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封 神 伝  作者: 原 海象
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第28話 妲己 費仲に密勅を出し、これは無理だ~と費仲は思い悩む

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>

第28話 妲己 費仲に密勅を出しこれは、無理だ~と費仲は思い悩む


ある月の15日,姜王后は中宮で、各宮の妃から拝礼を受けていた。

黄飛虎の妹である西宮の黄貴妃と楊貴妃の二人が居合わせたところへ宮女が申し上げた。

「寿仙宮の蘇妲己様が来られました」

と王后は入って来た妲己を見ると、中央に姜王后がそして左側には黄貴妃、右側には楊貴妃が座っていた。跪拝きはいすると姜王后は立つように言ったので妲己は傍らに立った。


「これが噂の蘇美人ですか?」

と二人の貴妃は姜王后に尋ねる。姜王后はうなずき、妲己に向きなおった。


「陛下が寿仙宮で日夜淫行にふけり、朝政を放任しておられるため法紀は乱れています。

それなのにお前は一言もお諫めしないどころか、陛下を惑わせて、朝夕舞を続け酒色におぼれさせ、諫言を退け忠臣を殺すように仕向け、成湯の法典を破って国を危局に引き込みましたね。


すべてお前の罪です。今後、行いを改めず、相変わらず勝手気ままなに振る舞うようであるならば、かならず中宮の法に基づいて処分致します。お下がりなさい!」


妲己は怒りを抑えて黙って叱責を受けると、一礼して中宮を離れ、顔を真っ赤にして寿仙宮に戻って来た。

宮内に入って刺繍をした布を掛けられた椅子に座るとため息をついた。

「蘇美人、姜王后に拝礼に行かれて、どうしてそのようなため息をつかれるのですか?」


妲己は歯ぎしりをして言った。

「私は天子の寵妃。それを姜王后ときたら、正宮という立場を盾にとって、二人の貴妃の前で私を罵って辱めたのだ!この恨みは必ず思い知らせてやる!」


宮女のなかで特に機転の回る鯀損こうえんはうなずきながら言った。

「陛下は先日蘇美人を正室に立てることをお約束なさったではありませんか」


妲己は考え込んだ。

「陛下はそうおっしゃるけれども。姜王后はまだ生きているのだから、それは無理というもの。何か妙計を立ててまずは姜王后を陥れることだ。そうしなければ、不服の思う群臣がまた諫言に押しかけるばかり、それでは気など安まるはずはない。お前、何か妙計はないかい」


鯀損こうえんは言った。

「私たちは所詮女の身、わたくしも人にお仕えするはした女にすぎず、妙案と言われましても……。それよりも、外臣に協力させて事を運んだほうが良いと思います」


妲己はしばらく考えた。

「しかし、外臣をここに入れることはできない。そのうえ宮中には目や耳も多い。もしその者がまことに頼れる者でなかったら、とても上手くはいかないだろう」


鯀損は熱心に言った。

「明日、陛下は御花園に行かれます。そのあいだに蘇美人の命によりひそかに中諫大夫の費仲をここに呼び寄せて、私から何か策を立てるようにお伝えいたしましょう。うまくいけば、費仲の地位や俸禄を約束すればいいでしょう。あの男の才覚は確かです。必ずや尽力いたします」

「それもいいが、費仲は断りはしないだろうか?」

「費仲は陛下の寵臣で、陛下は彼の言いなり。しかも、蘇美人を陛下に推薦したのはこの男ですから大丈夫。きっと力を尽くしてくれることでしょう。

これを聞いて妲己は喜んだ。



*****



翌日、紂王は御花園に遊びに出かけた。鯀損こうえんは密かに妲己の命を伝えて、費仲を寿仙宮に呼び出した。費仲が寿仙宮の外に来ると鯀損が出て来た。

「費大夫殿、これは蘇美人の密勅です。外へ出てから見てください。これは極秘ですので、決してほかに漏らしてはなりません。もしことが上手くいけば蘇美人が決して悪いようにはなさりません。宜しくお願いいたします」


言い終えると鯀損は宮内に戻って行った。

費仲は午門を出て自分の屋敷に戻り、閉ざした部屋の中で密勅を開いた。

それには、なんと姜王后を陥れるようにという妲己の命が記されていた。費仲はこれを読んで恐ろしくなった。



(姜王后は天子の王后。その上、父は東伯候 姜桓楚きょうかんそ東魯とうろの守りにつき、百万の強兵と1千の将軍を持つ人物。さらにその息子の姜文煥きょうぶんかんは、楚の勇猛果敢さは三軍に知れまわり、万夫に敵する武勇を誇るという。敵にまわしたらどういうことになるか……・だが一方で妲己は天子の寵妃さまだ。もし言う通りにしなければ、妲己の恨みを買うことになる。寝床で一言わしの悪口を言われたり、酒の後で諫言でもされたりしたら、この費仲、死にどころすらなくなるだろう)



費仲は思い悩み、いてもたってもいられなくなった。

一日中考えたがよい考えが浮かばず客間をただ行ったり来たりし、気が動転したまま呆然とするよりなかった。


費仲が煩悶はんもんとしているところに庭から屈強で勇ましそうな男が現れた。


費仲は入って来た男が姜環きょうかんだと知ると何気にわしの屋敷に来て何年になるか質問をした。

東魯とうろを離れて旦那様の屋敷に入りもう五年になります。旦那様のお世話になり恩返しをする機会もなく、この度旦那様が思い悩んでいると知らずに入って来ました」


費仲は姜環を見ているうちに一計が浮かんだ。

「実は頼みたいことがあるのだが、力を尽くしてくれぬか?もしうまくいけば、悪いようにしないぞ」

姜環は喜び言った。

「旦那様がやれと言われることなら力を尽くさずにはおれません。この姜環、旦那様に信頼頂けるならば、水火をも辞さぬ覚悟です。たとえ死ぬようなことになってもおそれはしません」


これを聞いて費仲は喜んだ。

「一日中考えても、妙案が浮かばなかった。しかし、いまそちが現れたことによって一計が思いついた。もしうまくいけばお前も金の帯を締め役人となり、一財産築いて福をうけるこができる」

と言って費仲は姜環の耳に口を寄せ、ささやいた。

「このようにするのだ。もしうまくいけば、お前もわしもかぎりない富貴を得られるだろう。決して事が漏れることがないように。僅かでも漏れれば禍は大きいぞ!」


費仲は自分の策を細かく書いて、密かに妲己のそば仕えの宮女 鯀損こうえんに渡した。

鯀損からそれを妲己に伝えたので、妲己は自分が正室になれるのも時間の問題だなと大いに喜んだ。



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