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封 神 伝  作者: 原 海象
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第21話 紂王 蘇護一家を死罪から外戚に格上げ、妲己の魅惑術で骨向きに

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>

第21話 紂王 蘇護一家を死罪から外戚に格上げ、妲己の魅惑術で骨向きに


さて、紂王がそのとき竜徳殿にいたときに費仲が謁見を申し出た。

費仲は竜徳殿に入ると拝礼してひざまずき、上奏した。

「蘇護が娘を献上にまいりました。すでに城内でご指示を待っております」


紂王はこれを聞いて激怒した。

「匹夫めが!あのとき、やつがへ理屈を並べて、朝政を乱したから、余は処刑しようとしたのだ。臣下どもに止められて、罪を許し帰国させるようにしてやったのに、あろうことか午門に謀反の詩を書いて余を侮辱しおった!明日、謁見に来たら、国法に基づいて、君子を欺いた罪で処刑してくれるわ!」


費仲は調子を合わせて言った。

「天子の法は、天子お一人のためではなく、民のためにこそ定められたもの。

もし、逆臣が死刑にならないなら、法は無いも同然になります。

朝廷に法がなければ、天下の民から見捨てられるというものです」

「お前のいうとおりだ。明日この件に関して必ず片づけてやろう」

と、紂王が費仲に言って費仲は拝礼して下がった。



*******


翌日、天子は大殿に登った。鐘や太鼓が鳴り響き天子が殿堂入りしたことを知らせた。

左右の文武諸官は一斉に拝礼した。

「上奏する者はこれへ。なければ、これにて退朝するぞ」


その言葉が終わらないうちに、午門の役人が申し出た。

「冀州候蘇護殿が午門で聖旨を待ち、娘を献げて処罰を待っております」

ここにとおせと天子が命令すると、蘇護は大臣の礼服をまとわず、犯官服を着てその姿を現しひざまずいた。

「犯臣 蘇護、万死に値します」と蘇護は恐縮の意を述べた。


「冀州の蘇護、お前は午門に謀反の詩を書き、永遠に商には来ぬと誓ったな。

また、祟候虎が朝命により軍を興し、罪を咎めに向かったところ、大胆にも抵抗し。

多くの武将を殺傷した。これ以上何を言うつもりだ!こやつを午門の外に引き出して

斬首し、国法を正せ」


そこへ、丞相の商容が進み出て諫めた。

「蘇護は商に反旗したのですから、死罪は当然の措置。しかし、前日西伯候から上奏文が届きました。これには蘇護の罪滅ぼしとして娘を献上させ、君臣の大意全うさせればと申しております。いま、蘇護は法に従い、罪滅ぼしに娘を献上すると言っておりますから、その心をくんでやってもよろしいのではないでしょうか?そもそも蘇護の罪は、娘の献上を拒んだことでした。いまそれを献上しに来たのに、罪を重くしては陛下の御心と違った結果となります。どうか陛下、この者を哀れみ、罪を許してやってください」


紂王がとまどっていると、費仲が口をはさんだ。

「陛下、まずは丞相殿の上奏に従い蘇護の娘をここに呼んではいかがでしょうか?もし、その娘が容貌抜群で礼儀正しくしとやかな女であれば、陛下のそばに置き、蘇護の罪を許されればよいのです。逆に陛下のお気に召さねば娘ともどもこやつを午門の外で斬首して見せしめにすればよろしいでしょう。こうすれば臣民も陛下を悪くは言いません」


紂王はそれもそうだと納得して、侍従に妲己を引き連れてくるように命じました。



妲己は午門を入り、九竜橋を渡って九門殿の軒端まで来てひざまずいた。

紂王は目を凝らして見ると、

まさに海棠(花の名前)は陽に酔い、梨花は雨を帯びたよう。

瑶池から下界に降りた九天の仙女、月宮を離れた嫦娥じょうがよりも美しく見える。


「犯臣の娘 妲己、陛下のご長寿をお祈り致します」

この言葉だけで、紂王の魂は吹き飛び、どうしたらよいのかわからないという状態になった。ようやく落ち着きを取り戻し、ようやく前の卓上の横に立って「美人(位号)よ。立つがよい」と命じた。


そして左右に控える宮女に「妲己は遠路遥々、大義であった。

寿仙宮にお連れして、ゆるりと休息を取るがよい」

と言いつけると、さらに側近の侍従に命じた。


「蘇護一家の罪はすべて無罪とする。

元の職に戻ることはもちろん。さらに外戚として毎月二千担の俸禄を加増する。

またその祝いに顕慶殿にて三日間宴を持ち、文武諸官と相は祝意を表せよ。

さらに、このことを三日間天下に知らせるのだ。

蘇護においては冀州に帰るときは文官二名、武官三名に送らせるとしよう」

蘇護は感謝の言葉を述べた。


しかし、両側に居並ぶ文武諸官は、この天子の好色ぶりを見て、いずれも情けなくならずにはいられなかった。だが、天子はさっさと後宮へ戻ってしまったので諫言することもできない。やむなく一同は顕慶殿の宴へ随席に向かった。蘇護は娘を献上したあと、晴れて帰郷した。

一方、天子は妲己とともに寿仙宮にて宴に入り、それからというもの、紂王は一刻たりとも妲己の傍を離れなくなった。妲己を得て以来、紂王は日夜、妲己と楽しみをともにすることだけを考え、朝政を顧みなくなってしまった。また群臣が諫言しようと上奏文を出しても相手にしない。酒色におぼれ、月日は流れ、気がついたときには既に二ヶ月が経っていた。二ヶ月のあいだ朝廷にもまったく顔を出さず寿仙宮に閉じこもったきりだった。


天下の八百諸侯も多くの上奏文を都朝歌に送ってきたが、それらは文書房に山と積まれるだけで、無論紂王に会うことはできない。また、紂王の命令もいっこうに出さないというありさま。やがて天下はおおいに乱れはじめるのであった。


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