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封 神 伝  作者: 原 海象
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第34話 紂王 武将たちの忠誠心が15ポイント下がった!

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>


第34話 紂王 武将たちの忠誠心が15ポイント下がった!


その頃、二人の殿下は楊貴妃に言われたとおり、朝殿に逃げて来た。そこには宮内からの知らせを待つ文武諸官がまだ退朝せずにいた。武成王の黄飛虎があわただしい足音を耳にして怪訝に思い、孔雀屏風の中を見ると二人の殿下がおどおどしていた。黄飛虎は慌てて二人殿下を迎えた。

「殿下方。そうなされたのです?」


殷郊は黄飛虎を見て声を上げた。

「黄大将軍、どうか我ら兄弟の命を救ってください」と言うなり泣き出し、黄飛虎の服をつかんで地団駄を踏んだ。


「父上は妲己の言いなりになって、善悪を見極めずに、母上の片目をえぐりとり、銅の升を赤く焼いて手を焼いて、西宮で惨たらしい死に追いやったのです。黄貴妃さまの尋問された母上の罪状は全くの嘘でございます。生みの母が惨い刑を受け、横に罪人姜環が笑いながらひざまずいているのを見てかっとなり、後のことも考えず姜環を殺してしまったのです。そのまま剣を手に妲己を殺しに行こうとしたところ、晁田がこのことを父上に報告したのです。その為、父上はわたしたち兄弟に死をお命じになりました。黄伯父上、母の惨死を憐れんで、この兄弟の命をお救いください」


こう言って、二人の殿下は大声で泣きだし、居並ぶ文武諸官はこの言葉に目を潤ませぬ者はいなかった。

「国母が陥れられ殺されたとあっては、黙って見ているわけにもいかぬ。早く鐘と鼓を鳴らして天子の上朝していただき、真相を申し上げよう。そうすれば首謀者も判明し、王后様の冤罪を晴らすことができるかもしれない」


群臣が言っているところへ、大殿の西側から、雷が鳴ったような大声が聞こえた。

「天子は政治には愚昧で、自分の妻子を殺し、炮烙を造って忠臣を殺し、非道横暴この上ない。臣として、いや男として王后様の冤罪を晴らせず、太子の為に仇を討つこともできないで涙を浮かべているばかりでは、子供と同じではないか!いま天子は愚昧非道で、人倫を失い、大義に背き、とても天下の覇者とはとてもいえん。我ら臣下もその下にあって恥を覚えるより、いっそのこと朝歌を出て、賢明な君主を改めて選び、国を守るために、この無道な昏君を殺してしまうべきではないか!」


群臣が声の主をみると、それは鎮殿将軍の方弼・方相の二人の兄弟であった。

あわてて黄飛虎は二人に大喝した。

「大胆に何をほざく!朝廷には多くの文武諸官がおるというのに、

おまえたちが口に出しする幕などあるものか!

本来なら乱臣としてひっ捕らえ斬首するところだ。大人しく下がっておれ!」


方兄弟は黄飛虎の言葉を聞いてうつむき、口をつぐんでしまった。

黄飛虎は国の政治が乱れ、不吉な兆しがたえず現れるのを見て、すでに天意と民心は怒り、天下が大乱を迎えることを悟り、不快をおさえきれず、ため息をついた。また微子、比干らは殿下たちと文武諸官はいずれも歯ぎしりしたり、嘆いたりしたが、何一つ良い考えは浮かばなかった。


すると、赤い礼服をまとい、宝帯を締めた一大臣が前に進み出て言った。

「今日の出来事は、まさに終南山の雲中子の予言が正しいことを示すもの。いま、天子は司天台(天文・暦を司る部署)の 杜元銭とげんせんを誤って殺し、炮烙を造って諫言した梅伯を焼き殺し、今日またこのような奇怪なことが起こりました。陛下は是と非を見極めず、妻子を殺そうとなさっている。きっと背後に 詭計きけいを出した逆臣がいて、密かに喜んでいるものと思われます」


こう言ったのは上大夫の 楊任ようにんであった。

上大夫からこのようなことを言われるとは、黄飛虎はしきりにため息をついた。


文武諸官はこれを聞いて黙ってしまい。大殿には二人の殿下のすすり泣く鳴き声が響いた。

この時、方弼ほうひつ ・ 方相ほうそう諸官をかき分け進み出た。

そして方弼が殷郊を抱きかかえ、方相が殷洪を背負って大声を張り上げた。


「紂王は愚昧無道で、子を殺して成湯の子孫を絶とうとし、妻を殺して人倫を捨てている!我ら二人は殿下を守って姜王后の父君の守護する東魯に行き援軍を求め、昏君を殺して成湯の子孫を改めて立ててやる。我らはこれから謀反をいたす!」


こうして、二人はそれぞれ殿下を背負い、その足で朝歌の南門に向かった。

多くの官吏はこれを止めようとしたが突き飛ばされ誰一人方兄弟を止めることができなかった。

文武諸官は方弼らが謀反をしたので驚き色を失った。


ただ黄飛虎だけは知らぬ顔をしていた。そこで亜相の比干が黄飛虎に尋ねた。

「黄どの。方弼らが謀反をしたというのに、どうして何もおっしゃらないのか」


飛虎は南門の方角を見ながら言った。

「惜しむべし。文武諸官のうち誰一人として方兄弟に勝る者はあらぬ。

方弼はただの粗忽者だが、国母が無実の罪を受け、太子が非業の死を遂げるのを黙って見ておれず、己の官位は低く諫言できぬと見て、二人の殿下を背負って去って行ったのだ。もし先ほど聖旨が追って伝えられれば、殿下らはかならず命を落とし、方兄弟も難をこうむっただろう。絶体絶命の窮地と見てとって、忠義一心から謀反と言う大罪に踏み切ったのだ」


百官がこれに答えようとしているいと、後殿からあわただしい足音が聞こえた。

見ると晁兄弟が手に宝剣を持ってやって来た。

「大人各位。お二人の殿下はここ九間殿に来られませんでしたか?」


黄飛虎は口を開けた。

「二人の殿下は先ほど大殿に来られた。無実の罪で国母を憤死し、天子は太子に死を賜ったと泣いて訴えてな。鎮殿将軍の方弼・方相がこれを聞いて憤りを覚え謀反を宣言して二人の殿下を背負い朝歌を去って行った。まだ、そう遠くへは行っておらんだろう。おまえたち、天子の王命を受けたのなら、一刻も早く彼らを捕らえ陛下の言う国法を正すことだな」


黄飛虎の答えを聞いて晁兄弟は相手は方兄弟であることを知って驚きおののいた。

方兄弟はいずれも巨漢であり、武勇では晁兄弟など、渡り合うどころか一発殴られて参ってしまう。


黄飛虎め。我ら兄弟が痛い目にあわせようと言う腹だなと思った晁田は

「方弼らが謀反を起こし、二人の殿下を守って朝歌を離れたとあれば

我らは後宮へ戻り、このことをご報告するしかありませんな」

と応じた。そしてそのまま寿仙宮へ赴き、紂王に報告をした。



*******


「我ら、王命により九間殿にまいりましたところ、文武諸官がまだおりましたが、二人の殿下の御姿はやはり見当たりませんでした。群臣に尋ねたところ、二人の殿下が泣きながら無実を訴えたので、鎮殿将軍の方弼・方相の二将軍が謀反を決意し、殿下らを守って朝歌を離れ、東魯に援軍を求めに行ったと言います」


これを聞いた紂王は腹を立てた。

「方弼らが謀反を起こしただと?さっさと捕らえてこい。容赦するな!」


晁田は急いで言った。

「方弼は力強く勇猛な者ゆえ、我らにはとても捕らえられません。

あの方兄弟を捕らえるのならば、陛下が勅令を下して武威王黄飛虎に行かせることです。

そうすれば殿下たちも逃げおおせることはできないでしょう」


紂王はうなずき、直ちに黄飛虎に王命を下し、二人の殿下を捕らえるように行かせた。


晁田は、逆賊を殺せという剣旨、竜鳳剣を手に持ち大殿へやってくると武威王黄飛虎に逆臣方弼・方相を捕らえ、二人の殿下の首級を持ちかえれ、という天子の剣旨を伝えた。


これを聞いた黄飛虎は鼻で笑った。

「晁田のやつめ。俺に面倒ごとを上手く押し付けおって」


これを聞いた黄飛虎の配下の黄明・周紀・竜環・呉謙の四将は

自分たちもついて行くと申し出た。


しかし、黄飛虎はそれには及ばんと言って

ただ一人一日に八百里走る聖獣の五色神牛に乗獣して出発した。


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