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封 神 伝  作者: 原 海象
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第83話 姜子牙 ここで有名な「太公望」と言う言葉がでる

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>


第83話 姜子牙 ここで有名な「太公望」と言う言葉がでる




そのころ。文王の病気はいっこうによくならなく、逆に容態は重くなる一方である。みるみるうちに危篤に陥った。文武百官は毎日のようにその安否を気遣った。やがて、文王は姜丞相を呼ぶように言いつけた。姜子牙はこれを聞いて内殿に赴き、文王の床の前にひざまずいた。

「老臣 姜尚、ご命令に従い入殿いたしました。我が君、お身体の具合はいかがですか?」

「今日来てもらったのはほかでもない。いま天下は分裂状態であり、君臣のわきまえもなく離反する者が出ている。わしと崇侯虎すうこうこは同じ爵位にあったものを、勝手に討伐したのは大きな罪といえよう。おそらく、わしの命ももうそう長くはないだろう。

今日来てもらったのは、ただ一つ頼みたいことがあったからだ。

わしが死んだあと、紂王陛下が悪に限りを尽くしても、諸侯の言いなりとなって。臣の身で君主を討伐するようなことだけはしないでくれ。姜丞相がもしこの願いに背けば。冥土で合わす顔がないと思ってくれ」

そう言うと、涙が頬を流れた。姜子牙はひざまずいて言った。


「臣の受けた恩恵は忘れません。丞相として、ご命令を受けない訳がありましょうか。我が君の言葉に逆らえば、それこそ不忠というものです」


ちょうど、文王と姜子牙が話をしているところ、殿下の姫発があいさつにやって来た。

文王は姫発が来たのを見て、「いま、ちょうどお前を呼ぼうと思っていたところだ」と言った。


姫発は慌てて礼をすると、文王は言った。

「わしが死んだのち、人の言うことをまにうけて、勝手に討伐の拳をだしたりしたのでは、天子に対して不徳であり、君主を刺す臣などという汚名を背負うことになるぞ。姜丞相を亜父あほ(父に継ぐ者)と拝して、朝夕訓説に教えを請うがいい。姜丞相の言うことは、わしの言うことと同じだ。

姜丞相、座って姫発の一礼を受けて下され」


姫発は姜子牙を上座に着かせて、礼拝して義理の父子の契りを結んだ。

姜子牙は顔を地につけ。床の前で泣きながら文王に言った。

「臣、我が君の恩恵にあずかり、肝脳を使はたし骨砕けて身を献げても、国恩の万分の一も報いることはできません。我が君、臣のことなど考えず。お身体を労わってください。数日もすれ、きっとご健康も回復いたしましょう」


だが、文王は姜子牙の言葉には答えず、息子の姫発に言った。

「商は無道であるが、わしはその臣である。当然のこと、その職分を守らなければならない。権限を越えることをして、後世の笑い者になってはならぬぞ。そうなれば、わしは死んでも恨むことがない。善を怠らず、義をためらわず、非を除き、過ちを改める。これが修身の道であり、国を治め、民を安んずる大略なのだ」


姫発は父の話に耳を傾け、深々と礼をした。文王は口を開いて嘆くように言った。

「紂王陛下の恩をこうむりながら、臣はもう二度と陛下の顔を仰ぎ、進言することもできなくなった。八卦を押しひろめ、羑里ゆうりの民を教化することもできないのか…………」



そう言うと、文王は静かに目を閉じ、この世を去った。享年九十七歳。のちの追名として『周文王』と呼んだ。時に商の紂王の治世二十年の仲冬であった。西伯の文王が亡くなり、その棺は白虎殿に置かれた。百官は跡継ぎについて協議し、『太公望』姜子牙が姫発を跡継ぎに推した。



即位して武王と称することが決まった。武王は父の葬儀をすませたのち、姜子牙を尚父しょうふと仰ぎ、文武百官をそれぞれ一級昇格させた。君臣は心を一つにして、志を継ぎ、仕事に励み、先王の政を全うした。

西方の国々も西岐に朝貢し、二百余りの鎮諸侯も、みな武王に従った。


ところで、汜水関の総兵 韓栄かんえいは、文王が死去に、姜子牙が文王の子息 姫発を『武王』に推したという知らせを知った。韓栄はこれに驚き急いで奉章を書き上げ朝歌に送った。

早馬は一日で入城し、奉章を文章房に届けられた。この奉章を大夫の姚中ようちゅうが見て、王族の微子と協議した。姚中ようちゅうは、「姫発は自ら『武王』と名乗るとは、その志は大きい。その意は謀反にあるのではないか。このことは上奏しないわけにはいかない」と言った

しかし微子の考えは違った。

よう大夫、天下の諸侯が、奸臣が幅をきかせ。忠臣が退けられる当世の淫乱な様子を見て、陛下に対する心などがはたしてあろうか。いま武王が自ら王を名乗ったからには、まもなく山河をその手に握り、天下を乱すときがかならずくるだろう。いまこの奉章を見せたとしても、暗君がこれを特段 わざわいとは思わないのではないか。無駄なことだと思わんか?」

「老殿下、そうは言っても、臣は臣の忠節を尽くさなければなりますわい」

姚中ようちゅうはそう言って奉章を手に摘星楼へ行き、紂王のお呼びを待った。


姚中ようちゅうが摘星楼で紂王に会い拝礼をすませると、紂王は、卿は何か奉章でもあるのか?と尋ねた。姚中ようちゅうは答えた。

「西伯の姫昌が死去しました。息子の姫発が即位して武王と名乗り、四方に布告しました。諸侯も武王に帰順する者が多く。招来は大きな禍となりましょう。陛下、いますぐすいを興し、罪を問い国法を正すべきです。もしこれを怠れば、第三者として様子をうかがっていた者が、姫発にならう者となり、その数はたくさん出てくることでしょう」


紂王は面倒くさそうに言った。

「姫発の青二才に何ができるというのだ?」

「姫発は年少ではありますが、西岐丞相 姜尚は智謀に富んでおります。また、南宮适なんきゅう かつ散宣生さんぎせいといった者たちは知恵と勇気に富む補佐です。黙って見ているわけにはいかぬと思いますが」

「ふむ、卿のいうことにたしかに一理ある。だが、所詮 姜尚は一介の術士だ。だいしたことはできまい」

紂王は姚中ようちゅうの進言を取り上げようとはしない。姚中は紂王が問題にしないのではこれ以上言っても無駄だと思い、引き下がった。


そして姚中ようちゅうは、商を滅ぼす者はきっと姫発だろうと嘆いた。


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