第15話 祟候虎 宴会でHP回復!! あの蘇護の娘が美人条件に合格?(疑問形)
初めまして!原 海象と申します。
今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。
「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。
<封神伝>
第15話 祟候虎 宴会でHP回復!!あの蘇護の娘が美人条件に合格?(疑問形)
「長兄、そう立腹したものでもない。蘇全忠は無論斬首に値する。しかし、やつら親子は朝廷の罪人。聞くところでは、やつら親子を朝歌まで護送し、国法を正せと言う命が出ているとか。その上蘇護の一人娘妲己はその姿は、それはもう美しいと言うが、もし天子がこの娘を気に入って、やつらの罪をお許しにでもしたら我らはどうなる?その兄を殺したと言うことで我らこそ罪を問われかねないことになる。そうなれば、手柄も何もあったものではない。まだ姫昌殿も到着していないいま、我ら兄弟がその責任を負う必要もないではないか。ここはひとつ蘇全忠を後方の兵営に閉じ込めておいて、冀州を攻撃して蘇護一族を捕らえ、ともに朝歌へ護送して、天子の決裁を仰ぐのが上策ではないかな」
「賢弟よ、確かにそのとおりだ。小僧、命拾いしたな」
祟候虎はそう答えると、命令を下した。
「よし、宴会だ。黒虎の為に宴の準備をしろ!」
*****
一方冀州の斥候は蘇全忠が生け捕りになったことを蘇護に報告していた。
蘇護は言う。
「言われなくてもわかっておる。この父の忠告も聞かずに血気にはやりおって、それも当然のなりゆきだ。それにしても、豪傑として鳴らしたわしが、今息子は捕虜の憂き目を見、強敵に囲まれ冀州を踏みにじられるに任せようとしているとは!それもこれも、わしに妲己という娘がいて、昏君がつまらぬ讒言に耳をかしたからだ。その為、に我ら一族は禍を受け、民は不幸にあおうとしている。
つまり、この不肖の娘を産んだことからとんでもない災厄に見舞われているわけだ。もしこの冀州が攻め落とされ、妻と娘が朝歌に引きたてられ、人前で引きだされ屍をさらされれば、天下の者はわしを考えのないやつだとあざ笑うだろう。
そんなことにならぬよう、妻と娘を殺して自決するしかない。それこそ正道と言えるだろう」
蘇護は懊悩を胸に、剣を持って奥の間へ向かった。娘の妲己は微笑をたたえ、赤い唇をほころばせて言った。「お父様、どうして剣などをさげてこられたのです?」
蘇護は妲己を見た。血を分けた実の娘だ。仇敵であろうはずもなく、とても剣を振りあげることはできない。蘇護は思わずはらはらと涙をこぼし、うなだれて言った。
「愛しい娘よ。お前の為に兄は敵に捕らわれ、城は包囲され、我ら両親は殺され、祖先が祭られる土地が他人のものになってしまうのだ。お前一人を産んだために我が蘇一族は亡びるのだよ」
蘇護が嘆いていると、部下が雲版を叩いて言って来た。「我が君、ご登殿ください。祟黒虎が戦いを挑んできていおります」
蘇護はすかさず命じた。「各城門の守りを固め、敵の攻めに備えよ。祟黒虎は玄術を使う。迎え討とうという者はいないだろう」
蘇護は諸将に城壁に登らせ、弓や石弓を張らせ、石炭を詰めた瓶や丸太などを置き、守りを固めた。
城外の祟黒虎はこの様子を見てため息をついた。
蘇兄、出てきて俺と話し合ってくれれば、こちらも軍が退けるのに……
恐れることなどないのに、まったく出てこないのではどうしようもない
祟黒虎はやむなく兵を退いて、このことを祟候虎に報告しに行った。
祟候虎は祟黒虎を天幕の中に招き入れると、祟黒虎は蘇護が城門を固く閉ざして応戦もしなかった様子を語った。
「では雲梯を使って攻撃したらどうだ」祟候虎の案に祟黒虎は首を振った。
「長兄者、攻め入る必要はないのだ。兵力を無駄にするだけだからな。
それより、城内の食糧を運ぶ道を断って、兵糧攻めにすれば攻めずとも城は自然と落ちるというもの。
こうすれば、我が軍は鋭気を養った上飢えた敵にあたることができるし、
西伯候の大軍の到着を待ち、新たな策を考えることができるというものだ」