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封 神 伝  作者: 原 海象
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第59話 姜子牙 短い役人人生であった。けどここはブラック……

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>


第59話 姜子牙 短い役人人生であった。けどここはブラック……


玉石琵琶の妖精が、三昧真火で焼かれ原形(正体)を現したその夜、適星楼では紂王は高いびきをかき始めると、妲己はそっと抜け出し楼閣を出た。広場では妖気を失ったただの琵琶石となった妹々(メイメイ)を指で撫でながら、妲己の両眼から涙が滴り落ちた。


姜子牙は、妖気が数年で回復して復活すると言っていたが、それは存分に天地の霊気と日月の精華を存分に浴びればの話だ。しかし、天地の霊気と日月の精華を浴びるためには、遮られない場所が必要である。この摘星楼の楼閣は琵琶石を置いておく場所としては適当ではない。

どこかの高い山の頂に、こっそり担ぎ上げれば文句はない。だが、それでは目が届かず心配である。それより琵琶石に弦を貼って弾いてみたいと言った手前、紂王への言い訳が立たない。


どうしたらいいものかと考えたところ『玉石』琵琶石を見た。


『玉石』の琵琶石である。それなら玉石の上に置いたらいいのではないか?玉石で高楼を建てその屋根の上にはめ込めばよいのではと思い妲己は翌朝にはすぐに行動に移した


妲己は玉石琵琶の恨みを思い出し姜子牙を堕える計を巡らしながら一幅の絵を描いた。

そして摘星楼で酒を酌み交わしているとき、妲己は紂王に言った。

「陛下、私は一幅の絵を描きましたので、ご覧頂きたいのですが」

「持ってくるがいい」


妲己は宮女に命じ、絵を掲げさせた。紂王は絵を見て言った。

「正宮、この絵は飛鳥でも、獣でも、山水でも人物でもないではないか?」


絵には、高さ四丈九尺の台、夜空には光り輝く明球をちりばめた梁と柱の雄大な殿閣及び瓊楼きいろう 玉字、それに瑪瑙めのうの欄干が描かれており、玉石以外は一切使用せず、その名を『鹿台ろくだい』と書かれていた。


妲己は改めて身をしなり紂王に寄り添うように奏上した。

「陛下は天子という尊いお方で、四海を有しておられますが、惜しむらくは、このような瑗池玉閥ようちぎょくけつ(天界の御殿)に比すべき建物を所有してはおりません。鹿台を建設なさらないことには陛下のご身分にそぐいません。鹿台は瑗池玉閥ようちぎょくけつであり、朝晩の宴にはおのずと仙人・仙女が訪れます。陛下は神仙と遊び、ますます寿命を延ばし、無限の財宝をえることができましょう。

陛下とわたくしとで、末永く人生の富貴を享楽できるのです」

「それこそ、まさに余の願うところだ。早急に着工させよう。しかし、それは膨大な工事になりそうだな。だれに建造を監督させたらよいだろうか」

「才能があり叡知に富み、陰陽を知り生剋に通じた者がよろしいでしょう。私の知るかぎりでは、下大夫の姜尚のほかいないと思います」

紂王はすぐに下大夫の姜尚を呼び出すように命じた。


****


王命を持った使者は姜尚を呼びに亜相府に向かった。亜相比干と姜子牙は囲碁を打って天下の情勢を語っていた。そこへ使者がきて比干と姜子牙は慌てふためいて王命を受けに外に出た。使者が、「姜尚を摘星楼への出頭すること」と命じたことを告げる。姜子牙はその命令を受け、使者に感謝の礼をした。そして使者殿には先に帰って、午門でお待ちください。と告げた。


使者が去ったあと、姜子牙は密かに自身を占ってみて危険があることを知った。

姜子牙は、比干に感謝の気持ちをこめて言った。

「色々とお世話になった上、朝晩教えを頂き感謝しております。しかし、お別れをするときがやってきたようです。この恩徳にいつか報いることができるやら見当もつきません」

「何故そのようなことを申されるのだ」

「天数(運命)を占ってみたところ、大凶と出ました。

これは私の身に不吉なことが必ず起こると思います」


「しかし、姜子牙殿は諫言の職にあるわけでもないし、陛下と会見してそれほども経っていないので、問題が起きるとも思えない。一体どのような危険があるというのだ」

「書斎のすずりの下に策をしたためた手紙を置いておきました。後日、亜相様が災難にあい、どうにもならないときに、その手紙をご覧ください。きっと危険を逃れることができると思います。亜相様のご厚恩に対するわずかな礼です」



姜子牙が別れを告げると比干はあまりにも心配して言った。

「もし姜尚殿が災難にあうようなことになったら、わしが朝廷に行き陛下に許しを請うてやろう」

「亜相様、いまとなっては、その必要もありません。逆に面倒なことになるでしょう」

これを聞いて比干は何も言えず、姜子牙を送り出すしかなかった。


亜相府を出ると、姜子牙は驢馬ろばに乗り午門まで行き、適星楼に来て天子の会見を待った。奉御官が来て姜子牙を摘星楼に入るように命じた。

姜子牙は摘星楼にいる紂王に拝礼したあと、紂王はほくほくと喜びながら言った。

「そなたに鹿台の建築の監督を命じる。事が成ったときには加禄増官する。この言葉に嘘いつわりはない。図面はここにある」

姜子牙が図面を見た。鹿台は高さ四丈九尺で、その上には宝石をちりばめられ、瑪瑙(瑪瑙)の欄干出できていた。これを見た姜子牙がため息をついて考えた。


朝歌は長くいるべきところではない。言葉で暗君を諭してみよう。しかし、暗君は悟ることなく十中八,九、怒り出すだろうな。そうしたら、ここを逃れて身を隠すことにしよう。




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