第11話、蘇護 忠臣からの献策により天軍を破り祟候虎を討つ(予定)
初めまして!原 海象と申します。
今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。
「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。
<<封神伝>
第10話、忠臣からの献策により天軍を破り祟候虎を討つ(予定)
蘇護は銅鑼を鳴らして、兵を引きあげ、城内の師府の大殿に座り
手柄を立てた武将に褒美を与えねぎらった。
しかし、蘇護に喜色はない。
「今回の戦では大勝したが、相手はかならず兵を整え仇討ちに来るか、
あるいは援軍を求めに行くだろう。
いずれにしても冀州の危ういことはかわりない。諸武将よ、どうしたものであろうか
」
言葉が終わらぬうちに、趙丙将軍が進み出て言った。
「今回の戦は勝利致しましたが、戦はまだ終わっておりません。
我が君は、先日午門に謀反の詩を記し、今日は軍を破り天子の命に逆らったわけで許されるはずもありません。
まして、天下の諸侯は祟候虎一人ではありません。
もし朝廷が激怒し、また数手にわたって遠征軍を送ってくれば、冀州は小さな土地ですから危うい状態になるでしょう。
祟候虎は敗れて十里以上後退したことから、
我らが闇に紛れて夜討ちをかけこちらの力を見せつけるのです。
その上でいずれかの才徳兼ねそろえた諸侯のもとへ身を寄せれば、
こちらも行動の余地ができ、我らの祖国を守ることができるというものです」
「その通りだ。そうするほかあるまい。よくぞ言った」
その献策を聞いて蘇護は我が意を得てうなずく、そして直ちに行動に移した。
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そしてその夜、息子の蘇全忠が三千の兵馬を率いて、西門の外十里にある五崗鎮で待ち伏せするように命じられた。
陳季貞が左営を、趙丙は右営を率いて、蘇護自身は中営を指揮することとなった。
砲声を合図に攻め込むことを打合せし黄昏どきに出立した
。
蘇護は、早々に夜襲の手筈を決めた。
ここで北伯候軍を一気に壊滅させれば、呼応する諸侯が現れるかもしれない。
あるいは、これを機に、好意を寄せてくれている大諸侯に、とりなしを頼む
ことも出来るだろうと考えていた
。
一方、祟候虎は傲慢尊大に軍を率いて遠征してきたものの、
兵を失い、将は討たれるといった状態で、心中ひどく恥じていた。
やむを得ず、残った将兵を集め野営を置いたが、本陣では意気消沈となっていた。
祟候虎は諸将に向かって言った。
「俺は兵を率いて長いが、これまで敗れることはなかった。
ところが今日この一戦で梅武を失い、三軍の兵をも失った。いったいどうしたらよいのだ」
そばから将軍の黄元済がなだめた。
「君候、勝敗は兵家の常と言います。
西伯候の大軍がまもなく到着するはずです。
そうすれば冀州を攻め落とすことなど至って簡単です」
そこで祟候虎は陣内で宴を設け、前線の部将らとおおいに飲んだ。
一方、蘇護は軍の移動が終わり、あとは奇襲の時を待つばかりとなった。
やがて戌の刻になり、軍が十里進んだところで、前方の斥候の知らせがあった。
蘇護は合図の大砲に火を点けさせた。
一発の砲音が天地を揺るがせた、と見るや三千の騎兵が一斉に雄叫び
を上げて祟候虎の陣内へと攻め入った。
祟候虎側はまったくの奇襲だったので、とても防ぐことができなかった。
蘇護の三手の軍はいずれも勇敢に相争って、怒涛の中でいく重もの囲いを突破し
虎狼のような敵と応戦した。蘇護は祟候虎を生け捕りにせんものと、たった一騎で突き進み、
左右の軍門は叫び声で地を揺るがした。