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封 神 伝  作者: 原 海象
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第27話 妲己 姜王后から傾国の舞だと言われ困る。ただの舞なのに……

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>

第27話 妲己 姜王后から傾国の舞だと言われ困る。ただの舞なのに……


楽器の音を耳にした姜王后は、そばに仕える宮女から紂王と妲己の宴と知り、うなだれてため息をついた。

「天子は色にふけり、民は不安におののく。これでは天下の大乱は避けられないわ。外臣が諫言したところ、むごい刑を受けてみじめに殺されたという。これでは成湯の天下は滅びてしまう。王后として黙っているわけにはいかないわ」


姜王后は乗り物に乗り灯を先導に寿仙宮までやってきた。

そして、宦官が姜王后が来たことを紂王に報告すると、夜を徹しての深酒に、とろんとして目で蘇美人、お前が出迎えよと妲己に命じました。


妲己は紂王の言葉に従い宮門まで行って王后を迎え拝礼した。


そして王后の許しをえて顔を上げると、先導して殿前へ王后を案内し、紂王に拝礼した。

「左右の席を置き、王后に座ってもらおう」と紂王が言ったので姜王后は礼を言って右側に座った。王后の御前なので側室の妲己は席には着かず傍らに立っていた。紂王は姜王后の盃に酒を注ぎ妲己に舞を舞うように命じた。


宮女が紫檀で作った拍子木を軽く叩き、妲己は腰をくねらせ、さえずるように歌った。


ところが。姜王后はこの様子を見よとはせず、下ばかり見ていた。

紂王はこれに気づいて、笑いながら尋ねた。

「御妻よ、光陰は矢のごとく、月日の流れは早く、楽しい時は短いもの。妲己の舞は天下でも奇観で、この世にもまれな宝だのに、御妻は何故不機嫌な顔ばかりして目もくれないのだ?」


姜王后はいまこそと席を立ってひざまずき、申し上げた。

「妲己の舞など珍しいとも宝とも思いませぬ」

紂王は首を傾げて、これが宝でないとしたら何が宝なのだと言った。


姜王后は語気を強めて言った。

「わたくしはこのように聞いております。君主に徳があり、財物より才徳ある者こそ重んじ、つまらぬ輩や美色を遠ざける。これこそ君主自省の宝と申します。いわよる天の宝は日月に星、地の宝は五穀と園林、国の宝は忠臣・良将、家の宝は孝子賢孫というものです。これら四つが天、地、家のすべての宝でございます。


妲己のつまらぬ舞を宝などとありがたるようようでは、国は滅び、家は潰れます。陛下、どうぞ、いまなさっておられることを恥と悟り、良臣を呼び戻し、女子と奸臣を遠ざけてくださいませ。法紀を守り、遊びを程々に、酒色を遠ざけ、政務に励んで、おごりをお捨てください。


そうしてこそ天意を再び得、民意を安んじて天下は太平を守れるのです。女子の身で、お怒りも恐れず差し出がましいことを申しましたが、どうか非を改め、正しきことを行われるように重ねてお願い申し上げます」姜王后は言い終えると、紂王に別れを告げて自分の中宮へと帰って行った。したたかに酔った紂王は、余の好意を無にしおって、と王后の言葉を聞いてすっかり怒ってしまった。



時はすでに三更を回り、紂王は完全に酔っており、大声で言った。

「蘇美人よ、すっかり気分を悪くなった。気分直しに1差し舞を舞ってくれんか」

妲己はひざまずいて言った。

「とても舞う気にはなりません。王后様は、私の舞が国を滅ぼすものだと言って、私をお責めになさりました。確かに王后様がいわれるように、陛下のご寵愛深く一時たりともお側を離れることはできません。もし、王后様がこのことを宮内や外にお伝えなされば、外臣たちは私を責めることでしょう。そうなれば私は死をもっても罪をぬぐえませぬ」


こう言って妲己は涙を流したので、紂王は怒った。

「美人は、ただ黙って余のそばにいてくれればよいのだ。明日にも、早速あの女を廃し、お前を王后に立てるようにしよう。余がついている。何も案じることはない」


妲己は礼を述べ、紂王は再び楽器を奏でさせ、昼夜を問わずに酒を飲み続けた。




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