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封 神 伝  作者: 原 海象
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第45話 姫昌 占いの時が来た!ただそれだけだ……

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>


第45話 姫昌 占いの時が来た!ただそれだけだ……



「姫昌はなんと申していた?」

「はい、まこと姫昌は心に怨みを含んでいます。悪辣な言葉で君主を罵り

はなはだしい不敬を犯しました」


これを聞いて紂王は怒りだした。

「姫昌め!放免して故郷に帰してやったと言うのに、恩徳に感謝もせず、余を罵るとは、なんという奴だ。で、やつは何といっていた?」

「姫昌は占いを立てて、朝歌はこの一代で滅ぶ。これから長くても二十八年で終わると言っていました。また、陛下によい末路はないとも申しておりました」

「あやつ自身がどのように死ぬか聞いてきたか?」


費仲は答えた。

「わたくしども二人してそれを聞きましたところ、あやつは『己は良い末路が待っており、奇怪な死に方はしない』と申しておりました。おそらく、姫昌は口から出まかせを言っていたに違いありません。人々を騙し、自分の生死が陛下のお声一つで決まることも知らずに良い末路があるなどと申して自分をも欺いているのです。


その上、私共二人のことも占った上、なんと氷の中で凍死するなどと言いました。陛下のおかげで暮らしているわたしどもが氷の中で凍死などするわけがございません。ですから、これらはすべて意味のない戯言で世を惑わす者です。この害は何より大きいと存じます。陛下、一刻も早く処刑をお命じください」

「よし、王命を下す。晁田ちょうでんに姫昌を追わせ、捕らえさせて直ちに斬首し、城内にさらして、やつの戯言を消すのだ」


王命を受けて晁田ちょうでんは詔書を手に姫昌の後を追って行った。

一方、姫昌は馬に乗ったあと、先ほどの失言に気づいたので、ただちに家来に命じた。

「早くここを離れるのだ。遅れれば難にあうぞ!」

そこで一行はすみやかに出発して先を急いだ。


わしの占いでは、七年の難にあうということになっていたのに、無事に帰路につけたというのがそもそもおかしかった。ここで酒を飲んで失言をし、事を起こしてしまったのもまた定めか……。


姫昌が馬上でこう思い迷っているところへ、晁田将軍が配下を引き連れ馬を走らせやって来た。

「姫昌殿!陛下からの聖旨である。一刻も早く朝歌に戻るようにとのご命令ですぞ」

これを聞いて姫昌は短く嘆息し家来たちに言った。

「こうなってはもう難を逃れることはできぬ。お前たちはこのまま早く西岐に戻れ。七年経ったらわしは無事に戻る。伯邑考はくゆうこうに母の言うことよく聞き、弟らと仲良くし、西岐の制度を変えるなと伝えてくれ」

家来たちは慌てて西岐に戻って行き、姫昌は晁田将軍と共に朝歌に引き返して行った。このとき、晁田の配下の者が『姫昌が午門に着いた』ことを黄飛虎に報告した。

これを聞いて黄飛虎は驚いた。


どうして姫昌殿は戻ってきたりなどしたのだろう。さては費仲らが何やら姫昌殿を陥れたのか?と、こう思った黄飛虎は配下の周紀に命じて各老臣に午門に集まるように伝えるように命じた。


黄飛虎はそのまま馬に鞭を当て、午門にやって来た。姫昌はすでにそこで聖旨を持っていた。それを見た黄飛虎は慌てて姫昌に尋ねた。

「どうしてまた戻って来られたのです?」

「何事かわかりませんが、陛下の王命なのです」と姫昌は答えた。


晁田の知らせを受けて、紂王はすぐさま姫昌を連れてこさせた。

姫昌は大殿の階段の下で跪拝をした。

それを見た紂王は姫昌を怒鳴りつけた。

「匹夫め!帰国を許したと言うのに、恩を返すどころか余を侮辱するとは何事か!」

「わたくしは愚か者ではございますが、上に天あり下に地あり中に君ありということを知っております。陛下を侮辱するなどと、そのようなだいそれたことをどうしていたしましょう」

紂王は歯ぎしりして言った。

「いまさら舌先三寸で巧みに言い逃れする気か。先天を占い、余を罵ったこと。知らぬとは言わせぬぞ」

「八卦は先天の神農・伏羲がこの世の吉悪善悪を判断するために編み出したもの。わたくしが故意に作り出したものではございません。罵るなどとは滅相もありません。天数に基づき申し上げたまでのことです」

紂王はでは占ってみろ。この天下はどうなるのだ。

姫昌は恭しく拝礼をして言った。

「先ほどの占いで陛下の不吉を知り、それを費仲・尤渾のお二人に申しました。不吉と申しましても、是非を述べたわけではございません。たわごとなどといわれのないことです」

「余には良い末路はなく、自分自身は年をとって大往生を遂げると申したというが、これを君主を侮ったと言わずなんと言う。妖言を飛ばして衆を惑わし、のちに禍乱を招くということはまさにこのことだ。余が貴様の運命を変えてやる!

 奏御官、姫昌を午門外にて斬首し、国法を正せ」


紂王の王命を受けて側近が前に出ようとしたとき、殿外で声が上がった。


「陛下!姫昌殿を殺してはなりません!上奏したき儀がございます」


それは、黄飛虎と微子ら七人の大臣だった。


八人は入って来て跪拝し奏上した。

「姫昌殿の罪は許され帰郷をお許しになったことで、臣民は陛下の山のごとき聖徳を尊び慕っております。また姫昌殿が申す先天の卦は先聖 伏羲ふっきが推しはかりしたもので姫昌殿の妄言ではございません。もし当たっていなくてもそれは単なる卦の結果、もし当たれば、姫昌殿は狡い賢い 小人しょうじんではなく直言する君子と言うことになります。姫昌殿は決して、そのようにだいそれた過ちを犯したわけではありません。どうか姫昌殿をお許しください」


しかし、紂王は己の妖術を使って、あくどい言葉で君主を罵るなど許せるものではないわ!

と、老臣たちの諫言を聞かなかった。


亜相の比干は言った。

「わたしどもは、姫昌殿のために申しているのではありません。国の為に申しているのです。いま、陛下が姫昌殿の首を刎ねることは小事にすぎませんが、国の安危は大事でございます。それに姫昌殿の先天の卦は理に基づき出されたもので、決して戯言ではございません。もし陛下が姫昌殿の占いをご信じにならないのならば、いま吉凶を占わせて、当たれば赦し、当たらなければ妖言を飛ばした罪で処刑なさればよろしいのではありませんか?」


大臣らが極力諫言するので、紂王は仕方がなく比干の案を受け入れ

姫昌に近くに起こることの吉凶を占わせた。



姫昌は手に金銭を転がしたが、不意にびっくりしたように言った。

「陛下、明日天子の祖廟から火が出ます。早くご先祖さまや鎮守の神の位牌を他の場所からお移しください。さもなければ、お国の根本を焼くことになります」

「明日だと?明日の何時だ?」

「正午でございます」

「よし、では姫昌を牢へ放り込んでおいて、明日その証拠とやらを拝見しようではないか」


こうして黄飛虎らはともに午門から退出した。

姫昌は各大臣に感謝の礼をした。

しかし、黄飛虎は不安そうに、「姫昌殿、明日のことはよく 斟酌しんしゃくされてのことでしょうな」と尋ねた。


姫昌は肩をすくめて天の気数に任せるしかありませんと言った。


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