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封 神 伝  作者: 原 海象
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第39話 商容  おじいちゃん頑張る!ときめきの死刑行きー!!

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>


第39話 商容  おじいちゃん頑張る!ときめきの死刑行きー!!



一方、丞相の商容はほどなく朝歌に到着した。が、聞けば民百姓が一陣の風が二人の殿下を吹きさらって行ったと言っている。商容はこれに驚き、信じられないままに午門まで来て見ると、そこは慌てた者でごったがえしとなっていた。商容はずんずんとその中へ入って行った。九竜橋を過ぎると亜相

の比干が商容に気づいた。文武諸官もそろって前に出て商容を迎えた。


商容は口を開くや否や文武諸官に檄を飛ばした。

「殿下、それに大夫各位。この商容の罪であった。故郷に戻ってまもないというのに、天子は政を乱し、妻子を殺し、荒淫無道となり果てられた。しかし、惜しむらくば威厳たる宰相府の高官、一本気な三公九卿にいたるまで、朝廷から俸禄を貰いながら朝廷の為に力を尽くさず、だれ一人として陛下に諫言する者がいないということだ。いったい何故なのだ?」


文武諸官を代表するように黄飛虎が答えて言った。

「丞相殿。天子は毎日内宮に閉じこもり、大殿にはでられぬ。聖旨も内官が我らに伝えるありさまだ。今日殷、雷の二将が殿下を捕らえて朝歌へ護送したが、先ほどこれを伝えると、陛下は殿下たちを午門に縛り上げ処刑せよと言われる。一時は処刑の命が届くのを持つのみという事態になっていたのだ。幸い、そのときは上大夫の趙啓殿が『行刑』の聖旨を破り捨ててくれたので、文武諸官は銅鑼を鳴らし、陛下に上朝いただいて諫言しようと考えたのだ。


ところが、内宮からは二人の殿下たちを斬首してから明日上奏文を聞くという聖旨があったのみ、内外が不通となり、君臣に隔たりができ、陛下にお会いすることができない。皆が手をこまねいていると、急に一陣の神風が吹きつけ、二人の殿下をさらって行ってしまったのです。まこと天が人の願いをきいてくださったというもの。いま、殷破敗が内宮へこれを報告に行っています。丞相殿、ヤツが戻ってくるまでしばしお待ちください。そうすれば何か結果がわかるはずです」


黄飛虎が言っているところへ、殷破敗が出て来た。

殷将軍は商容の姿を見て何か言おうとしたが、それより早く商容は進み出て言った。

「殿下たちは風にさらわれたそうだな。おまえは大手柄ではないか。

まもなく土地を頂き、位も上げてもらえることだろう!」


殷破敗は一礼して商容に言った。

「丞相さま。そうお咎めくださいますな。これも天子の王命でやっていること。己の利のためにやっているわけではないのです」

この物いい激怒した商容は手に持っていた鞭を横から払い下げ、殷将軍の頬に鞭を受けた。


そして商容は文武諸官に向かって言った。

「このわしが来たのは陛下にお会いするためだ。いまとなっては是非もない。生死かまわず、天子の威厳を犯してでも直諫し、身を捨てて国の恩に報いるつもりだ。そうすれば天に召されている先王の霊にも顔向けできようというものだからな」


商容はただちに執殿官に銅鑼を鳴らさせ、天子の昇殿を願った。紂王は狂風が殿下をさらったと聞き、心落ちつかずにいた。そこへ昇殿を願う銅鑼の音が聞こえてので、さらに機嫌を損じ、むっとしたまま昇殿して宝座に座った。文武諸官からの拝礼が終わると紂王は言った。「卿らはいったい何の話があるというのだ?」


商容は階の下にだまって跪伏していた。紂王は白い礼服をまとった朝廷の臣でない者が跪礼をしているのに目をとめた。

「そこで跪伏しているのはだれだ?」

「もと丞相の商容、陛下にお目にかかりにまいりました」

と、商容が答える。しかし紂王は商容とわたって驚いた。


「その方はすでに故郷へ戻った身。どうしてまた朝歌へまいったのだ。余が呼んでもおらんのに勝手に大殿へ来るとは、分をわきまえぬにもほどがる」

商容は軒端のきばまでったまま進み出て涙を流して言った。

「臣は昔、丞相の位におりながら、お国の恩に報いることができませんでした。しかし、近頃聞くところによりますと。陛下は酒色におぼれ、道徳を失い。讒言ざんげんを信じて忠臣を排斥し、朝廷の掟を乱し三綱五常を破り、君主の道を失われましたとか。すでに禍は下っています。私は死罪を冒してこの上奏文をしたためました。陛下、どうかわたくしの諫言をお聞きいれくだされ。そうすれば、雲霧が去り再び太陽が射するのと同じこと、天下の民も陛下の聖徳をあがめましょう」

こう言って、商容は上奏文を差し出した。亜相の比干がこれを受け取り、紂王の前の卓子の上に広げたので紂王はこれを見た。



上奏人商容 申し上げます。朝廷の政は愚昧となり、人倫は滅び綱紀意味をなくし、国は危機に面し、禍乱は多く、内憂はいたるところに出来しております。聞くところによると天子は道徳をもって国と民を治め、勤勉かつ慎重に事を選び、怠りや放蕩を慎み、日夜用心して上帝を祭ってこそ、宗廟と国は安定し、難攻不落のものとなるとか申します。陛下が即位された当初は仁義道徳をもって勤勉に努められ、諸侯を重んじ大臣らに厚く処され、民の苦しみを知り、その財物を大切にされ四夷(異民族)を智を持って支配しておられました。その為、気候もよく万民も安心して生活をし、まさに堯・舜など神聖な君主と比べてもよいほどでした。しかし、近頃の陛下は邪悪な者を信じ忠賢鳴る者を遠ざけ、毎日酒色と歌舞におぼれておられます。さらには奸臣の詭計に耳を傾けて、人道に背いて王后さまをころされ、妲己の讒言ざんげんを容れて、太子に死を賜り、先王の子孫を絶とうとしたとか。父としての慈愛まったくなくされたとしか言えません。

こうして陛下は三綱五常に背かれ、人性をなくし、その罪は夏の最後の王 傑にも勝るとも及びません。わたくし死を恐れず、敢えて耳に逆らう忠言を献じます。一刻も早く妲己に自刃を命じ、王后さまと太子の無実を晴らし、讒言ざんげんを献じる奸臣を殺し、忠臣や義士を惨たらしく殺した誤りを認めてくださるようお願い致します。

こうしてこそ民は心服し、文武諸官も喜び、朝廷の綱紀も戻って宮内は平和となります・陛下は太平な天下の君主に戻り、万年の安康をえることができましょう。そのようにしていただければ、私死しても後悔はありません。恐れつつしんで上奏致します。



紂王はこの上奏文にかんかんに腹を立てた。即座にこれを破り捨てると奏御官に命じた。「この老いぼれを午門から突き出し、金砕棒で頭を叩き割れ」

これを聞いて両側に立っていた奉御官が前へ出ようとすると、商容は立ちあがって怒鳴った。

「このわしを捕らえるというのか?わしは三代の君主に股肱ここうの臣として仕え、先王に次の君主を託された大臣であるぞ!」

商容はまた紂王に指突き付けて、声を荒げてののしった。

「昏君め!酒色におぼれ、政を愚昧にしおって。先王がいかに勤勉に励まれ、品徳を修め、天命にもとづいて偉業を成し遂げられたかを思え!いま昏君が天を無視し、祖先を捨て、横暴の限りを尽くしているために、この国は滅び、人々は殺され、先王の御名にも泥を塗ることになるのだ。また、王后は元妃にして天下の国母。何の誤りもないのにおまえは妲己を近づけ、酷刑で王后を殺し、三綱五常を捨てた。さらに、殿下には少しもあやまりがないというのに、おまえは讒言ざんげんを聞き死を命じ、あげく大風にさらわれるにまかせて人倫をも失った。直諫する忠臣を殺し、良臣を焼き殺し、君主として最低の条件すら失ったのだ。すぐに禍乱が起き、つぎつぎと怪奇な不吉な兆しが起こるだろう。まもなく国は滅び、ほかの王朝がとって代わるだろう。無念なり!先王が全力を傾け子孫に残された萬世の大業と難攻不落の美しい山河はおまえという昏君の手によってかけらも残ることがなく葬りさられるのだ!貴様が死んでも先王に合わす顔はあるまい」

紂王は卓子を叩いて怒鳴った。

「早くこのじじいを午門の外へ引き出し、金砕棒で頭を叩き割れ」

商容は大喝した。

「わしは死は恐れん!この恥知らずの王め。ああ、わしはとても申し訳が立たぬ。君主の誤りを正すことも出来ず、先王に合わす顔がないわ。昏君め!おまえの国は長くはない。まもなく滅びるだろう!」


こう言い終えるなり、商容はうしろを振りむき、竜が彫ってある石柱へ自ら頭をぶつけた。

脳漿のうしょうは吹き出し、血は白色の衣服を赤く染めた。


大臣らは商容が石柱に頭をぶつけ、階段の下で死んだのを見て、互いに驚きの顔を見合わせた。

紂王の怒りはなかなかおさまらず、奉御官に命じる。

「このおいぼれの屍を都の城外へ打ち捨ててしまえ。埋葬してはならんぞ!」

そこで、左右の者が商容の屍を城外に担ぎだして捨てられた。


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