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封 神 伝  作者: 原 海象
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第42話 東伯候 宴会でHPを回復していたが娘の酷死にSANが激減

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>


第42話 東伯候 宴会でHPを回復していたが娘の酷死にSANが激減


姫昌は再び朝歌に向かった。その後は何事もなく五関(氾水関・界牌関・穿雲関・潼関・臨潼関)を過ぎ黄河と孟津もうしんを渡って朝歌に到着し、その日は金庭駅館(専門の宿場)に泊まった。

ほかの三人の大諸侯はすでに先に着いていて、このとき酒を飲んでいた、そこへ左右の者が西伯候の到着を伝えたので、外へ出迎えた。


「姫伯候殿、遅かったな」

という東伯候姜桓楚の言葉に姫昌は慌てて遠方なので遅れました。皆さまには失礼を致しました。と答えた。そして互いに挨拶をしたあと、三人の大諸侯は姫昌に罰杯として酒を飲ませた。


まずは三人から一杯(三杯)の酒を一気で飲み干したあと姫昌は尋ねた。

「ところで方々、陛下はなんの急用でわれら四人を招集したのでしょうか?いくら事が大事とはいえ、朝歌には天子の支えである武威王黄飛虎殿がいてきちんと国を治めており、さらに丞相の商容殿が治国の方略、陰陽の調和、治民の政策など各事を調整し、民を治めているはず。われら四人はどうして招かれたのだろうか?」


このときすでに四人は酒が回り、特に南伯候の鄂崇禹がくすううは祟候虎の顔を見ているうちに色々なことを思い出した。というのも祟候虎は普段から巧みに人に取り入り費仲・尤渾ゆうこんらの奸臣と結託して陛下を惑わし、土木工事を奨励して散財させている。国と民のことはそっちのけで、己の利ばかりを計っていたのである。

その為、鄂崇禹がくすううは酒の勢いから口を開き憤怒をあらわにした。


「天下の諸侯の首領はわれら四人。だが、聞くところによると北伯候殿は悪事ばかりはたらき、大臣としてあるべき行いはなく、民から搾取して私服を肥やしているそうではないか。とくに費仲・尤渾ら奸臣とは懇意こんいにしているといか。また、適星楼の建設の際、男三人のうち二人を工事に駆り出しておいて、金のある者から金を受け取って労役を免除し、金のなき者からは重役を課して苦しめているという。賄賂を受け取り放題、財物をこよなく愛し、民を苦しめるとは何事か。その上、何事も独断にて行い、勝手に人を殺し、うしろだてを頼みに悪行に出る。北伯候殿、よく『災禍は悪事を働くことから生れ。幸は恩徳を施すことから生じる』というではないか。さっさと心を改め、これまでの愚かな行為を繰り返されぬよう慎まれよ」


この鄂崇禹がくすううの言葉を聞くなり、祟候虎は顔を真っ赤にして怒りに度を失って大声で怒鳴り出した。「鄂崇禹、貴様と儂は同じ大臣だというのに宴席でこのように罵らればならんというのはどういうことだ。貴様は何様のつもりでここまで儂を侮辱するんだ!」


姫昌は穏便にすますために祟候虎に諭すように言った。

「祟候虎殿、鄂崇禹殿は悪意をもって言われたのではない。どうしてそのような横暴なことを言われるのだ。私たちの前で鄂崇禹殿を殴り倒すおつもりか?鄂崇禹殿は貴公のためを思って忠言されたのだ。もし言われたとおりであるならば前非を改められればよいし、そうでないなら今後の戒めとされればよいではいか。鄂崇禹殿の一言は実に正しくありがたいものだ。それを貴公は自責もせず、かえって好意に対して罵るというのはいけませんな」


祟候虎は姫昌の言葉に手の動きが一舜ひるんだ。そこへ,鄂崇禹がくすううが投げつけた瓶子(徳利)が飛んで来て祟候虎の顔を一撃した。祟候虎は鄂崇禹につかみかかろうとしたが、今度は姜桓楚きょかんそに止められ一喝された。

「大臣が殴り合うなどとは何事だ。祟賢伯、夜ももう遅い、休まれよ」


こうして、三対一では分が悪いと感じた祟候虎は怒りを呑みこみ退出した。祟候虎が去ったあと残った三人は久しぶりの対面にあらためて飲みなおした。


三更になってこの様子を見ていた館舎の兵士はため息をついた。


閣下、あなた方は今夜ここで酒を飲まれておられるが、明日になれば閣下たちの鮮血が市井を染めるでしょう……


このつぶやきは、夜遅く静かなので姫昌の耳にはっきり聞こえた。

「いまの言葉は誰だ?言った者をここへ呼ぶがよい」と姫昌は言った。

給仕をしていた者たちはやむなくやってきて跪いた。

しかし、一同は誰もそのようなことは申してませぬと答える。

それに、姜桓楚と鄂崇禹はその言葉を聞いていなかった。


「この儂ははっきり聞こえたぞ。だれも言っていないとは何事か」姫昌は家来を呼びこの者らの首を刎ねよと命じ、他人のために死にたくないので仕方がなくその者の名、姚福ようふくであることを口にした。

男たちは退出するとあらためて姚福ようふくを連れてこさせた。

「おまえはどうしてあのようなことを言ったのだ。本当のことを申せば褒美をやるが、嘘をいったならば承知せんぞ」


姚福ようふくは冷や汗をかきながら平伏して言った。

「いささか口が滑りました。閣下、これは漏らしてはならぬ機密なのです。私は使命官の屋敷の者ですからこの機密を知っているのです。実は姜王后さまはすでに西宮で非業の死を遂げられ、お二人の殿下は凶風にさらわれました。陛下は妲己美人を王后に格上げし寵愛なさって聖旨を下されました。四人の大諸侯様が明日上朝されれば、有無を言わさずすべての首を刎ねよというものです。そこで私は耐えかねて、思わず先のようなことを口走ってしまったのです」


姜桓楚はこれを聞いて、慌てて聞き返した。

「姜王后が?どのようにして西宮で非業の死を遂げたのだ?」

姚福は、いったん口に出したからには隠しだてはできぬと心を決め、紂王が愚昧無道のため、妻子を殺し、妲己を王后に立てようとしたことをひととおり詳しく語った。姜王后は姜桓楚の娘。我が娘が死んだと聞いて、心傷まぬはずはなく姜桓楚は姚福の話を聞いて我が身を切り裂かれたかのように叫んで倒れ伏した。


姫昌は姜桓楚を助け起こした。しかし、姜桓楚は激しく慟哭した。

「娘が目をえぐられ、両手を焼かれたとは!こんな酷い話は聞いたことがない」


姫昌は泣き崩れる姜桓楚を慰めるように言った。

「姜王后は無念の死を遂げられ、殿下らもいなくなられた。死んだ人はもうどうしようもないところで生き返りはしません。それより、今宵我らはそれぞれ上奏文をしたため、明日紂王にお会いして、王威を冐して諫言しましょう。かならずや事の成り行きをはっきりさせ、人倫を正さずにはおきますまい」


姜桓楚は泣きながら言う。

「しかし、これは我が姜一族の不幸、各位に諫言してもらうには忍びない。この姜桓楚が一人で紂王と会い無実を訴える」

「では賢伯は上奏文を1本書けばよい。我ら三人は三人で書くことにいたそう」こうして姜桓楚は涙を流しながら、その夜上奏文を書き上げた。


そのころ、奸臣費仲は四人の大諸侯のいずれもが駅館に入ったことを知り、ひそかに偏殿に行き紂王に報告した。紂王は大いに喜んだ。

「明日上朝すれば、あの四人は必ず上奏文を提出して諫言いたすでしょう。陛下はその上奏文を見ずに、有無を言わさず午門から追い出し、首を刎ねるように命令をなさればよろしゅうございます」と費仲は策を献じた。

よしそうしようと紂王は言い、費仲は一礼をもって下がって行った。



翌日の朝、紂王は昇殿し、大殿に文武諸官が上朝したところで御門官が申し出た。

「四人の大諸侯が陛下のご命令を待っております」

四人はすぐに殿前に現れた。そして東伯候 姜桓楚は象牙のしゃくを掲げ、拝礼して上奏文を差し出した。このとき何故か丞相の商容ではなく亜相の比干がそれを受け取った。


紂王は突然、詰問した。

「姜桓楚、おまえは自分がなんの罪を犯したか知っているのだろうか?」

姜桓楚は頭を下げて言った。

「私は東魯の守りについて辺境を粛清し、ずっと勤めに励み臣として尽くしてまいりました。

罪と言われてもなんのことかわかりません。それより陛下、陛下は讒言ざんげんを信じられ、美女を寵愛され、元妃への恩情を失い惨い刑にて殺し、我が子を追い殺そうとして人倫をなくし、子孫を絶やそうとしましたな。また妖妃の陰謀を信じ、奸臣の言いなりになって、忠臣を焙烙にかけたとか。

先王の大恩を受けた我が身、今日陛下にお会いしたからには、死をも恐れず諫言いたしますぞ。実に、君主が微臣の期待に背こうとも、臣が君主の期待に背いたことはないはず。

陛下、どうか哀れとおぼしめし無実を晴らし、生きている者に幸を与え、死んでいった者に安らぎを与えてやってくださいますよう」


これを聞いた紂王は激怒して怒鳴った。

「この老いぼれの逆臣め!お前の娘に君主を暗殺させて王位を奪おうと企んだ。

その罪は山より大きいと言うのに、巧みに言いぬけする気か!

この男の身体を午門の外でばらばらにして国法を正せ!」


王命を受けて、手にした金爪を持つ武官が姜桓楚の冠を剥ぎとり、縛り上げて、怒鳴り続ける姜桓楚を有無も言わさず午門の外へ突き出した。


西伯侯の姫昌、南伯侯の鄂崇禹、北伯候の祟候虎が立ち上がって奏上した。

「陛下。わたくしどもも上奏文を持ちましております。

姜桓楚殿は誠にお国を思う者。王位を奪おうなどは考えておりません。

陛下、よくよくお調べください」


しかし、初めから四人の大諸侯を殺すつもりでいた紂王は、姫昌たちの上奏文をも前の卓子の上に投げつけた。


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