第6話 紂王 商容に内緒で秘密裏に美女選出計画を画策する
初めまして!原 海象と申します。
今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。
「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。
<封神伝>
第6話 紂王 商容に内緒で秘密裏に美女選出計画を画策する
元旦の朝早く、紂王の前に文武諸官が集められ、拝賀の儀がとり行われた。
黄門官(宦官)が奉上した。
「今年も朝賀の年となっておりますので、四大諸侯が朝賀のために参上し
午門の外で陛下のお言葉を待っております」
紂王は宰相の商容に、どうしたらよいか尋ねた。
商容はこう答えた。「四大諸侯にはご対面を許し、各地の民間風俗、風土や治世の情勢についてお尋ねなさればよろしいでしょう。他の諸侯は午門外より朝賀をお受けになればよろしいでございます」
「では、四大諸侯には直接会う。その他の諸侯の祝賀は午門で受ける」
紂王は黄門官に命じて伝えさせた。
まもなく四大諸侯は朝服を正し、玉佩を揺らして午門を入って来た。九竜橋を過ぎ朱塗りの回廊まで来ると、祝いの言葉を述べて紂王に拝礼し、平伏した。
紂王はねぎらいの言葉をかけた。
「卿らは余の為に、徳化を広め、民を慰撫し、辺境を守り、国の安定のため大きな手柄を立ててくれた。すべて卿らの功績だ。余は満足しておるぞ」
東伯候は答えて言った。
「臣らは陛下の大恩を受けて、諸侯を統率する位にある者です。未熟ながらも陛下の期待に添えますよう、日夜微力を尽くしております。わずかながら犬馬の労があったとしても、臣下としての当然の務めを果たしたもの。まだまだ陛下のご恩に報いたと申せません。そのようにお気にかけてくださるとは、感謝に耐えません」
紂王はこれを聞いて大いに喜び、早速宰相の商容、亜相の比干に命じて、顕慶殿にて宴の仕度をするように命じました。四大諸侯は叩頭し、その場を離れ顕慶殿での宴に赴いた。
一方で、正殿を離れ別殿に来た紂王は、費仲・尤渾の二人を呼んだ。
「先日、お前たちは天下の諸侯に美女を献上させるように勧めてくれたな。だが、余は命を下そうとしたところ商容にきつく止められてしまった。だが今、四大諸侯がここにいるのを幸い、明朝にでも宮中に呼び入れ皆の前であらためて聖旨を伝えようかと思うのだ。そうして四人がそれぞれの自国に戻るのを待ち、美女を送らせば、使者もやらずにすむというもの。お前たちどう思う?」
費仲はひれ伏して答えた。
「商容殿の諫言を即座にお聞き入れになったのは、陛下の美徳でございます。しかし、もしこの件をもう一度持ち出すと信用を失う恐れがありますので、それはやめた方がよろしいでしょう。臣の聞いた話では、冀州候蘇護には娘が一人いるそうですが、これが絶世の美女で、しかもとても穏やかな乙女だとの話です。この娘を宮中に入れ、お側に仕えさせれば御意にかなうと思います。また、一人の娘を選ぶだけですから、天下の耳目をそばだてることもなく、商容殿の諫上をきになさることもございません」
紂王はこれを聞いて、つい大きく顔をほころばせ、ただちに随待官が蘇護に玉旨を伝えるように命じられた。