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封 神 伝  作者: 原 海象
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第52話 哪吒 太乙真人の教育により半グレからヤクザ天狗になる

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>


第52話 哪吒 太乙真人の教育により半グレからヤクザ天狗になる


陳塔関に着くと、哪吒ナタは関内に入って師府にいたり、門前で李靖出てこい!と大声で怒鳴った。

これを聞いて軍政官が府内に入って報告に行った。

「三公子が来ております。鎗を手に旦那様の名を呼んでいます。どうしたらいいでしょうか?」

李靖は一喝した。「でたらめを言うな。死んだ者が生きかえるはずがあるか!」


その言葉が終わらないうちに、また一人が報告に来た。

「旦那様、旦那様がすぐに外に出ないなら三太子が府内に斬りこむと言っています」

李靖はこれを聞いて激怒し「なんということだ」と叫び、方天画戟を手に持ち、馬にまたがり府外にでた。哪吒を見ると風火輪を踏み、火尖鎗かそうせんを下げている。


完全武装をして立派な猛将としての風格があり、以前の哪吒とはまったく違った様子であった。

李靖は驚いて問いただした。

「愚か者め!お前は生前に災いをもたらしただけではなく、死後も魂がよみがえって騒動を起こしに来たのか」

「李靖、僕の肉体はとっくにお前に返した。もうお前とはなんの関係もないはずだ。なのに、なぜ廟を行って僕の神像を鞭で打ち砕き、行宮を焼き払ったんだ。今日は鞭で打たれた恨みをきっちり晴らしに来たんだ」


哪吒は鎗をしごくと、李靖の頭めがけて突きかかった。李靖はこれを画戟で応戦した。

風火輪と騎馬が交差し、鎗と戟がぶつかり合う。

だが、哪吒は太乙真人の秘術により全身宝貝として蘇えった為無限の力を有していたから、李靖は防戦一方に追い込まれ、全身から汗を流れて、力が尽きてしまった。


仕方がなく李靖は、東南方向に逃げ出した、これを見た哪吒は叫んだ。

「李靖、今日は絶対に許さないぞ。お前を討ち取るまでは決して引きあげないからな」

哪吒は李靖を追った。風火輪は馬よりはるかに速いので、じきに追いついた。李靖は慌てふためき、馬から降りて「疾ッ!」と唱えて土遁の術で逃げ出した。それを見ると哪吒は笑って言った。

「五行の術、フッ!道家の平凡な逃走術だな。土遁の術で僕から逃げられるとでも思っているのかい?」

哪吒は足に力をいれ風火輪を操作した。風火輪はうなりを上げ、物凄い勢いで前進してくる。

追いつかれたら、鎗で刺し殺されてしまう。どうしたらいいだろうか。と李靖は思わずにはいられなかった。


そうこう考えているうちにも哪吒は近づいてくる。李靖は困り果てていると、突然、歌声が聞こえてきた。李靖が歌声のするほうを見ると、頭巾をかぶり、大袖の道袍を着た道童が目に入った。その道童こそ九宮山白鶴洞 普賢真人の弟子であり自分の息子の木吒モクタだった。


李靖は次男の木吒とわかって、いくらか落ち着きを取り戻した。

哪吒は李靖に追いつくと李靖は道童と話をしている。哪タは風火輪の速度を落として来ると、木吒が近づいてきて一喝した。

「このだいそれた親不孝者め!息子が親を殺すとは何事か。さっさと立ち去れ!そうすれば命だけは助けてやる」

「お前は誰だ?大きな口をたたくんじゃない」

「俺がわからないのか?お前の兄の木吒モクタだ」

哪吒は相手が二番目の兄だと気づき

二哥ニカはこのようになった理由をしらないんだ」

と、翠屏山の一部始終を説明した。「二哥ニカはこの件について、李靖とこの僕と、どちらの方が正しいと思う?」と木吒に問いただした。木吒は哪吒を怒鳴りつけた。

「でたらめを言うんじゃない。天下に悪い両親がいるわけがないじゃないか」


哪吒は、さらに腹を裂いて腸を取り出し、肉体を父に返したことを説明した。

「だから僕はもう李靖とは無関係なんだ。父母の情などあるものか!」

木吒は激怒した。「この親不孝者め」と叫び、手中の剣を振りかざして哪吒に襲い掛かる。

哪吒は鎗で応戦しながら言った。「木吒、お前には恨みはないんだ。どいてくれ。李靖に恨みを晴らしてやるまで待っておくれよ」

「不孝者め!孝道の大義に背くつもりか」

「もう決めたことなんだ。あいつには死んでもらう」木吒は剣を、哪吒は鎗を持って、兄弟が激戦した。哪吒は傍らで立っている李靖が逃げだしはしないかと心がせくので、鎗で剣をはね上げ、金磚きんせんを取り出し放り投げた。用心していなかった木吒は、金磚きんせんで背中を痛撃され転倒した。


哪吒はそのまま風火輪に乗って、李靖に襲いかかった。李靖は身をひるがえして逃走する。哪吒はそれを追って叫んだ。

「たとえ海島まで逃げたって、お前の首をとって恨みを晴らしてやるぞ」


李靖はがむしゃらに逃走した。

しばらく逃走したあと、李靖は逃げきれないと悟って心中で嘆いた。


もうどうにでもなれ。わしが前世でどんな不孝をはたらいたかは知らんが、仙道に入れないばかりか、このようないわれのない災難に見舞われるのは何かの定めかもしれん。奴に斬りきざまわれて辱めを受けるくらいなら、いっそう自分の刀で死んだほうがましだ。


こう考えた李靖が、自ら命を絶とうとしたとき、だれかが「李将軍、早まることはない。貧道が来たぞ」と叫んだ。それは五竜山 雲霄洞うんしょうどうの文殊広法天尊で、払手ほっすを手にして姿を現した。李靖は天尊の姿を見て「老師、末将それがしをお助けください」と頼んだ。

天尊は李靖に言った。「そなたは洞内に入りなさい。私はここで哪吒を待ちましょう」


しばらくすると、哪吒は勇ましく意気盛んに風火輪に乗ってやって来た。哪吒は山腹に払手を手にした老師が一人たたずんでいるのを見たが、李靖の姿が見当たらない。

哪吒は老師に尋ねた。

「老師様、将軍を一人見かけませんでしたか?」

「先ほど李将軍がわしの雲霄洞うんしょうどうに入って行った。彼のことを聞いているのか?」

「老師様、あいつは僕の仇です。あいつさえ洞外に追い出してくれれば、あなたに手出しはしません。だけど、もし李靖を逃がすようなことでしたら、奴の代わりにあんたを鎗で突き刺します」

「お前は何者だ。鎗で突き刺すなどとは、どうも穏やかではないな」

この老師が何者であるかまったく知らなかったので、哪吒は大声で名乗った。

「僕は乾元山金光洞の太乙真人の弟子の哪吒だ!」

「太乙真人の弟子に哪吒などと言う名は、聞いたこともない。他の場所はともかく、ここで乱暴することは許さんぞ。もし乱暴をはたらいたら、桃園に連れて行って三年間 るして、杖で二百回打ちすえてやるぞ」


文殊広法天尊の神通力が広大無辺なのを知らない哪吒は、鎗をしごいて突きかかった。

天尊は身をひるがえして洞内に駆け込むと、哪吒は風火輪に乗って天尊を追った。

天尊は振り返って哪吒が近づいたことを知ると、袖の中から七宝金蓮しちほうきんれんという宝貝を取り出し放り投げた。


すると風が吹きすさび、霧が立ちこめ、砂塵が舞い、雷鳴が轟き、哪吒は暗闇の中で頭がくらくらして、方向の判断がつかない状態となった。そのすきに、首と両足に金圏きんけんが一つずつ引っかかり黄金の柱に押し付けられた。


哪吒が目を開いたときには、身動きできなくなっていた。

天尊は「親不孝者め。騒ぎを起こしおって」と哪吒をしかりつけると、李靖の長男である金吒キンタを呼んで杖を持ってくるように命じた。金吒は急いで杖を取りに行ってた。天尊は金吒に哪吒を杖で打つように命じた。


金吒は師匠の命に従って力まかせに哪吒の背中を打ち据えた。皮膚や骨よりも、内臓が痛む。哪吒は悲鳴をあげた。天尊が「それでよい」と言うと、金吒と共に洞内に入って行った。

哪吒は金柱に貼り付けにされながら、ひそかに考えた。


李靖の奴を追って来たのに、あいつを捕らえるどころか杖で打たれるなんて!

これじゃ立ち去ることだってできやしない


哪吒は、唇を噛みしめて悔しがったがどうにもならず立ったまま怒り狂っていた。

哪吒は困り果てていると、青衣の道袍を着た太乙真人がやってきた。哪吒はその姿を見て師父、弟子をお助け下さいと叫んだ。しかし何度も叫んだが、太乙真人は見向きもせず、洞内に入ってしまった。


太乙真人はここでの状況をすでに知っていたのであった。というのも、これは全て太乙真人が哪吒をここに送り込んでその殺性を摩減させるために仕組んだのであった。


白雲童子が太乙真人の来訪したことを告げると、天尊は真人の手をとり、笑いながら言った。

「あなたの弟子は、わたしが教訓しましたよ」

二人の仙人が席に着くと、太乙真人は話し出した。

「哪吒の殺性が強すぎるので、あいつをここに送って、それを摩減しようとしたのです。ご迷惑をおかけしました」

天尊は笑って言った。「さすがの悪童も、ついに悲鳴をあげおったわ」


天尊は金吒キンタ哪吒ナタを連れてくるように命じた。


金吒は拘束されている哪吒のもとに行って知らせた。

「お前の師匠がお呼びだ」

「僕にどうしろというんだよ。道術を使って動けなくしておいて、僕をからかうつもりなのか」

金吒は笑いながら哪吒に目を閉じるように言った。

哪吒は大人しく目を閉じた。

金吒は外に出て哪吒の背後にまわり、指で霊符を描き「チェ!」と唱えると首と両足の金圏きんけんが解け、金吒は七宝金蓮しちほうきんれんを収めた。

哪吒は急いで目を開けると柱も拘束されていた金圏きんけんも消え失せていた。

哪吒は一人うなずいてつぶやいた。

「ようし、今日はたいへんな目にあったけど、洞内に行った師父に会った後で、どうするか決めよう」

哪吒は金吒について洞内に入って行った。洞内では天尊と真人が囲碁を打っており、哪吒が来たのを見た太乙真人は哪吒に向かって言った。

「こちらに来て、師伯に叩頭こうとうしなさい」

哪吒は師匠の命に背くことができず、ひざまずいて天尊に拝礼し「打たれたことを感謝します」と言った。


哪吒はさらに師父に拝礼した。太乙真人が李靖を連れてくるように言った。

李靖はひざまずいて拝礼した太乙真人は李靖をたしなめた。

翠屏山(すいへきざん)の一件は、お前があまりにも度量がなさすぎたことから起きたのだ。

その為、親子がこのようなことになってしまった」


傍らの哪吒は怒りで顔を赤くし、李靖を呑みこんでしまいそうな様相をしていた。

二人の仙人は哪吒の気持ちを察していた。太乙真人は二人に向かって言った

「今後は親子がいがみ合うようなことをしてはならんぞ」

太乙真人はそのあと、李靖に先に帰るように命じた。李靖は太乙真人に礼を述べて立ち去る。

哪吒は焦ってイライラしていたが、文句を言うことができず、傍らでため息をついたりしていた。太乙真人は心中笑いながら哪吒に言った。

「哪吒、お前も帰って洞府の留守を守っていなさい。わしは師兄と囲碁を打ったあと、すぐ帰る」

哪吒はその言葉を聞いて「わかりました」と言って怒りをおさめた。


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