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封 神 伝  作者: 原 海象
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第8話 蘇護 激怒し壁に檄文を書く、そして半グレ化する

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>

第8話 蘇護 激怒し壁に檄文を書く、そして半グレ化する



蘇護の罪は許され、ただちに帰国し、朝歌を去らせることとなった。

蘇護が宮殿を辞して屋敷に戻ると家臣たちが出迎えて尋ねた。


「天子が冀州候をお呼びになった、何のご相談だったのでしょうか?」

怒髪天を衝いた蘇護は口調も荒く罵った。


「無道な昏君が!ご先祖の偉業も考えず奸臣どもの言いなりになって!

わしの娘を后妃にしたいなどというのだ。

これも費仲・尤渾あたりの企みだ。酒色で君主の心を惑わし朝廷の実権を握ろうというのだろう。

わしは聖旨を聞いて、つい素直にお諫めしたのだが、あの愚かな王は聖旨に逆らったと言って、わしを法司に引き渡そうとした。そのとき、またも例の二人がしゃしゃり出て、わしの罪を許して帰国させるように進言したのだ。


きっと、わしの命を助けられた恩返しに、娘を後宮に入れると考えたのであろう。


遠征中の聞太師のご不在をいいことに、あの逆賊どもが権力をいいように使いおって……

かといって娘を宮中に送らねば暗君はかならず軍を出してわしの罪を問うだろうし、もし娘を献げなければ暗君は道を踏み外したあとでわしは天下の愚か者だと笑い者になるだろう。


諸将よ、何か良い考えがあったら言ってくれ」

将軍たちはこれを聞き声をそろえて言った。

「『君主が正しからずときは、臣は他国に身を投じよ』と言います。

今君主が忠臣を軽んじ、女色を好み、昏迷が目前に迫っているならば、道は一つ、

朝歌に逆らい我らの国を守って戦うことです。

そうすれば商の威信は保たれ、我ら一族を守ることもできます」


蘇護は憤怒で頭がいっぱいのところに、これを聞いてさらに怒りがあおられ、

勢いのままに言いはなった。

「よくぞ言った。男たる者、是非に合わざることはすまいぞ。筆を出せ」



君主が臣の道を乱し     君壤臣綱

五常を破る         有敗五常

冀州の蘇護         冀州蘇護

永遠に商に入朝せず     永不朝商



そう書きつけると、蘇護は武将を率いて、まっしぐらに冀州に帰参した。

冀州城に着くと蘇護は、ただちに長子の蘇全忠に事の次第を告げて

敵となった商の攻撃に備えよと言いつける。

蘇全忠は城の点検補修を手配し軍の調練を指示した。


さて、紂王は蘇護に正面からやり込められて、結局思いどおりにはならなかった。

そのため、蘇護が思惑どおりに娘を宮中に送り、余の満足いくようにしてくれるかと

色々思い煩っているところに午門の守備をついていた内臣が伏して奏上した。


「午門の壁に蘇護が謀反の詩を書きつけて行きました。

黙っている訳にもいかず、ご報告に参りました。いかがいたしましょうか」


内臣が蘇護の詩を書き写し、紂王の前の卓上の上に広げて見せた。

紂王は一目見るなり罵った。

「無礼な悪党!余が慈悲で奴の命を助け、罪を許して帰国させたじゃないか。

それを蘇護の奴、謀反の詩を書き連ねるとは!殷破敗、晁田、魯雄を呼べ!」


魯雄らが招集され、まもなく殿内に来ると紂王に拝礼した。

諸将がそろうと紂王は言った。「蘇護が商に反逆し、午門の壁に謀反の詩を書いて朝廷を罵った。

その方らは二十万の兵を率いて先鋒を務めよ。余自ら六軍を率いて奴の国を滅ぼしてくれるわ!」


魯雄はこれを聞いて大いに驚いた。


蘇護は忠義な人物であり、一体何故ここまで王を激怒させ、親征を受けるようなことになったのだろおうか。いずれにしても蘇州家は滅亡だ。

そこで魯雄は平伏して、蘇護のためにさりげなく口を開いた。


「たかが冀州如き、小さい諸侯の罪を問うのに、陛下自らの御親遠されることは及びません。今四大諸侯がいずれもまだ帰国せず朝歌にいるのですから、大諸侯の一名か二名に征伐に向かわせ蘇護を捕らえて処刑すればよろしいのです。征伐の威信を落とすこともなし、陛下御自身が親征される必要はございません」


紂王は尋ねた。「では、四大諸侯のうち、誰を征伐に行かせればよいだろうか?」


すると傍らで控えていた費仲が口をはさんだ。

「冀州は祟候虎の管轄地ですから、祟候虎に征伐させるのがよろしいでしょう」


魯雄はこれを聞いて考えた。

(祟候虎は貪欲で卑劣な上に残虐な男だ。彼に遠征させれば、兵の行くところ荒れ放題で民はひどい目にあうだろう。

だが、西伯候の姫昌は仁徳豊かで信義に厚い人物と聞く。ここは姫昌殿を推薦したほうが全ての為というものだ)


そこで、紂王が命を下すと、魯雄はすぐに申し出た。

「祟候虎殿は北の守りについておられますが、敵を威圧する威信と器量にいまひとつ不安があり、

朝廷の威信を十分に示すことができるか疑問です。

それより、首尾よく使命を果たし、もって陛下の威徳を顕揚するためには、

やはり、ここは。仁義に厚いという評判の西伯候姫昌殿こそ適役と存じます。

西伯候に割符と斧鉞を授ければ、いたずらに軍を動かすこともなく、

蘇護を捕らえて処刑することができるでしょう」




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