第8話 囚われの少女(真)
「え?セシリアが消えた?」
「えぇ、朝、外に出てから帰ってなくて⋯」
部屋の中にアレクを呼び、今朝のことを伝える。まさかこの短時間で居なくなるなんて⋯
「一体どこに行ったんだ?」
「その辺を見て回るって言って外に出たきり⋯」
「とりあえず周辺を探そう。もしかしたら時間を忘れて話してたりするだけかもしれないし」
「⋯そうね」
アレクと相談し、聞き込みをしながら辺りを捜索する。
その結果、わかったことは彼女は非常にきな臭い出来事に巻き込まれたようであった。
「誘拐!?」
「あぁ。若い大柄な男に担がれる白い少女を見た爺さんがいたんだが、その光景を見てショックでさっきまで倒れてたらしい。最近村で怪しいって話になっていた男で、多分盗賊だって話だ」
誘拐、その言葉に胸騒ぎがする。
「早く助けに行かないと!」
盗賊は厄介だけど、このまま彼女を見捨てるわけにはいかない。
しかもあんなに綺麗な彼女だ。早く助けなければ言葉にするのもおぞましい事をされる可能性は高い。
そう思い私は準備をするために立ち上がる。が、そんな私の腕をアレクが掴む。
「駄目だ。一度グロリアに帰ろう」
「何言ってるの!?そんな時間あるわけ無いでしょ!」
「誘拐したのは盗賊だけどそうじゃない!」
「⋯盗賊じゃない⋯?」
そう聞くとアレクは申し訳なさそうに目を伏せる。
「声を荒げてごめん。でも駄目なものは駄目だ」
「だからなんでよ。理由くらい教えてよ!」
「⋯⋯男は、この村に泊まった冒険者の女について聞いてたらしいんだ」
この村に泊まった冒険者の女⋯つまり⋯⋯
「⋯⋯私⋯」
「そうだ。でも、外見を知らないってことは外部に依頼した可能性が高い。それならまだ時間がある。取引の日までにグロリアに盗賊の情報を伝えて騎士を派遣してもらおうぜ?」
そう彼が言う。確かにそうだ。彼らなら私が目的ならまどろっこしい真似なんてせずそのまま連れて帰るはず。
盗賊に誘拐させたってことは多分他の派閥の奴ら⋯なら確かに受け渡し日は遅いかも⋯あいつらはバレるの極端に嫌がるし⋯
そう考えると余裕があるように感じる。でもあの見た目だ。盗賊たちが過ちを侵してしまう可能性もある。
「⋯⋯⋯わかったわ。グロリアに急ぎましょう」
そうしてアレクに流されるままに、グロリアに向かった。
「どうしてですか!もう一週間ですよ!?」
「領主様は忙しい。貴様らのような平民に時間を割いている暇はないんだ」
セシリアが攫われてから一週間が経過したが、領主の館では門前払いの日々が続いていた。
「お願い!一度だけでいいから領主様と話させて!」
「はぁ⋯もういい加減にしてくれないか?冒険者なんだからギルドに依頼でもしたらどうだ?」
「それは⋯」
当然、冒険者への依頼はアレクがやってくれている。でも、どうやら高ランクの冒険者はタイミングが悪くこの都市にいるのはBランク冒険者が数名ほどらしい。
その人数で盗賊へ挑むのは馬鹿がやることだと言われ、受けてくれる人は見つかっていない。
襲ってきた盗賊を蹴散らすのと、敵のアジトに乗り込むのは全くの別でAランクが三人は必要らしいが、資金も人脈もない私達には無理な話であった。
「⋯もう諦めろよ。一週間も捕まってちゃ女としても終わってんだろうよ⋯」
そう門番が声を漏らす。その言葉を聞いた瞬間、私は弓を握り、
「────やめろ」
構えようとした弓をいつの間にか後ろにいたアレクに抑えられる。
「でもっ!」
「ここで撃ったらほんとに助けられなくなるぞ」
いつもとは違いアレクはとても真剣な表情でそう言う。
「だって、あの男⋯!」
「依頼を受けてくれる冒険者が見つかったんだ」
アレクのその言葉に目に私は驚く。
「ほんとに!?」
「ああ、とは言っても⋯あー、ちょっと癖のありそうなやつなんだが⋯」
そう言いづらそうに言葉を濁すアレク。
だがそんなことはどうでもいいのだ。協力してくれるのであればどんな人物だとしても喜んで受け入れよう。
「とりあえず宿に行こう。夜に来てもらうようお願いしてるから、そこで作戦会議にしよう」
突如現れた希望の光に期待を寄せながら彼女は少し早足で宿に向かうのだった。
「ねぇ、本当にくるの?」
活気のあった夕食の時間は過ぎ、夜も更けて宿の食堂には酒を飲む冒険者が数名ほど残っている状態となっていた。
「ああ、多分依頼も即受けてくれたし食いつきもすごい良かったから来てくれると思うんだけど⋯」
「ほんとに?騙されたりしてないわよね?」
「流石に大丈夫だとは思うけどな。Aランク冒険者で冒険者ギルドでも評価は高いみたいだし」
そう言うアレクだが、やはり少し不安そうな顔をしている。
「もう。さっきから浮かない顔して何なのよ。気になるじゃない」
「いやぁ、別に浮かない顔ってわけじゃ⋯」
何を聞いても曖昧に言葉を濁すアレクに少しもやもやとする。
一体何なんだろうか?
そんなふうにアレクと軽い話をしながらその人物を待っていると宿の扉がドアベルを鳴らしながら開く。
「ごめんなさーい!ちょっと遅れちゃったかしら?」
「ここだ。やっと来てくれたか!」
扉の方を見ていたアレクはその人物を呼ぶ。
どんな人なのだろうか気になり後ろを振り向くと、そこには予想していた人物とはかけ離れた人物がこちらに走ってきていたのだった。




