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封 神 伝  作者: 原 海象
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第17話 一冊の書状で城を墜とした姫昌と悪戯に兵を損ねた祟候虎どちらが功績が大きいか

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>

第17話 一冊の書状で城を墜とした姫昌と悪戯に兵を損ねた祟候虎どちらが功績が大きいか


勝鼓の音を聞いて、蘇護は万事休すと瞑目する。このとき蘇護は敵・味方の太鼓の音を聞き分けられないほど、蘇護の頭は混乱していた。

しかし、殿下に縄にかけられ立っていたのは祟黒虎であった。蘇護は自分の目をこすり間違いなく祟黒虎である。蘇護は急いで祟黒虎に駆け寄り自分の手で縄を解き部下の無礼を詫びた。

「この蘇護、いまでは天子を怒らせ、身を置く場もない罪人。臣下鄭倫がことをわきまえず、恐れおおくも天威を犯した故、この蘇護、死罪に値するというものだ」

祟黒虎は蘇護の言葉に答えた。

「いや、貴兄と俺は義兄弟の仲。我らの情義を忘れずにいてくれてよかった。今日貴兄の部下に生け捕りにされるということは面目次第もない再会だが、こうして手厚くもてなされるとは、この祟黒虎、感謝に絶えぬ」

蘇護は祟黒虎に上座を勧め、鄭倫とその他の諸将を集めた。祟黒虎は鄭倫を褒めた。

いは、いやはや感服するしかない」と祟黒虎は笑っていた。

蘇護は宴を設けて、祟黒虎と酒を酌み交わした。蘇護に希望がでた、そこで天子が自分の娘を妃に望んだ顛末を祟黒虎に必死に訴えた。

祟黒虎はうなずいた。

「俺がこのたび冀州に来たのは、一つは兄者が戦に敗れたからだが、もう一つは貴兄に助け船を出そうと思ってからなのだ。それを貴兄の勇敢なご子息が子供のくせに威張り散らして、貴兄と話がしたいというこちらの頼みを頭から断った。それでやくなく捕らえたのだ。今は後方の兵営にいる。が、これもすべて貴兄のためを思ってやったことだ」

「かたじけない。この御恩は生涯わすれない」

蘇護は心から感謝の礼を述べた。


二人が酒を飲んでいるところ、祟候虎の軍営では祟黒虎が捕らえられたとの知らせに一時混乱状態となった。祟候虎は考えこんでしまった。

(黒虎は優れた玄術を身につけているのに、どうして生け捕りになどなったのだろう)

不審に思っていると、祟黒虎の戦いぶりを見ていた査察官が報告に来た。

「祟黒虎様と鄭将軍が戦っていた最中に、鄭将軍が降魔杵を一振りし、三千の鳥鴉兵が押し寄せました。そして、鄭将軍の鼻から二条の白光が放たれ、鐘のような音がしたかと思うと祟黒虎様は落馬され生け捕りにされてしまったのです」

「この世にそんな道術があると言うのか?もう一度人をやり、確かめてこい」

その言葉が終わらないうちに、西伯候の使者が到着したことが告げられた。



祟候虎は、不機嫌に西伯候の使者を通せと言った。

やがて、西伯候の使者である散宣生さんぎせいが白衣をまとい、角帯を締めて天幕内にその姿を現し、祟候虎に一礼をした。「小官、散宣生さんぎせい、謹んで北伯候にご挨拶申し上げます」

祟候虎は散宣生に問い詰めた。

「お前の主は、いったい何故に目先の安逸をむさぼり、国の為だというのに力を出し惜しみ、兵を動かさず、朝廷の聖旨に逆らったのだ?お前の主はまったく臣下としての礼法に外れた男だ。して、お前はここに来て、何の言い訳をするつもりだ?」

散宣生は落ちついて答えた。

「我が主は、こう申しております。『兵は凶器である。君主たるものはやむを得ぬときにだけ用いるべきである』そのため、いま些細なことで、民を労し、財を損ない、万戸を荒れ果てるのは賢明ではございません。また、軍の通る地方では軍に金銭や食糧を差し出すために、民は租税を搾り取られる。無論、将兵たちも苦しい戦いを強いられるわけです。そこで、我が主はこのように考えました。わたしに一通の書状を届けさせて休戦とし、その上で蘇護に娘を朝廷に送らせて、双方いずれも軍を退くのです。こうすれば、天子と臣下のよしみが保たれるというもの。もし、蘇護がそれでも従わないようなら、我らの主の大軍が殺到して逆臣を討伐し、蘇護一族を滅ぼします。そのときは、蘇護も死んでも言い訳することはできますまい」

祟候虎は、これを聞いて大笑いした。

「姫昌め、自分が朝廷の聖旨を背いた罪を、そんな言い訳で胡麻化そうとするつもりか。先に冀州に来たわしの軍は、すでに何度も激戦を経て大きな損害を被ったというのに、たった一通の書状で、あの逆臣が素直に娘を差し出すわけがない。お前は冀州へ行ったところ蘇護が何と言うか。これは見ものだ。もし、やつが耳を貸さなければ、お前の主は陛下になんと報告するか。さっさと冀州へ行くがいい」

こうして散宣生は軍門を出て馬に乗り冀州の城門前まで来た。


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