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封 神 伝  作者: 原 海象
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第80話 姜子牙 文王を仁義と称して親征させる                                                      (補足説明付き)

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>


第80話 姜子牙 文王を仁義と称して親征させる 


西岐の姜子牙は朝内にいたが、ある日、辺境からの報告を聞いた。それで、紂王は酒色に浸り、奸佞かんねいを信頼していることや、東海の平霊王が反旗をひるがえし、聞太師が兵を率いて鎮圧に出たことが分かった。

また、それとは別に一報があった。北伯侯 祟候虎すうこうこは天子を惑わし、大規模な土木工事を起こし、大夫を迫害し、費仲・尤渾らと私通し、朝政を握り、奸をもって友とし、ほしいままに不道をはたらき、天子を諫める大夫を弾圧しているという。


姜子牙は「この賊をまず除かねば、のちのちの禍というものだ」と怒りを抑えられなかった。


翌日の上朝の際、文王は姜子牙にきいた。

「丞相は昨日、辺境から情報を得たようだが、朝歌に何か変わったことでもあったのか?」


「はい、報告によりますと、紂王が亜相の比干様の心の臓をえぐりとり、煎じて妲己の病を治したとのこと。また北伯侯、祟候虎が朝政を乱し、大諸侯の地位をよいことに横暴に振る舞い、天子を惑わし、悪事の限りをはたらき、万民を害しているとのことです。


民は殺されても泣き寝入りするのみ。臣下たちは陳情する勇気もないようで、この種の大悪は、虎の威を借りて世にはばかるもの、その影響は四海にも及びます。いま民は塗炭の苦しみにあえいでいます。

主公はいま仁義を広く施すべきです。まず、この奸臣 崇侯虎すうこうこを天誅すことこそ肝要です。朝政を乱す者を斬れば、天子の左右に讒言ざんげんする者もいなくなり、天子が過ちを正す契機となりましょう。そうすることによって、主公は天子から授かったほうえつの意を無駄にしないことになります」


文王は顔をしかめて言った。

「丞相の言うことには道理がある。だが、王位を頂いたとは言え、実質わしと祟候虎は同じ大諸侯という国力をもつ爵位だ。勝手に征伐する理由がどこにあろう?」

姜子牙は悪びれもせずに答える。

「天下の利害は、諸人の直言にかかっています。ましてや、主公は天子から授かったほうえつを授かった身、征伐は許されているのです。すべて、横暴を圧し、奸臣を除くためです。主公、仁慈の心をもって、塗炭の苦しみから民を救うべきではありませんか。もし、天子が悪を改め善にいたり、堯舜ぎょうしゅんに学べば、主公のなせる功績は、万年後も不朽のものとなりましょう」

文王は姜子牙の話に耳を傾け、紂王を説得して堯、舜にならわせるのだと聞き、安心して喜んだ。

「では、丞相、誰を主将として軍を率いて、北伯侯 祟候虎すうこうこを征伐させればよいだろう?」

それがしが主公に代わって出征いたします」

文王は、姜子牙が行けばきっと容赦はするまい、しかし自分が行けばなんとかできるだろうと考えた。

「わしも丞相とともに行こう。何かあればすぐに相談もできよう」

姜子牙はうなずいた。

「主公自ら親征にいかれれば、天下もこれに応じるでしょう」


*****


文王は白旄はくぼう将軍と黄鉞こうえつ将軍を先頭に、十万の兵馬を起した。先行部隊の将軍を南宮适なんきゅう かつ、副将を辛甲しんこうとし、そのほか四賢しけん八俊はっしゅんといった武将たちを随行させた。


文王と姜子牙は砲声に送られ出兵した。行軍の途中、沿道では民が出迎えた。

進軍は鶏犬けいけんをわずらわすことなく。民は祟候虎を討伐すると聞いてみな大喜びし、人々は文王をたたえてやまなかった。

姜子牙の率いる中軍は府、州、県、鎮を越えて侵攻していった。

ある日、騎馬斥候が中軍に兵はすでに祟城にいたりましたと報告した。


姜子牙はこれを聞いて設営の命令を下し、兵卒たちは旗門を立て、陣地を構築した。

そして姜子牙が幕舎に姿を現すと、諸将は参謁し姜子牙の策をそれぞれ授かった。


*****


その頃、祟候虎は朝歌にいたので、祟城にはいなかった。しかし城内には祟候虎の息子すう 崇応彪おうひょう がいた。祟応彪すうおうひゆうは斥候の報告を聞いて怒り、急いで殿上にあがり将軍たちを呼び集めた。


諸将は銀安殿に集まり、謁見の礼をした。 崇応彪すう おうひょうは言った。

姫昌きしょうは横暴にして本分をわきまえず、前年に関を突破し、逃亡した。紂王陛下は何度も兵を起こし征伐しようとしたが、それでも態度を改めようとしない。その上、今度は兵を興した。我々は、やつらとはなんの関わりあいない。それぞれが自分の国の領土を守っていればよいわけで、だれもその利を犯していないのだ。それをわざわざ死にに来たとあっては、手加減することもないだろう」

そして、「将兵を集めて出城せよ」とただちに命を下した。

命令を受けた大将の黄元済こうげんさい陳継貞ちんけいてい梅徳ばいとく金成きんせいが「反逆者を取り押さえ、朝歌に連れて行き、大法にかけるのだ」と大声で叱咤激励をした。



****



その翌日、姜子牙は中軍で将軍たちと会合した。まず南宮适なんきゅうかつに先鋒を命じる。南宮适なんきゅうかつは命令を受け、本隊を率いて陣形を整え、大声で叫んだ。

「反逆者崇侯虎、早く軍前に来て命を捧げるがいい!」

すると、城中から砲声が聞こえた。先頭に立っているのが飛虎大将 黄元済こうげんさいである。南宮适なんきゅうかつは言った。

黄元済こうげんさい、ここは貴様の出る幕ではない。崇侯虎すうこうこを呼び出し、罪滅ぼしをさせよ。逆賊を殺して、死んだ人々の怒りをしずめれば、すべてがすむことだ」


黄元済こうげんさいは腹を立て、馬を走らせ、刀を振りかざして戦いを挑んだ。南宮适なんきゅうかつはこれを迎え討つ。両刀は火花を散らし、激しい戦闘が始まった。

まだ、三十合もわたりあわないうちに、両者の力の差は歴然となった。

黄元済こうげんさいは、あっという間に力を使い果たしてしまった。

黄元済こうげんさいでは南宮适なんきゅうかつの相手ではない。


黄元済こうげんさいは逃げようとするが、南宮适なんきゅうかつの刀にさえぎられ

逃げるにも逃げられないありさまで、ついに斬られて落馬した。


軍兵は黄元済こうげんさいの首級を上げ、勝利を知らせる陣太鼓の鳴る中を兵営に戻った。一行は轅門えんもんに入って姜子牙に会い、黄元済こう げんさいの首を差し出し、状況を報告した。



一方、黄元済こう げんさいの残りの兵は敗軍となって崇城に逃げ戻って、崇応彪すうおうひょうに報告した。

黄元済こうげんさい様は、すでに南宮适なんきゅうかつに討ち取られ、首は敵陣に持ちかえられてしまいました」

崇応彪すうおうひょうは怒りに燃えたことは言うまでもない。

「姫昌のやつ、反臣となったあげく、朝廷の武官を殺しおって黄元済こうげんさいを斬られたこの恨みを晴らさなければ、誓って軍を退かぬぞ。命令を伝えよ。明日は大軍を出して、姫昌と決死の一戦を交えるぞ」


翌日の朝、朝日が昇ったころ砲声が三発響き、城門が開き、大軍が周営に向かって突進し、姫昌と姜子牙に轅門えんもんを出て立ちあうよう呼びかけた。

騎馬斥候が、中軍に入って来て報告した。

崇応彪すうおうひょうが口汚くののしっています。丞相閣下、軍令をお下しください」

姜子牙は、文王に自ら陣頭に立ち、祟兵に挑むように求めた。文王が馬にまたがり、それを四賢しけんが守り、八俊はっしゅんがそれに続く。

崇応彪すうおうひょうは、敵陣の旗門が開き、中から白いひげを生やし、道士の身なりをした一人の老人が、馬に乗ってやって来るのを見た。両側には諸将が立ち並んでいる。

姜子牙は陣前に来て言った。「祟城守備の将軍、私の前に出てきなされ」

馬が一騎、飛ぶように走って来た。血のように赤い戦袍をまとい、飛鳳ひほうの髪に結って、盤頭ばんとうの冠をかぶった崇応彪すう おうひょうである。崇応彪すう おうひょうは一直線に出てきて、姜子牙にたずねた。

「おまえは何者だ!我が境界を犯すとは無礼なやつめ」


姜子牙は答えた。

「私は文王のもとで丞相を務めている姜子牙である。汝ら父子の罪は遠海よりも深く、その害毒は山岳よりも高い。いま、文王が仁義のすいを興し、暴虐を祟の地で除き、悪党を絶滅し、人々を喜ばせるためにやってきた。これこそ、天子から授かったほうえつを授けられ、征伐する権限を送られた意に報いることである」


こう言われて、崇応彪すう おうひょうは姜子牙を一喝した。

「何を大きなことをぬかす!貴様は磻渓はんけいの朽ちはてた無用者にすぎぬわ!兵卒、だれかこいつをひっ捕らえてやれ!」


そう言うと、一将が前に出た。だがすかさず文王は馬上で崇応彪すうおうひょうを呼んだ。

崇応彪すうおうひょう、乱暴は許さぬぞ。わしがお相手しよう」

文王の姿を見た崇応彪すうおうひょうは、いっそう怒りをつのらせ、文王を指してののしった。

「姫昌!朝廷で犯した罪を反省もせず、仁義を捨て、我が境界を犯すとはどういうわけだ!」


文王も言い返す。

「おまえら親子の罪悪は、山と積みあがっている。わしが言うまでもないであろう。さっさと馬を降り、おとなしく西岐に来るがいい。檀を設け天に告げて、凶悪な汝ら親子を処分してやろう。祟城の良民を騒がすことはよせ」

「だれかこの反逆者を捕らえろ!」


これに答えて、一将軍が前に出た。陳継貞ちんけいていである。そのとき辛甲しんこうが馬を走らせ斧を振りかざして叫んだ。

陳継貞ちんけいてい、待て!われらが陣地に足を踏み入れるなよ!」

二頭の馬が絡み合い、鎗と斧がかみ合った。二将が戦うこと二十数合。崇応彪すうおうひょうは、陳継貞ちんけいてい辛甲しんこうにおよばないとみると、金成、梅徳ばいとくに出陣するように命じた。姜子牙は相手が助勢をくり出したのを見て、毛公遂もうこうすい周公旦しゅうこうたん召公奭しょうこうせき呂公望りょこうぼう辛免しんめん南宮适なんきゅうかつの六人に命じ、いっせいに出陣した。


大勢が動くのを見て、崇応彪すうおうひょうも自ら馬を走らせ、包囲の中に突進した。しかばねは一面に倒れ、砂煙が立ちこめ、太鼓と角笛が鳴り響いた。


混戦が続いた。


呂公望は梅徳ばいとくを槍で馬から突き落とし、辛免しんめんは金成を斧で斬り倒した。

崇兵は敗れて城内に逃げ込んでいく。姜子牙の命令で陣太鼓が鳴らされ、勝利を収めた西岐軍は兵営に戻った。戦いに敗れ多くの将兵を失った崇応彪すうおうひょうは、城門を閉ざし、殿上で撃退策を協議していた。しかし、西岐の兵士の勇ましさに、諸将は立ち向かう気力も失せ、よい案

も浮かばずにいた。


一方で、姜子牙は戦に勝って陣地に戻り、崇城攻略を命令しようとしていた。そのとき、文王が苦い顔をして姜子牙に言った。

「悪いのは崇家の親子だ。民には関係ない。丞相がもし城を攻めれば、城は敗れ、玉石ともに砕けるであろう。可哀そうなのは巻き添えを食らう民たちだ。今回の親征は、もとは民を救うことにある。それなのに民に災いを加えるのは不仁だ。崇城攻略を避けたほうがよい」


姜子牙は、文王の仁義を重んじる気持ちに逆らえず、次なる策の考えを巡らしていた。


主公の徳は、実に堯、舜と同じだ。しかし、ならばいかにして崇城を破ればよいだろうか。極秘に手紙を書き、南宮适なんきゅうかつに曹州の祟黒虎のもとへ送ろう。そうすれば崇城はおのずと手に入る


そこで、姜子牙は南宮适なんきゅうかつに手紙を持たせ、曹州へ遣わした。

そして姜子牙は兵を動かさず、ただ祟黒虎の返事をまつばかりであった。


補足説明のお時間です~♪


四賢しけん八俊はっしゅんとは、人名?と思われた方がいるだろうと思いますのでその補足説明をしますと、すなわち、四天王のようにある部門や臣下・弟子などの中で、最もすぐれている者4人の称を言います。これにあやかって、西岐の優れた文官や将軍のことを四賢しけん八俊はっしゅんと言います。


なお、四賢、八俊のメンバーは

伯達、伯适、仲突、仲忽、叔夜、叔夏、季随、季騧、毛公遂、周公旦、召公奭、畢公高

を言います。


また武成王黄飛虎にもにたようなものがあり、こちらは「四大金剛」と言い、黄飛虎配下の部将で、 周紀・ 黄明・ 呉謙・ 竜環のことを言います。また 黄飛虎の部将であると同時に義兄弟でもあります。


本文のずっと先の話になりますが、魔家四将、黄花山の四天王、一聖九君、飛鳳山の三兄弟などと言った厨二ヴォーパル魂をくすぐるような名称が色々と出てきます


では、本文でまたお会い致しましょう~♪

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