第40話 紂王 罵声を浴びせた大臣を誅殺するが状況は悪化する!? (補足説明付き)
初めまして!原 海象と申します。
今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。
「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。
<封神伝>
第40話 紂王 罵声を浴びせた大臣を誅殺するが状況は悪化する!?
商容が石柱に頭をぶっけて死を遂げたが、紂王はなおも激怒していた。
文武諸官もいきなりの事で声も出なかった。
しかし、上大夫の趙啓は、老臣商容が非業の死を遂げ
紂王がその屍を野外に捨てるように命じたことを聞いて怒りが収まらず
眉を吊り上げて大声で怒鳴った。
「この超啓、先王の期待を背くことはできん。
このうえは今日、殿前で死をもって国の恩に報い、地下で商容さまと一緒
になることができればそれこそ本望というものだ」
そして紂王に指を突きつけて怒鳴った。
「無道の昏君め! 妲己を寵愛し、讒言を信じて丞相を死に追いやり、
忠臣を排斥し、諸侯を失望させて国に危機をもたらしおって。
無道の昏君たる貴様の罪を並べてやるからよく聞けよ。
王后さまを無実の罪をかぶせ、惨い刑を与えて死なせ、妲己を王后に立てたこと。
太子を捕まえて殺そうとしたこと。
結局二人の殿下は行方知れずとなり影も形もなくなった。
そして、我が国は一面の廃墟と化するだろう。
暗君め!お前は不義に妻を殺し、非情にも息子を殺し、不道に国を治め
不徳にも大臣を殺し、不明にも奸臣・逆臣をそばに置き、不正にも酒色におぼれ
愚かにも三綱を破り、恥知らずに五常を失したのだ!
お前はには人倫道徳がまったくなく一国の君主としては無用もいいところ、
王の位につき、開祖 成湯の名を汚し、死んでもその罪は償えんわ!」
紂王は歯ぎしりをして怒り、卓子を叩いて吠えた。
「この匹夫め!君主をののしるとは!さっさとこの逆臣を捕らえて、炮烙で焼き殺せ!」
趙啓は言い放った。
「殺すなら殺せ。
この忠義を後世に残ればけっこうだ。
国を葬ったお前に残るのは、暗君の汚名だけだろうよ。永久にな!」
紂王はぎりぎりと歯噛みした。
まもなく、両側に控える者が炮烙を真っ赤に焼いたうえで、趙啓の衣服をはぎ取って、鎖で炮烙に縛りつけた。
趙啓の皮肉はまたたくまに焦げ、骨は煙と化し、その異臭は九間殿に漂った。
諸臣は無力にも口をとじて物も言わなかった。
紂王はこれで気がおさまり、内宮へ戻って行った。
九間殿でまたも一人の大臣が炮烙にかけられ、死を遂げた。文武諸官は動揺し、いつ自分の番になるか不安で魂も消し飛ぶ心地だった。
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内宮に戻った紂王を、妲己は出迎えた。二人は手を取り合い紂王は言った。
「今日、商容が大殿で石柱に頭をぶっけて死んだ。さらに趙啓を炮烙で焼き殺した。が、それにしても老いぼれ二人が好き放題に君主をののしりおって、余はもうがまんならん。群臣が炮烙をも恐れないようなことになったら、また何か別の方法を考え、強情なやつらを懲らしめてやらねばならんな」
妲己は楽しげに答える。
「陛下、わたくしに考えさせてください」
「美人の王后の地位は決まった。文武諸官はもうこれ以上諫言はしないだろう。だが、心配なのは東伯候の姜桓楚だ。奴が娘の死にざまを知れば、必ず兵を率いて朝廷に逆らい、他の諸侯とともに朝歌を攻めるだろう。聞仲は兵を率いて北海に征伐中だ。どうしたものだろうか」
「わたくしは女の身、よい考えもありません。それよりも陛下の側近の費仲を呼んで、このことをご相談されてはどうでしょう。きっと諫大夫の費仲は奇策を考え出し、天下を安定させてくれるはずです」
紂王は納得して近習の者に費仲を呼ばせた。
まもなく費仲が参上すると紂王は語った。
「姜桓楚が、姜王后が死んだことを知れば謀反を起こし、東方がやっかいなことになるだろう。おまえに太平を守る妙計はないか?」
費仲は跪き拝礼し答えた。
「姜王后が亡くなられ、殿下は行方知らず、商容は自殺、趙啓は炮烙で焼き殺し、文武諸官のあいだには不満が募っております。もしこれが外に伝わり、姜桓楚が兵を率いて攻めてくるようなことになれば、必ず大きな災いとなるでしょう。
であれば陛下、いっそうのこと先手を打って、四大諸侯を騙して朝歌に呼び寄せ、有無を言わさず首を討ち落とし、さらし首にすれば災いは根絶するというものではないでしょうか。八百の諸侯も、四大諸侯が死んだと知れば頭を失い、牙のない猛虎も同じこと。乱を起こすようなことはしないでしょう。こうすれば天下の安定を守れると思いますが、いかがでしょうか?」
紂王はこれを聞いて大喜びした。
「まさに奇才とはおまえを称する言葉だ。国を案ずる良案、蘇王后の期待を裏切らぬやつよ」
費仲が退出すると紂王はただちに四つの詔書をしたため、四人の大諸侯に送って
姜桓楚、鄂崇禹、姫昌、崇侯虎
の四人に、それぞれ使者を送って朝歌に呼びよせることにした。
補足説明です~♪
文中に出てくる「三綱五常」て何?と思いますがこれは
儒教で、人として常に踏み行い、重んずべき道のことをさします。そのため
「三綱」は君臣・父子・夫婦の間の道徳。「五常」は仁・義・礼・智・信の五つの道義。
を言います。




