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封 神 伝  作者: 原 海象
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第12話 祟候虎 もうしょうなのにしょうがない

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>

第12話 祟候虎 もうしょうなのにしょうがない



眠っていた祟候虎はこれを聞いて慌てて跳ね起き、軍服をまとい、

刀をひっさげ、馬に飛び乗って陣内から飛びだした。


すると、火竜の槍を手にした蘇護の姿が浮かび上がった。

「祟候虎、逃がさんぞ!さっさと下馬してお縄につけ!」

蘇護が叫ぶと、槍をくり出した。


祟候虎は慌てて大刀でそれを受け止めた、二人は激しくわたり合った。

それを見て祟応彪が金葵、黄元済を引き連れ助太刀に来た。

さらに蘇軍は趙丙が左の糧道門から、陳季貞が右の糧道門から入ってきて

戦いに加わったため、両軍は混戦となり、深夜の激戦が続いた。


蘇護が仕掛けた奇襲であるのに対して祟候虎はまったくの不意打ちだったので、

冀州軍は一を持って十に当たるという勢いだった。

そして金葵は左右からの攻撃を防いでいるうちに、超丙に一刀のもとに馬上から斬り落とされた。


祟候虎はとても支えきれないと感じて、防ぎながら後退をしはじめた。

冀州軍は猛虎のごとく荒れ狂い敵の屍を高く積み上げていった。

祟候虎の敗軍は夜のことで右も左も分からずただただ命あっての物種とばかりに逃げ落ちて行った。


蘇護は敗残兵を二十里余り追撃したあと、銅鑼を鳴らして兵を引き、大勝を得て冀州に戻って行った。

さて、祟候虎親子は敗残兵を引き連れ前進していた。

黄元済と孫子羽が後方の軍をせきたて、馬に鞭を当てて追いついてきた。


馬上で祟候虎は諸将に向かって言った。

「俺は兵を挙げて以来、大敗を喫したことなどないというのに、

このたびは逆賊の奇襲を受けて、準備もなく闇夜で交戦し、多くの将兵を失ってしまった。

なんたることだ!この仇を討たずにはおくものか!

それにしても姫昌のやつ、のうのうと、聖旨に背いて兵を出さず高みの見物を決め込むつもりか?全くにくらしいやつだ」


長子の祟応彪が答えて言った。

「我が軍は惨敗し、士気はくじかれてしまいました。

しばらく兵を休ませ、そのあいだに一軍をやって西伯候殿に援軍の催促をしましょう。

あとのことはそれから考えてはどうでしょうか?」


「息子よ。お前の言うとおりだ。では、夜が明けたら軍を終結させ、事を運ぼう」

ところが、その言葉が終わらないうちに、突撃の砲声が天に届いて、誰かが叫んだ。「祟候虎!さっさと馬から降りてくたばってしまえ!」

祟候虎親子と諸将が声のほうを見れば一人の年若い武将が立っていた。


その武将は大声で叫んだ。

「祟候虎!父の命により、ここで貴様を待っていた。早く武器を捨てて死んでしまえ。まだ馬から降りぬとは、いつまで待たせる気か!」


祟候虎はののしり返した。

「こしゃくな逆賊の息子が!貴様ら親子が謀反を起こし、朝廷に逆らい、

陛下の軍を傷つけた罪は泰山より重いぞ。貴様らの屍をズタズタにしてもまだ飽き足らんわ。

たまたま夜襲を受け、貴様ら逆賊の奸計にははまってしまったが、それを盾にとってここで

威張り散らかすとは片腹痛いわ。

まもなく朝廷から大軍が到着すれば貴様ら親子はたとえ死んでも身を葬る場もなくなるのだ!

誰かこの逆賊を捕まえる者はおらぬか」


すると黄元済が馬を走らせ刀をふるい、蘇全忠めがけて討ちかかった。

蘇全忠は戟を手に迎え討ち、二頭の馬は相乱れ、激しい戦いが展開した。

二人の勝負がつかないのを見て孫子羽が馬を走らせ鉄の刺股をふるい、

黄元済に加勢して蘇全忠に当たった。


蘇全忠は大喝一声、孫子羽を一突きして落馬させた。


今度は祟候虎めがけて突進してきた。祟候虎父子はともにこれを迎え討ったが

蘇全忠は一人で三人とわたり合った。

こうしているあいだに、蘇全忠はわざと隙を見せ、一突きで祟候虎の足の鎧半分を落としてしまった。

驚いた祟候虎は両足で馬をはさみ、その場を飛び出して逃げてはじめた。


祟応彪は父が逃げるのを見て焦りを生じ、手に狂いが出たのか蘇全忠の一撃を受け損ねた。

戟は左腕をえぐり、血は鎧に流れ、祟応彪は危うく落馬しそうになった。

諸将がそれを支えて、ともに逃げ走っていく。

蘇全忠はこれを追おうとしたが、闇夜のことでもあるので思い直し。


やむなく軍を率いて冀州に戻った。

やがて、空が白みはじめた。蘇護は部下の報告を聞いて息子を前殿に呼びだして尋ねた。

「あの賊将を捕らえることができたか?」

「父上の命により、五崗鎮ごこうちんで待ち伏せしていたところ、夜半に敗残兵がやってきたので、勇んで孫子羽を殺し、祟候虎の足の鎧を突き破りました。またその息子の祟応彪の左腕に傷を負わせたので、落馬しそうなところ部下に助けられ逃げ去りました。その後、夜の闇の中、無謀な挙は慎まねばと思いあえて追わず、軍を率いて戻って来ました」


「悪運の強いやつめ!わかった。お前はしばらく休んでいろ」

と言って蘇護は全忠をねぎらった。

この時にはもはや北伯軍は壊滅したも同然であった。



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