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封 神 伝  作者: 原 海象
33/84

第33話 紂王 親不孝者の殷郊・殷洪の親の顔が見てみたい!

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>

第33話 紂王 親不孝者の殷郊・殷洪の親の顔が見てみたい!


晁田ちょうでん晁雷ちょうらいの二人が寿仙宮に戻り

お二人の殿下が剣を手にこちらへ来られますと報告したので、紂王は激怒した。


「親不孝者が!姜王后が余を殺そうと企み、その処刑もすまぬうちに、

その子が剣を手に父を殺しに来るとは、なんと親不孝な奴らだ!


晁田・晁雷!その方らは剣旨(天子の持つ竜鳳剣)を持ち、法を正すためにかの二人の親不孝者の首を取ってくるがいい」


天子の王命を受けて晁田・晁雷は竜鳳剣を帯び、寿仙宮を出て西宮に来た。


そして西宮の奉御官が黄貴妃に、晁田・晁雷が王命により殿下たちを誅殺させるために来たことを伝えた。

これを聞いた黄貴妃は急いで宮門に来ると、晁田・晁雷の二人が天子の持つ竜鳳剣を手に持ってやってきた。

「おまえたち、どうしてまた西宮にきたのです?」


晁田ちょうでんは拝礼をし、黄貴妃を見て言った。

「この晁田、王命により剣旨を賜り、父殺しの罪によって両殿下の御首級みしるし

頂きにまいりました」


黄貴妃は大喝した。

「愚か者が!先ほど太子がお前たちを追って西宮を飛びだしていったばかりなのに、どうして東宮へ行かずこの西宮にきたのですか?さてはお前たち、天子の命を盾に内宮で宮女に手出しをするつもりであろう!


君主を欺く匹夫め!


お前たちが王命の剣旨を持っていなかったら、ただちにお前らの馬面うまづらを叩き斬る

ところです。早く出て行きなさい!」

晁田兄弟は温柔優雅で名高い黄貴妃が時ならぬ剣幕にさすがに驚き、おどおど引き下がり

そのまま東宮へと向かった。


黄貴妃は早速宮内へ戻り、殷郊兄弟を読んで涙を流して言った。

「昏君は妻を殺し、子を誅殺する剣旨がでています。私の西宮にも監視が付くのは時間の問題です。その為あなた方を私ではお救いすることができません。ひとまず声慶宮のよう貴妃さまのもとで一日二日かくまっていただくことです。もし大臣らが諫言して救ってくれれば、そのときこそ、殿下たちの身も安全といえるでしょう」


二人は黄貴妃の前にひざまずいた。

「黄貴妃さま。この御恩はいつお返しできることやら。ただ母上のご遺体をそのままになっているのだけがやりきれません。黄貴妃さま、母の無念の死をお憐れみ下さるなら、木の板で母のご遺体覆ってやってはいただけないでしょうか。そうしていただければ、ご恩は決してわすれません」


黄貴妃はうなずいた。

「わかりました。殿下たちは早くお行きなさい。あとのことは私が引き受けました。私はこれから寿仙宮へ行って、できるだけのことを致しますから」

二人の殿下は西宮を離れ、声慶宮を訪れた。声慶宮では、よう貴妃が宮門にもたれて姜王后の取り調べの結果を案じていた。そこへ二人の殿下が現れ泣きながら跪拝きはいしたので楊貴妃は驚いた。

「まあ、殿下、姜王后娘々はいかがあそばれました?」

殷郊が泣いて訴えた。

「何者かに買収された姜環なる者が母を陥れ、父上が妲己の話を信じたので、母上は片方の目をえぐられて両手を焼かれ、ついに非業の死を遂げました。そしていま、父上は妲己の讒言ざんげんを聞き入れて、私たち兄弟をも殺そうとしているのです。楊貴妃さま、どうか私たち二人をお救いください」

楊貴妃はこれを聞いて、あまりのことにむせび泣いた。そして、殿下たちは楊貴妃の言葉に従って、すぐに宮内に入った。

楊貴妃はひそかに考えた。



晁田・晁雷は、東宮に太子がいないことがわかれば、きっとここにも探しにくるでしょう。まずはあの二人をなんとかあしらわなくては……



楊貴妃がそのまま宮門のところに立っていると、晁田・晁雷が凶相もあらわに急ぎ足でやって来た。楊貴妃は近待の者に命じました。

「宮官に命じて、来た者を捕らえなさい!ここは深宮だと言うのに、外官が勝手に入りこむなどとは、その罪は一族に及ぶものを……」


これを聞いて、晁田・晁雷は慌ててかしこまった。

「楊貴妃さま。我らは天子の王命によりお二人の殿下を探しに来た者です。ここに天子の剣旨がございますゆえ、拝礼できかねますがご容赦ください」

竜鳳剣を見た楊貴妃は大喝した。

「殿下は東宮にお住まいなのに、どうしてここ声慶宮に探しに来たのです!天子の王命がなければ、わたしはお前たちを許しはしません。早々に帰りなさい」

晁田は口答えするわけにもいかないので、引きさがるよりほかなかった。


兄の晁田がどうすると弟の晁雷に尋ねると「三宮内を探してみたが、殿下はどこにもいない。それに我らは宮内のことは詳しく、道すら知らない状態だ。ここはひとまず、寿仙宮に戻って陛下にご報告するしかないだろう」そこで二人はともに寿仙宮へと帰って行った。


楊貴妃が宮内に入ると、二人の殿下が慌ててやってきた。楊貴妃は二人に言い聞かせた。

「ここは天子の目が光っていますので、殿下たちが長くいられるところではありません。いま天子は愚昧ぐまいで、臣下はあざとく、妻子を殺して人倫をむなしいものにしています。殿下、九間殿にお行きなさい。文武諸官はまだ退朝していないはず。殿下たちの大伯父上の微子殿、箕子殿、比干殿、それに武威王黄飛虎殿にお会いして、父に殺されかけていることを訴えればきっと守ってくれるでしょう」

二人の殿下は楊貴妃の恩に叩頭して感謝し、涙を流してその場を離れた。楊貴妃は二人の殿下を送り出したあと宮内に戻って敷物の上に座って思いを巡らせた。



 姜王后様は陛下の元妃であらさせられながら、奸臣に陥れられて惨い刑を受けてお亡くなりになられた。黄貴妃には武威王黄飛虎様が後ろ打で担っているから同罪にはならないだろう。しかし、わたしはただの側室にすぎない。いまは妲己が寵愛を頼みに昏君を惑わせているから、もし私の宮から二人の殿下が逃げ出したことがわかれば、わたしはきっと罪をとがめられ、姜王后様と同じ目にあうでしょう。それに、私は長年昏君に仕えたものの、子供も産んでいない。東宮の太子は昏君の実の子だというのに、人倫を捨てた父親にころされかかったなんで。きっと、まもなく大きな災いが起こるわ。ああ、生きていてもろくなことはありもしないわ



楊貴妃は考えれば考えるほど悲しくなり、とうとう宮門を閉め、首を吊って果ててしまった。この知らせが寿仙宮にも届いたが、紂王は何故楊貴妃が自決したかのかがさっぱりわからない。紂王は仕方がなく屍を棺に入れ、白虎殿に安置するように命じておいた。


*****


さて、晁田・晁雷が寿仙宮に戻ってみると、ちょうど黄貴妃が宮内に入って報告をしているところであった。

「姜王后が死んだ?」と言う紂王に黄貴妃は答えた。「姜王后様は最後にこう叫ばれました。『私は陛下にはべり十六年、二人の子を産み、長男は王太子となりました。そして、中宮にて毎日慎しみ日夜怠ることなく、陛下のおそばの妃に対し、嫉妬したことなどがございません。しかし、何者かが私を恨み、刺客姜環を買収して大逆非道の罪を私に押しつけたために酷刑を受けて十本の指は焦げ、肉と骨は砕けるというありさま。実の子の運命も浮かぶ雲のようで、夫婦の愛も水に流れ、死んでも獣より劣る始末。この深い恨みを晴らす場もなし、せめて後世の人が公平な判断をしてほしい』と。


姜王后様はこれらの言葉を陛下に申し上げるように私に託されてから息を引き取られました。あのお方の亡骸は今も西宮に置かれたままです。陛下、元妃というご身分と、陛下の為に太子をお産みになられたことを思って、棺を送って白虎殿に安置し、葬儀を行ってください。そうすれば文武諸官も納得しましょうし、天子の大徳も失われずにすむことでしょう」

これを聞いた紂王はそれを許したので、黄貴妃は西宮に帰って行った。そこへ、晁田・晁雷兄弟がやって来て報告をした。

「太子はどこにいた?」

「東宮を調べましたが、殿下の行方はわかりません」と晁兄弟は答える。

「では、西宮にいるのでは?」

「西宮にも、声慶宮にもおられませんでした」

「この三宮にいないならば、きっと大殿だろう!必ず奴らを捕らえて国法を正すのだ!」

晁田・晁雷兄弟は深いため息をつき寿仙宮を出たのであった。


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