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封 神 伝  作者: 原 海象
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第41話 姫昌 占いでドキドキ乙女チックに人生を決する

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>


第41話 姫昌 占いでドキドキ乙女チックに人生を決する


さて、西岐に向かった使者は朝早くから夜遅くまで馬を飛ばし州府や村々を過ぎて西岐山を超えることあと七十里に西岐の都にまで来た。使者かあたりを見ると、城内の住民の生活は豊かで物が多く、商人の顔色も明るく。人々は互いに道を譲り合い行き来していた。使者は姫昌が仁義・道徳に優れていると言っているがここ雰囲気はいにしえの世そのままといった感じだ、と思わず感嘆し、金庭駅館(専門の宿場)に泊まった。


翌日、西伯候姫昌が昇殿し、配下の幕僚・家臣とともに政を論じていると、聖旨がきたとの知らせがあった。姫昌は早速文武諸官を率いて使者を出迎え、大殿でひざまずいて聖旨を受けたまわった。



詔令。北海の逆臣は血迷い、横暴きまわりなく民を苦しめていることはなはだしい。朝廷内の文武諸官は手も足も出ぬ有様で、余を憂慮している。朝廷内には既に余の右腕となる者はおらず、また外にも協同する者も無い状態である。ゆえにこのたび四大諸侯にとくに来朝し、余の政を補佐し、禍乱平定するように命ずる。

この詔書を受け取ったなら、西伯候はただちに出発して朝歌へ向かい、余の憂いを取り除き、一刻も早く余の期待に応じるべし。大功の成したあかつきには、位と領地で功績を報いよう。慎重にこのことを考えて下したものであり。二言はない。これを詔令とする。



姫昌は詔書を受け取ると、使者のねぎらう為に宴を張り、翌日には金銀などの礼物を贈った。

「使者どの。朝歌でまたお会いいたそう。この姫昌も仕度をすまして、すぐに出発しますからな」と言い。こうして使者は姫昌に別れを告げて朝歌に帰っていった。

使者を送り出した姫昌は端明殿で席に着き、上大夫の散宜生さんぎせいに言った。

「儂の留守のあいだは、内政のことは上大夫に任せ、外政のことは 大将軍の南宮適なんきゅうてき、辛甲らに任す」


また、息子の 伯邑考はくゆうこうを呼んで言った。

「昨日、朝廷の使者が来て、この儂を朝歌へ来るように伝えて来た。そこで儂は占ってみたのだが、今回の上朝は十中八、九凶と出た。命は失われずにすんでも七年の大難にあうと出でいる。お前は西岐にとどまり、法紀を守り、国政を変えず、古い掟を遵守してすべてをとりはからえ、弟と仲良くし、君臣互いに信頼しあって、決してわがままに事を起こすようなことはするのではないぞ。何事もよく考えたうえで行い、西岐の民で、妻がない者には金を与えて妻を娶らせ、貧しいために年頃になっても嫁に行けぬ者には金を出してやって嫁に行かせよ。頼る者がいない老人には、毎月いくらかの金を与えて飢えぬように気をつけてやるのだ。儂は、七年の大難が過ぎれば自然と戻ってくるから、それまで人をよこしたりしてはならんぞ。これが一番肝心なことだ。決して忘れぬのではないぞ」


これを聞いて伯邑考はくゆうこうは跪いた。

「父上に七年の大難があると言うならば、息子の私が名代となってそれを受けに行きましょう。父上が自ら行くことはありません」

姫昌は言う。

「息子や。これはすでに定められた天数うんめいだ。逃れることはできない。いくら逃れようとしても無駄だ。お前たちがこの父の言いつけをしっかり守ってくれれば。これこそ大孝というもの。父に代わって大難を受けに行く必要などはない」


このあと姫昌は後宮を訪れて、母の太妊たいにんに一礼をした。これに対して太妊たいにんは言った。

「息子や。母がそなたの為に天数うんめいを占ったところ、そなたは七年の太難にあう」


姫昌は跪いて答えた。

「今日、天子の詔書を受けまし、私も占ったところ不吉な兆しが見え、命を落とさずにすむものの七年の大難を受けると出ました。ですから、内外の大事をいずれも文武諸官に託し、政は息子の伯邑考はくゆうこうに言い含めておきました。母上にご挨拶をして、明日朝歌へ出発するつもりです」


太妊たいにんはそのことを憂い言った。

「息子や。行ったらすべてよく考えたうえで行動するのですよ。決して無謀な行動を起こしてはなりません」

必ずや母上のおっしゃるとおりに致します。と姫昌は言いその場を離れると、今度は内宮の元妃の太姒だいじに別れを告げた。


さて、翌日になると姫昌は行李をまとめて朝歌に向かった。急いでいたので五十人の侍従だけを共に連れて行った。上大夫の 散宜生さんぎせい大将軍の 南宮適なんきゅうてき、 周公旦しゅうこうたん等の群臣と息子の 伯邑考はくゆうこう、次男の 姫発きはつ を含む文武諸官が軍民を率いて、十里の長亭まで姫昌を見送った。そこで一同は九竜席を設け、群臣嫡子に姫昌は、今日は皆と別れとなるが七年後にはまた必ず会うことが出来よう。と言って盃を空けると馬に乗った。


その日のうちに姫昌は七十里の道のりを進んで、西岐山を越えた。夜は宿場に泊まり明け方には出発して、次の日には燕山まで来た。そこで姫昌は馬上で指を折って占っていたがふいに周囲に言った。

「左右の者に前を行かせ村あるいは森があるか見てこさせなさい。まもなく大雨がくる。どこかで雨宿りをしなくてはならん」共の者は不審に思って言った。

「姫昌さま。そらには雲一つなく、明るく太陽が照っているというのに、どうして雨が降るなどおっしゃるのですか?」


ところが、そう話しているうちに、みるみる暗雲が立ちこみ始めた。姫昌は馬を走らせ、共の者にも早く森に入るように命じた。一同が森に入った途端、激しい雨が降り始めた。姫昌は森で雨を避けたが雨脚が強まり半刻も続いた。姫昌は様子をうかがって、また占いをしていると、今度は雷がくるぞと言った。

すると、近くで物凄い音がして雷が落ちた。その音は山河大地を揺るがし、なんと華岳の高山を吹き飛ばす勢いであった。みな呆然とし、不安げに1か所に集まって身を寄せ合った。馬上でびしょ濡れになった姫昌は指を折り占っているとため息をついて言った。

「激しい雷鳴が過ぎ、稲妻が生じた。これはきっと将星が現れた兆しに違いない。おまえたち、早く将星をさがしてきなさい」


これを聞いた共の者は、将星とはなんだ?いったいどこにいるというんだとひそかに笑った。

すると、1つの古墳の横に赤ん坊の泣き声が聞こえた。行って見ると赤ん坊が置いていた。供の者はこの子を抱いて姫昌に渡した。姫昌はその子を見ると、はたして元気のよさそうなよい子供であった。顔色は桃の花のように薄っすら赤く、眼には光が宿っていた。

姫昌は喜んで「占いでは儂には百人目の息子が授かることになっている。いま九十九人の子供がいるが、この様子では百人目の子供となるべき定めなのだろう」

姫昌はこう考え、早速左右の者に命じた。「この子供をどこかの村に里子に出し、七年後に儂が戻ってきたら西岐に連れて帰るとしよう。占いではこの子供はのちの福運は大きいぞ」


そして姫昌はさらに馬を走らせ、山を越え燕山を過ぎ十数里進んだ。そると清々しい雰囲気のどこか常人とは異なった一人の道士が大きな袖を持つ衣を着て現れ、姫昌の馬の前で一礼をした。「西伯候殿、それがしご挨拶申し上げます」

姫昌は慌てて馬から降りた。

「不才姫昌、失礼いたしました。ところで道士は何故ここへ?儂に何か御用がおありでしょうか?」


道士は答える。

それがしは終南山玉柱洞の道士、雲中子と申します。先ほどの暴風雨の雷鳴が轟き、将星が現れたようなので、千里の道のりを超えてその将星を探しにまいった。ちょうど西伯候殿がその子を拾われたようなので幸運にも、某は西伯候にお会い出来た次第です」

姫昌はこれを聞いて左右の者に赤ん坊を雲中子に渡した。雲中子は笑いながらその赤ん坊を見て言った。

「将星、今になってやっと現れたとは。西伯候殿、某がこの子を連れて弟子にして、西伯候殿が西岐に戻られるときにお返しいたそうと思うのだがいかがでしょうか?」


姫昌は喜んで同意した。

「それは結構ですな。しかし、のちに会ってからどのような名を証拠といたしましょうか」雲中子は小首をかしげて言った。「雷鳴のあとに現れたのだから雷震と言う名をつけましょう」


「では七年後に、この場所で……」と雲中子は姫昌に言い、雲に乗ると雷震子を抱き終南山へと戻って行った。





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