第0話 光の守護者
「限界か⋯」
城壁の上に立つ騎士はそうつぶやく。美しかった平原には今は見渡す限り魔物に埋め尽くされている。種類は様々で数は万を超えるだろう。普通であればここまで集まることはないのだがどうしてこうなったのか。
「団長、これ以上は無理です。撤退を」
後ろからの声に振り向かずに答える。
「少しでも民を救うために私はここに残る。お前たちは避難するといい」
「無理です!この量は団長一人残ったところで何も変わりませんし、これ以上は避難することもできなくなりますよ!」
そう声を荒らげる部下に騎士は答えることなく武器を持つ。死ぬ覚悟は疾うの昔に決まっていた。自分の命を犠牲にしても、ここで少しでも時間を稼がねば逃げ遅れた民たちが犠牲になる。
大技はもう最初に全て出し尽くした。あとは剣で斬るだけだ。城壁から降り門の前に立つ。今にも崩れそうなほどボロボロになった門はここまでよく持ったものだ。
今にも破られそうな門の前で心を落ち着かせる。
「はぁ⋯逃げろといったはずだが⋯?」
「団長だけにこんなかっこいい場所任せられませんよ。俺達全員、誰一人逃げたりしてませんよ」
なあお前ら?と言う部下に答えるようにまるで今から死地に向かうとは思えないような顔で笑う兵士達。
「もう後戻りはできんぞ?」
「戻る気なんてありませんから」
馬鹿な部下たちを持ったものだ⋯そう嬉しく思うと同時に、私のせいで死んでしまう彼らに申し訳なく思う。家族や恋人がいるにもかかわらずこんなところまで私について来るなど本当に馬鹿な奴らだ⋯
そんなことを考えながら最後の時間を過ごす。
「さあ、行くぞ!!」
そう叫ぶと同時に門が崩れ外から魔物があふれるように中に入ってくる。
剣を構え迎え撃つその瞬間、目の前に光が溢れる。
「なんだっ!?」
光が収まると魔物の前に立つ白いローブを着た少女がいた。こちらの方を一瞬見た少女は流れるような白金の髪に美しく澄んだ金色の瞳、これ以上は存在しないと言えるレベルの美少女だ。
「よくここまで頑張りましたね。あとは私に任せてください」
まるで聞くものすべてを癒やすような声でこちら側にそう言うと彼女は天に向けて手を振り上げる。
「全てを貪れ。グレイプニル」
そう彼女が囁いた瞬間、今まさに王都に侵入しようとした魔物の身体に黄金の鎖が巻き付く。魔法陣から生み出される鎖はまるで尽きることなく見えるすべてを拘束していく。
呆けている場合ではなかった。今がまさに戦うときだと思い駆け出そうとするが結界があるようで前に進むことができない。この結界も彼女が?そう思い彼女の方を見ると、彼女の手には美しい芸術品のような剣があった。
「聖なる剣よ。魔を討つ千の光をとなれ」
その剣を彼女が振り下ろした瞬間、目の前がまた光に包まれた。雨のように止めどなく落ちてくる光の柱は、王都を滅ぼさんとする魔物の軍勢を跡形もなく消し去っていく。
死ぬ運命にあった騎士達が眩しさのあまりに閉じていた目を開くとそこには魔物も美しき少女もいなかった。ただ、ここであったことは現実であると言うように崩れた門だけがそこに残っていたのであった。




