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封 神 伝  作者: 原 海象
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第10話 祟候虎 ボコボコにされて唾を吐きかけられる

初めまして!原 海象と申します。


今回は有名な『封神演義』の編集・アレンジバージョン『封神伝』を投稿致しました。


「封神演義」は明代以前に発行された神魔小説で、今の形になったのは明代の編者 許仲琳によって現在の形になりました。また漫画やアニメとなったのは安能務先生の封神演義版によって一代ブームとなり、皆様のよく知っている形となりました。原作と安能務先生の翻訳ではかなり違いがありますが、ライト小説らしくできるだけ読みやすいようにしております。


<封神伝>

第10話 祟候虎 ボコボコにされて唾を吐きかけられる



翌日、祟候虎は錬兵場で兵馬を整え、朝廷に出陣の知らせを告げ、軍を率いて出立した。

一方、蘇護の長子、蘇全忠そぜんちゅうが武将を従え、蘇護と共に城内に入り、

師府に来て馬を降りた。諸将が拝礼に集まる中、蘇護は重い口を開いた。


「わしは怒りにまかせて午門に謀反の詩をしたためてきた、暗君はわしを処分するためにきっと大諸侯を送ってくることだろう。

皆の者、よいか。兵馬を訓練し、城壁の上に多くの丸太や石を積んで諸侯の城攻めに備えるのだ」



諸将は蘇護の命に従って、日夜ぬかりなく守りを固め戦に備えた。


さて、祟候虎のほうは六師から五万の兵馬を率いてその日に出陣し朝歌をあとに冀州へ向けて進軍した。紂王の意を迎えるために、勇ましく征途についたものの祟候虎の胸に勝算があったわけではない。

冀州城の守りの固さと、冀州軍の勇猛果敢なことは古くから音に聞こえていた。

一方で、それを攻略する兵馬は朝歌からの借り物である。両者の士気は大きな違いがあった。


祟候虎は行軍の速度を落として遅れて到着する姫昌軍の合流するため、ゆっくりと一月ほど時間をかけて祟候虎は冀州領内に入った。しかし西伯軍はその姿も影もない。祟候虎は姫昌の臆病者が、と舌打ちしながら、征伐軍を冀州城下に進めた。


大軍は冀州への道を突き進んでいった。そこへ、騎兵の斥候が来た。

「先頭の軍は既に冀州に着き、閣下のご指示を待っております」


祟候虎は営舎を設営するように全軍に命じた。祟候虎が陣営を置くと、早くもその知らせは冀州の蘇護の元に届いた。


蘇護は尋ねた。「敵の主将は誰だ?」物見は答えた。「北伯候の祟候虎です」

これを聞くと蘇護は腹を立てた。

「もし、他の諸侯であれば話し合いの余地もあるだろうが、

こやつは日頃から行いのよくない人物だから、道理を説いてもこのたびの件はおさまるわい。

ならば、敵の出鼻を挫いて、軍威を示すのだ。敵が設営を始めたら、いきなり一斉攻撃をかける。

ぬかりなく支度をかかれ!」


兵を選び城外で迎え撃つべく命令が下った。

武将らはこの命に従い、各自武器を手に城外へ出た。

砲音一声、殺気は天を揺るがす。城門の前で軍が横一列に並んだところで、

蘇護は大声で相手方を呼ばわった。


「主将を軍営前へ連れてこい。わしが聞きたいことがあると伝えよ」


祟候虎の斥候は馬を走らせ、このことを報告した。

祟候虎は兵馬を用意させた。やがて軍営の門が開き、馬にまたがった祟候虎が武将を率いて出て来た。


蘇護が見ると祟候虎は飛鳳の冑を被り、金の鎖の鎧をまとい、赤い長衣をなびかせ、腰には玉の帯を締め、赤い駿馬に乗り、鞍には大剣を差していた。


蘇護は馬上で欠身(上半身を起こして敬意を表す)して挨拶をした。

「賢伯候閣下には息災かな。不才鎧をまとっているゆえ、正式な挨拶はお許し願いたい。

今天子は愚昧無道で忠臣を疎んじ、女色を好み、国の大事を専念せず、奸臣のへつらいを信じて

臣下の娘を妃に強要し、酒色におぼれている。

まもなく天下は乱れることになろう。

それがしは、今は自分の国の辺境を守っているところだが、閣下は何故、軍を率いておられるのかな?」


これを聞いて、祟候虎は大いに怒った。

「貴様、よくも陛下の命に逆らって、午門に謀反の詩を書き、乱臣賊子となり下がったな。

その罪はこの上なく大きく、貴様の命でも償いきれぬわ。

俺がここにやって来たのは陛下の命により貴様の罪を問うためだ。

軍営の前に平伏し、罪を認めるべきところを、小賢しくも言い訳をし、鎧を身にまとい、武力で抵抗しようとは言語道断」

祟候虎は左右を見回して言った。

「誰か、この逆賊を取り押さえよ」


その言葉が終わらぬうちに、左側から一人の武将が前に出た。

「よし、俺が逆賊を捕らえてやろう」

大声を放ったのは鳳の翼型の冑を頭に、黄金の鎧をまとい、赤い長衣をなびかせ、腰には獅子模様の帯を締め、青い駿馬に乗った武将。颯爽と馬を飛ばし陣前ヘ進み出た。


祟候虎はにやりと笑い言った。「副将の梅武か。よし貴公に任せたぞ!」

「待て!」

冀州側から蘇護の長子蘇全忠が相手の陣から一人の武将が進み出たのを見て、自分も軍陣からいち早く前に出て、手にした武器をふるった。


梅武は言った。

「蘇全忠、貴様ら親子はよくも朝廷を裏切り、陛下を怒らせたな。

一刻も早く武器を捨てて罪を服せ。われら天兵に歯向かえば、自ら滅びを招くことになるぞ!」


蘇全忠は戦馬を一打ち、戟を揺すって梅武めがけてくり出した。梅武も手中の斧をかざしてそれを迎え討った。二頭の馬が相交わること二十合、蘇全忠は一撃で梅武を貫き、馬上から落とした。


蘇護は息子が勝ったのを見ると、ただちに陣太鼓を鳴らせた。

それに呼応するかのように冀州の将軍趙丙、陳季貞の二武将は馬に乗り大刀をさげて突撃した。


殺伐とした空気が立ちのぼり、陽は輝き死体は野原に散らばり、血は流れて河となった。

そして、祟候虎の麾下の将軍金葵、黄元済、息子の祟応彪は、防戦しながら撤退し、十里以上も後退した。




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