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封 神 伝  作者: 原 海象
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第23話 妲己 木剣を焼かれ状態異常の危機から逃れる

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>

第23話 妲己 木剣を焼かれ状態異常の危機から逃れる



さて、紂王が寿仙宮の前まで来たが、妲己が迎えに出てこないのを見て不審に思った。

そこへ、従僕が出て来た。「妲己は何故向かいに来ない?」


「実は蘇娘々は急に病にかかられまして、昏々と床に臥せております」

紂王は慌てて玉輦ぎょくれんから降りると寝宮へと向かった。

床のすだれを開けると妲己は黄色い顔をして、唇は真っ青、意識は朦朧、

わずかに息をしているという具合だった。


「美人よ、朝余が離れるときには花のように美しかったのに、どうして急に病になってしまったno

だ。いったいどうすればいい?」


妲己は紂王の声を聞いてかすかにまぶたを開け、口を大きく開けてうめき、息を切らせながら言葉をもらした。

「陛下、わたくしは朝に陛下をお見送りし、昼になってお迎えに出ようとしたところ、分宮楼の前で陛下をお待ちしていたところ、ふいに一本の宝剣が楼前に高く掛けられてました。


それを見た途端、何やら冷や汗が出て急に具合が悪くなってしまったのです。

これも私の運命なのでしょう。陛下どうかお身体を大切に、私のことなど、どうかお忘れください。」と妲己は涙を流す。


紂王は驚き、しばらくは声も出せなかった。やがて紂王は涙を浮かべながら妲己に言った。


「余の一時の不明で、危うく道士に騙されるところであった。分宮楼に掛けたあの剣は、終南山の道士雲中子が献上したもので、宮中に妖気がある。その退治に使ってくれと言われたものだ。しかし、それがそなたに害を与えるとは!これはすべてあの道士の妖術で、そなたを殺そうという企みだったのだ。あのような偽り事を言いおって。この守りの固い後宮に、妖怪など来るはずがない。あの道士が美人を殺害するために余を騙したのだ。者ども、その道士が献上した木剣を早く火で焼いてしまえ。もう少しで美人を害するところであった」


紂王はこう侍従に命じたあと、くりかえし妲己を慰め、朝まで横になることはなかった。



紂王は侍従に木剣を焼き捨てるように命じた。

この剣は神仙が桃の枝を削って作ったものだから、火にくべても燃えなかった。

そこへ空から一陣の熱風が吹きつけた。そると宝剣は、あっという間に灰になってしまった。

この熱風を吹き付けたのは女媧であった。

女媧は1千年の女狐、妲己の危機を救ったのであった。


妲己は妖光を回復し、元気を取り戻して、変わらず天子を侍り宮中で酒宴をつづけ楽しんでいた。

このとき、雲中子は終南山へは戻らず、まだ朝歌にいた。


ふいに、宮中から再び妖光が昇ったのを見て、彼は頭を垂れて嘆いた。

「あの剣で妖気を抑えて高祖 成湯の天下の寿命を少しでも延ばそうと思ったのだが……

わしの剣を焼いてしまうとは天数(運命)もこれまでか……」


こう言うと雲中子は終南山に帰っていた。

すると終南山の玉柱洞の前に女媧が待っていいた。


「何故余計な邪魔立てをなされた?」と雲中子に詰問をした。

「そちらこそ、何故妖怪などを使って下界にあらぬちょっかいをかけたのじゃ?」

と、雲中子は逆ねじをくらわせた

「商王朝の滅亡が天数(運命)だとはご存じないのか?」と女媧も後を引かない。

「天数というなら、それこそを放っておけばよいのではないか!」と言って雲中子は横を向いた。


「天数と言えば聞こえがいいが、天界ではやることがなくて退屈しているから人民を操り、下界で殺し合いをさせ、それを面白半分で眺めては、楽しんでいるだけのことではないか」


これに対して女媧は「崑崙山の仙界こそ、退屈まぎれに、その天数に便乗し用しようとたくらんでいるではないか」と女媧は言い売り言葉に買い言葉であった。


もはや女媧に問い詰めても藪から蛇を出しかねない、そう思って雲中子は何を言われてもとりあわなかった。そして女媧は悪態をつくと女媧宮へと帰って行った。


崑崙山に仙界再編成の動きがあることは、雲中子でもわかっていた。

仙界は大雑把に分けて、山岳派の「闡教せんきょう」と海島派の「截教せっきょう」の二大勢力があった。

そのなかで仏教「人道じんどう」と呼ばれ西方に本山がある人道は、事実西方にゆかりのある仙人がいる。そこでそれらの仙人を西方に帰すことが仙界再編成の一本の柱であった。


そもそも、山岳派の「闡教せんきょう」と海島派の「截教せっきょう」の違いは「闡教せんきょう」は人間が「道」を得て不老不死となり、さらに道術を習得して仙人になる。


一方で、海島派の「截教せっきょう」は禽獣玉石樹木があるとき偶然に混沌の玄機に触れて、天地の霊気と日月の精気を浴び、更に道術を会得して転人化したものである。


両者は対等であるが仙界再編成の主導権を握ったのはもとより「闡教せんきょう」であるが、揚げられた大義名分は「神界」の創設であり「截教せっきょう」にも異存はない。


そもそも下界にはかって仙人を目指し「仙骨」がなくて下界に戻されたものがいる。

彼らは一様に、下界で栄耀栄華を極めている。ある程度の仙術を心得ているからそれができた。


しかし、仙人からすれば仙人でない者が仙術を使うことはゆるされなかった。


その為、「神界」を設け半端な仙人を神々に封ずる「封神」をする必要があった。




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