第5話 心はいつまでも少年
異世界で一番最初に来る葛藤といえばやはり魔物や人を殺すことに対する葛藤ではないだろうか?現代日本に生きていて大きな生き物を殺すというのはほぼない行為だ。当然迷うこともあるだろう。
それに比べればこんな問題些細なものである。そう、些細ものではあるのだろうが⋯⋯⋯!
「ほんとになんでそんなに恥ずかしがってるのよ?セシリアが脱いでるわけでもないじゃない」
「いや、えっと⋯」
俺の後ろでは一人の少女があられもない姿で立っていることだろう。
今の俺は女の子だ。堂々と見ても誰にも文句は言われないだろう。だが俺は25年間彼女がいたことすらない、裸はおかんの風呂上がりくらいしか見たことのない俺には刺激が強すぎるって話ではないでしょうか!?
服を着替えている少女の姿を目にしないように目をつぶりどうにか意識をそらそうとする。
(こういうときはどうすれば⋯!えーと、えーと⋯素数!素数を数えればいいんだ!えっと、あれ?素数って1からだっけ?2から?あれ??)
残念、俺に数学の才能はなかった!
そんなこんなで心の中で暴れていると突然肩を叩かれる。
「ひゃいっ!」
驚いて振り向くとそこには先ほどと同じ服を着たルミアがいた。
「あれ?着替えなかったんですか?」
「一応着替えたわよ。ただ同じ服が2着あるだけよ」
と言う。詳しく聞くと、戦闘用と生活用の2つを使っているようだ。旅をしていると服はかさばるから最低限でいいらしい。
「そうなんですか⋯」
「ええ、まあ冒険者なら当然よ」
そんな感じで色々話しているといつの間にか時間が経っていたようだ。
「じゃあ行きましょう?ここのご飯は美味しいから期待していいわよ」
「はい。楽しみにしていますね」
そんな話をしながら部屋を出る。1時間ほど話していたのだが随分と仲が深まった気がする。
部屋の前で少し待っているとアレク君が出てきた。アレク君は少し軽装になっているようで装備を減らしているようだ。
「二人とも早いな?待たせたか?」
「ええ、ちょっと遅いわよ」
「え?そんなに待ってませんよ?」
「ちょっとセシリア!静かにしてて!」
と言われる。
「また俺に奢らせようとしてたのか⋯」
とアレクがジト目でルミアを睨む。ルミアは居心地が悪そうに「早く行くわよ!」といい、足早に階段を降りていってしまった。
「怒らせてしまったのでしょうか⋯?」
「ルミアはいつもあんな感じだから気にするな。まあ、早く行こうぜ」
「あっ、はい」
階段を降りるアレク君に後ろからついていく。階段を降りていくととてもいい匂いがする。
降りると席に座っているルミアがいた。彼女の方に二人で向かう。
「早く食べましょ!」
と、まるでさっきの話がなかったかのようにご機嫌だ。
「ああ」
「はい!」
という俺も今は目の前のご飯に夢中である。パンと肉、スープというシンプルなものではあるが匂いがもう完全にこの料理の美味しさを伝えてくる。
全員で席につくと二人はすぐに食べだす。その食べっぷりは見事なもので、冒険者という職業のせいかみるみる料理が減っていく。
「いただきます」
俺もそう言い料理を食べる。うま!お肉を口に入れた瞬間、まるで消えるかのように口に溶けていく。今まで食べたお肉の中でも上位に入るくらいには美味しい肉である。
そうして俺は美味しい料理に舌鼓を打ちながら異世界初の料理を堪能したのだった。




