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封 神 伝  作者: 原 海象
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第43話 紂王 君子の姫昌が助走をつけて殴りかかるレベルの失態をする

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>


第43話 紂王 君子の姫昌が助走をつけて殴りかかるレベルの失態をする


西伯候姫昌は、天子紂王が姜桓楚の上奏文には目もくれず、いきなり午門外に突き出して、殺せ、しかばねはばらばらにしてしまえ、と命じるのを聞いて、驚いてしまった。あまりにも無道なやり方というしかない。三人は跪いて上奏した。

「君主は臣下の元首にして、臣下は君主の手足と申します。わたしどもの上奏文を見もせずに大諸侯を殺すなどとは、臣下を虐待することのほかありません。君主と臣下のあいだの倫常の間柄を絶てば、文武諸官はとても心服はいたすまい。陛下、どうかわたしどもの諫言をお聞きくださいませ」

亜相の比干が姫昌らの上奏文を開いたので、紂王はしぶしぶそれに目を通した。



臣 鄂崇禹がくすうう、姫昌、祟候虎らここに上奏文を記し、申し上げます。国と法を正すためには、奸邪を除き、無実の罪を晴らし、三綱を再び立て、内部の狐媚こびを一掃しなくてはなりません。聞くところによると、聖明な君主というものは天下を治めるにあたって、勤勉に勤めて実の政に励み、亭台楼閣などの豪華な建物は立てず賢臣を近づけて奸臣を退け、遊興、酒、女色などの度を過ごさず、ただ上天の命に従い、才徳ある官吏を登用することです。こうして堯舜は立派に天下泰平を保ち万民は安んじて暮らしておりました。しかし、いま陛下は王位を受け継がれて以来、美政とは無縁の日々怠り荒唐に振る舞われ、讒言ざんげんを信じ賢臣を遠ざけ、酒色におぼれております。

さらに姜王后は賢恵で礼儀正しく、徳を失した振る舞いもなされなかったというのに、惨い刑をお受けになりました。その一方で、妲己は宮中を淫乱にしておきながら深く寵愛を受け、重い位を賜っております。太師を憤死させて天台を司る官吏を失い、大臣を斬り刻んで股肱ここうの重臣を失い、炮烙を造って忠臣の諫言かんげんを抑えつけ、讒言ざんげんに耳を傾け我が子を殺そうとする。臣ここに費仲ひちゅう尤渾ゆうこんを罷免し君子をそばに置き、妲己を殺し後宮の粛清されるようにお願い申しあげます。こうしてこそ天心はもとに戻り天下は安定できるというもの。さもなくば、これからどんな恐るべきことが起こるかわかりません。刑罰をも辞さず、死を賭して進言致します。陛下なにとぞわたしどもの正しい勧告を聞き入れのうえ、すみやかに実行してください。それでこそ天下の万幸、万民の万幸というもの。つつしんで以上のことをお願い申し上げ、ご命令をお待ちするものでございます。この上奏が陛下のお耳に入りますよう


この上奏文を見て紂王は激怒し、上奏文を破り捨て卓子を叩いた。

「こやつら逆臣をすべて首を刎ねてさらし首にしろ!」

兵士たちは一斉に三人の大諸侯を縛り上げ、午門の外へ連れ出した。紂王は魯雄に処刑の監視を命じ、斬首の聖旨をしたためた。


すると文武諸官の中から諫大夫の費仲・尤渾が前に進み出て跪礼をした。

「姫昌ら四臣の罪は明らか、天子を怒らせるとは許すわけにはまいりません。姜桓楚は君主殺しを企み、鄂崇禹がくすううは君主を罵り、姫昌はあくどい言葉で君主を侮辱しました。しかし、祟候虎はやつらに従って天子を汚しはしたものの、公平に考えればすっと忠誠かつ正直で、お国の為に力を尽くしてきた忠臣と申せましょう。

適星楼建て、心底を披瀝ひれきして寿仙台を建て、誠心誠意お国に為に尽くしており、少しの過ちも犯しておりません。こたびのことは、祟候虎殿はただ付和雷同しただけのこと、本人の意志ではありません。もし是非を見極めず玉と石をいずれも焼くようなことをすれば、手柄ある者も無い者も等しく処罰することとなります。それでは人心は心服いたしますまい。陛下、どうか祟候虎の一命をお救いください。のちの手柄で今日の罪を償いとさせて頂ければ幸いでございます」


「なるほど、祟候虎のこれまでの手柄は大きいか。ならそれを無にしてはいかんな」

紂王は費仲・尤渾の言葉に耳を傾けた。そもそも二人は紂王のお気に入り、いまや紂王は二人の勧めることならなんでも聞きいれるようになっていた。


紂王はただちに祟候虎を特赦とくしゃせよという王命を下した。


祟候虎だけ許すという聖旨を聞いて、大殿の東端にいた黄飛虎は怒りを覚え、しゃくを手に前に進み出た。亜相の比干、微子、微子啓、微子衍、伯夷、叔斉らも同様に進み出て跪拝した。比干が口を開いた。

「陛下に申し上げます。大臣は天子の手足と申します。姜桓楚は東魯を威圧し、何度も戦功を立てております。君殺しと申されますが、何一つ証拠はなく死罪にするとことはできません。また姫昌の忠誠心ははっきりしており、国と民の為に努めてきたこと、まさに国の福臣と申しましょう。ことばは天地を会し、徳は陰陽を配し、仁は諸侯をつなぐ、義はもって文臣武将に対し、礼を用いて自国を治め、智に頼って逆賊を心服させ、誠をもって将兵と民を強く結びつかせ、法紀をもって粛清に当たる。政事は厳正で臣は賢明、君は正直でございましょう。四方の民はいずれも姫昌を西方の聖人と呼んで敬っております。鄂崇禹にしても重職にあって日夜国の為に励み、自国を乱れなく治めている者。いずれも功績ある大臣です。陛下どうか憐憫れんびんを賜り、これらの者をお許しいただければ我ら感謝にたえません」


これを聞いて紂王は言った。

「姜桓楚は反逆を企み、鄂崇禹、姫昌は巧みに人を惑わし、たわごとで君主を汚した。いずれもとても許せぬ罪だ。それをかばいだてするとは何事か!」


重ねて黄飛虎が奏上した。

「姜桓楚、鄂崇禹はいずれも名高き一方の大臣で、これまで過ちはない。また姫昌は心正しき君子で、先天の気数を占うことができます。いずれも国の大任を担っている人物。もし罪無くして処刑を行えば、天下の臣民は決して心服いたしますまい。その上、三人の大諸侯はそれぞれ数十万の兵を率いており、その将兵はいずれも勇猛で、人材も多いと聞いております。もし臣民が自分の君主が非業の死を遂げたと知れば、決して黙ってはいないでしょう。仮に謀反の心が起きれば、おそらく兵を起こして朝歌に攻めのぼってき、四方の臣民が危難にあうことは確実でしょう。

その上、ぶん太師は遠征で遠い北海にあります。このようなときにもし内乱が起きれば、お国の運命はどうなってもわかりかねます。陛下どうか憐憫れんびんの情をもってお許しください。それこそ、お国の万幸というものでございます」


紂王は黄飛虎の訴えを聞き、さらに大臣たちが極力諫めるのを聞いて言った。

「姫昌が忠誠で善良な者であることは平素から聞いている。だとしても、付和雷同したことはやはりけしからん。本来ならば重く処するところだが、大臣各位に免じて許してやるとしよう。ただし、のちにヤツが乱を起こしでもしたら、その方らの責任は逃れられぬものと思うがいい。しかし、姜桓楚、鄂崇禹については、叛意は歴然。赦すことはできん。即刻処刑してしまえ」と紂王は奏御官に王命を下した。



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