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封 神 伝  作者: 原 海象
29/84

第29話 紂王 暗殺未遂、犯人はお前だ!!

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>

第29話 紂王 暗殺未遂、犯人はお前だ!!


ある日、紂王が寿仙宮にいると妲己は言った。

「陛下はわたくしのそばをお離れにならず、すでに一ヶ月も上朝されておりません。

どうか明日にでも上朝され、文武諸官の期待に応じてあげてください」

「おお、美人よ、お前の配慮よくぞ申した。いにしえの賢妃もおまえに勝るまい。

明日、必ず上朝して国の大事を治めお前の配慮に応えることとしよう」

と、紂王は妲己の配慮に喜んだが、これは妲己と費仲の奸計で上朝を勧めたのであった。



翌日、紂王が上朝するというので左右の奏御官が慌てて紂王の護衛についた。

寿仙宮を出て分宮楼を過ぎたところの門で、頭巾をかぶり、宝剣を手にした一人の者が虎狼のように猛々しく突き進んできて大声を上げた。

「無道なる昏君フンチュンめ!荒淫にふけり、酒色におぼれるおって!王后の命に従い、昏君を誅する。成湯の天下は余人には渡さん。我が主が君主となるんだ」と言って剣を振りかざして躍りかかった。

しかし、紂王の前につくことかなわず左右の奏御官に取り押さえられ、縄で縛られて紂王の前に引きずり出された。


紂王は驚きそして怒ったまま、大殿に上って宝座に着いた。


文武百官が拝礼をしようとした直後紂王は武成王と亜相を呼び、二人は前へ出て拝礼した。

「いま、分宮楼の前で刺客に殺されそうになった。一体何者が指図したのであろうか?」これを聞いた武成王黄飛虎は驚き、すぐさま確認した。


すると一人の男が前に出た。その男は総兵の役職につく魯雄ろゆうであった。

魯雄が拝礼しながら言うには「昨夜は私が警護を務めてました。しかしこの時点で怪しい奴は見かけませんでした。そやつは五更の時分に、諸官に混じって分宮楼に紛れ込んだものと思われます」


武成王黄飛虎は刺客をこれへ!と言って刺客は軒端の前に引き出された。

「諸卿、余に代わってこの件を明らかにする者はいないか?」と紂王が言うと一人の男が前に出て拝礼をした。

「不才費仲が、この件を明らかにして、陛下にご報告いたしましょう」

費仲は君主を諫める役職である諫大夫で犯罪者を尋問する役人ではない。だが、もともとこれは姜王后を陥れるために自分が仕組んだ罠だから、他の者が尋問して事がばれてはまずいと考え名乗り出たのであった。


費仲は刺客を午門外に引きずりだして、尋問をしたが刑具を用いる前に刺客はすらすらとすべてを白状した。そこで費仲は大殿に戻って天子の前に拝礼をして報告した。居並ぶ百官は、これが費仲の計略だなどと思わず、黙って費仲の報告に耳を傾けた。


費仲は言葉をためらい紂王に、臣の罪をお許しいただければ申し上げますと言った。

紂王は「諾!」と一言いって費仲に話を促せた。

「あの刺客は姜環と申しまして、元は東伯候姜恒楚の家来。中宮の姜王后の命に従って陛下を殺害しようとしたものです。それもすべて御位を奪い、姜恒楚を天子にするためのもの。しかし、これにより逆臣の企みがあばかれ、すぐに捕らえたわけです。陛下どうか九卿と文武諸官をお呼びになり、王族たる王后の刑を軽くおとりはからいくださいますよう」


これを聞いた紂王は、机を叩いて激怒した。

「姜王后め!余の元妃でありながら王位の簒奪を企むとは!王族だからと言って、刑を軽くすることは許さぬ。それでは内宮の災いは治まることがなく、その禍根が残り余の身辺の災いも防げぬわ。一刻も早く武成王の妹の西宮黄貴妃に尋問させ、事を明らかにして報告せよ」


こう言うと、紂王は怒りおさまらぬまま寿仙宮へと戻って行った。


朝廷の群臣は、はたしてこれが真実か否かを口々に論じ合ったが結論は出なかった。


上大夫の楊任が武成王黄飛虎に言った。

「姜王后は品行正しく、人に優しいしとやかな性格で、内宮をきちんと治めていらっしゃる。小官の見るところこの事件にはよくわからない部分がある。おそらく、下心のある者が何やら企んだことではないのかと思うのだ。武成王殿下、妹君の西宮黄貴妃さまのご報告を待つことだ。判断を下すのはそれからでも遅くはないだろう」

そこで、文武諸官はそのまま九間殿にとどまった。


その頃、奏御官から天子の命が中宮に知らせに来た。

これを受け姜王后はひざまずき聖旨を拝聴した。



勅に言う。王后は中宮の第一位にあり、婦徳のもととなり、その貴さは天子に値するものなり。しかし、王后は日夜慎み、修養に励み、国母としての美徳を保ち、天子の賢妻として努めることを忘れ、大胆にも叛意を起こし、刺客姜環を使って分宮楼にて天子殺害を企てた。幸い天地に霊あり、刺客は捕らえ午門にて尋問したところ。すべてを白状せり。

王后とその父姜恒楚はともに乱を起こし、王位の簒奪を企てたものなり。これ条理に背き君臣・父子・夫婦の道を絶つものなり。奏御官はこれを捕らえ西宮へ護送することを命じず。西宮はぬかりなく尋問して事を明らかにし、重く処罰すべし。私情から法を曲げることは許さぬ。



姜王后はこれを聞き、声を放って泣き出した。

「冤罪です。いったい何者が故意に事を起こし、わたくしに赦されざる罪を着せようとしているのでしょう。わたくしは長年、内宮にて勤倹に努めきました。それなのに。事の起こりをよく確かめもせず、西宮に護送して厳しく処断せよとは!」


姜王后は叫びながら涙で袖を濡らした。

しかし、奏御官はかまわず姜王后を西宮へと連れて行った。


黄貴妃は聖旨を上席に置き、国法に基づき事を運ぶしかない。姜王后はひざまずいた。

「わたくし姜氏がこれまで忠誠を尽くしてきましたことは、天地の神が知っておられます。いま不幸にも他人から陥れられましたが、賢妃よ。わたくしの平常の行いをよくよくお取り調べの上、どうかわたくしの身の潔白を証明してください」


そこで西宮黄貴妃は言う。

「聖旨には、国母さまが君主を殺すよう姜環に命じ、この国を東伯候姜恒楚に献げて成湯の天下を奪おうとした。これ一大事ゆえ、礼に背き倫を乱し、夫婦の大義を失い、元妃としての恩情を絶つとあります。もしこれが本当なら、その罪は九族におよびましょう」


「賢妃、お聞きください。わたくしは東伯候姜恒楚の娘で、父は東魯の守りにつく二百諸侯の頭。官位は高く法の上にあり、その上、天子の外戚です。その娘は王后、位は四大諸侯よりも高いのです。さらに、わたくしの産んだ息子は既に王太子に立てられ、天子の跡継ぎとしてやがて王位につく身、そのときにはわたくしは母后となるのです。第一、天下の諸侯は私の父一人ではありません。他の諸侯がともに軍を起こして罪を問い、その地位はあっという間に崩れてしまうのは目に見えています。賢妃よ。どうかよくよくお調べになってわたくしの疑いを晴らしてくださいませ。これはまったくのでたらめです。わたくしの忠誠心を天子にお伝えいただければ、大恩この上ありません」

姜王后の言葉が終わらないうちに、紂王からの尋問の結果の催促が来た。西宮黄貴妃は乗り物に乗り寿仙宮へ向かった。




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