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封 神 伝  作者: 原 海象
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第18話 籌を帷幄に運らし、勝ちを千里の外に決す

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>

第18話 籌を帷幄に運らし、勝ちを千里の外に決す


「城壁の上の者、西伯候の使者が書簡をたずさえてまいったと主殿にとりついでくれ」


城門の上にいた兵は、急いで大殿へ来て報告した。

「申し上げます。今西伯候の使者が書簡を携えて城外で待っております」


蘇護は祟黒虎と酒宴中であったが、これを聞いて言った。

「西伯候殿は西岐の賢人だ。ただちに城門を開いて使者殿をお通ししろ」


まもなく案内されてきた散宣生が現れ、一礼をした。


蘇護は、これは大夫殿、今日はなんのご用かなと声をかけた。

「小官は西伯候の命により使者としてまいりました。聞けば先日、貴候におかれましては、怒りにまかせて謀反の詩を記され、陛下のお怒りを買われたとのこと。本来ならすぐにも軍を出し、罪に問うべきところですが、我が主は貴候が忠義の方であることを知っているので出陣を控えておりました。いま、小官が主の書状をたずさえてまいりました。我が主の勧告をお聞きいれていただけたら幸いです」


散宣生が袋から一通の書状を取り出し蘇護に差し出すと、蘇護はさっそくそれを開いた。

書状には次のような内容であった。




我西伯候姫昌、冀州候蘇護閣下に百拝す。俗に『天下に天子の臣民でない者なし』と申すが、いま天子が美姫を求めるのに、貴族であろうと民であろうと隠すことは許されない。


足下に容貌よく美徳えた娘がおり、天子がこれを妃にと求めたとは、めでたいことではないか。足下が天子に相抗したことは無礼というほかない。午門にて謀反の詩を書いたというが、いったいなんとするおつもりか。足下の罪はすでに許しがたいものだ。


その上で、小節にとられて、娘可愛さに君臣の大義を失われた。この姫昌、平素から足下の忠義を知るゆえに、このまま座視するには及ばず、ここに進言する。必ず禍は福に変わるゆえ、この忠告をお聞きいれあらんことを願う。


足下が娘御を王宮に献上すれば三つの利点あり。


娘が妃となり、天子の寵愛を受ければ、外戚となり富を得て千鍾の禄を食む。これが第一の利点。冀州は永遠の平安を保ち、一族は害を免れる。これが第二の利点。そして、民が塗炭の苦しみを免れ、三軍も殺戮の害を免れる。これ第三の利点なり。


もし、足下が頑迷に悟ることがなくば、三つの大害あり。


冀州を失い、宗廟を滅せる。これ第一の害。一族は皆殺しになる。これ第二の害。そして、軍・民は戦の難を受ける。これ第三の害なり。


大丈夫たる者、小節を捨て、大義を守られるべきと知られよ。愚昧で無知な者にならって自ら滅びることなかれ。姫昌は足下と同じ商王の臣下ゆえ、あえて直言するものなり、取り急ぎ書をしたたむ。足下の決裁を待つ




読みながら、うなずいていた蘇護は読み終えた手紙を、黙って祟黒虎に渡す。

目を通した祟黒虎が、やはり黙ったまま蘇護にうなずきかけて同意を示した。


これを見て、散宣生はすかさず口を開いた。

「貴候、躊躇ちゅうちょなさいますな。

もし、我が主の勧めに従われれば、一通の書状で戦を終わらせることになりますが、

もし、ご承知されなければ、小官は戻り我が主に報告し、三軍を派遣しなければなりません。


我が主がそのように勧告するのは、上は君命に従うため、中は諸侯と和するため、下は三軍の

将兵に苦しみをなくすためです。これも我が主の好意と思われよ。

君候、どうして黙っておられるのですか。

どうか命を下され、我が主の勧めにお従いください」


これを聞いて蘇護は祟黒虎に向かって言った。

「まったくあのお方の言われるとおり、まさに、国と民の為を考えられておられる。

仁義深き君子だ。これに従わない法はないだろう」


蘇護は宿泊の仮屋敷に宴を設けて散宣生をもてなすように命じた。

翌日には返書を書いて散宣生に渡し、先に西岐に送り出しておいて祟黒虎と話しあった。

「西伯殿の言うとおり、早く旅装を整えて商王に拝礼に向かわなければならん。

ぐずぐずしていると、また人から何を言われるかわからんからな」


ともあれ、どちらにとっても喜ばしいことであった。





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