ぶ。


時折吹く風に乗って粉雪が舞い、僅かな陽の光を木々達から奪って消えて行く。




 木々達は次第に白い衣を身に纏い、その下からカーン、カーンと自らの命が尽きる音を


ただ、ジッとして聞いていた。




 そして木々の側を大地の白さに負けじとばかりに、真っ白い毛に覆われた野うさぎが忙しく駆け回り


辺りの白さに対抗するかのように茶色を身に纏った野狐が、真っ白い野うさぎの足跡を辿る。




 山の麓ふもとを駆け回る子供達は頬を紅く染め、白さに浮き立つように赤や青や緑色の帽子を


スッポリと耳までかぶり、二股の毛糸の手袋は母親の温もりを小さな手に伝えている。




 継ぎ接ぎだらけのチャンチャンコは孫を愛しむ御婆ちゃんの温もり伝え降り注ぐ白い雪を溶かし、


まん丸に膨れ上がったスボンは太陽に負けじとばかりにその丸さを見せつけ、大地との接触を


拒むように藁靴は自然の厳しさから子供達を守っている。




 あちこちから聞こえる子供達の笑い声が風に乗り、山伝いに空へと届けられると嬉しそうに


山々を白い雲達が時折流れる。




 はしゃぐ子供達を遠くから見守る母親だろうか、家の前の雪をかき出しながら手を休めては見守り、


大きな屋根の上で白い吐息をはきながら、下の様子と子供達の様子を見守る男達。




 大地が白さで覆われる時、喜びに満ちる子供達に、ひたすら険しい顔を隠し微笑む家族達。


子供達が楽しさで汗するとき、大人たちは招かれざる客に汗を流す。




 大きな屋根の軒下にぶら下がる大根は、黄色と緑色が辺りの白さを否定するように、


見る者に過ぎ去った懐かしい季節を思い出させる。




 都会に流れでた若者たちが笑みを浮かべ、土産を手に手に里に戻るとき、この山間の里にも


ようやく時期外れの何かがが訪れ口々に 「ただいま!」 




 メリークリスマス!! と、聞こえた気がする……




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