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地味な魔導武装③

~回想~


魔獣の巣窟、危険地帯“デンスティア”。

ここには人類の研究拠点があり、

そこへ危険な魔獣の群れが近付きすぎると

その掃討任務が発令される。

この日アンプレス率いるアルフィーンの

メインパーティーは緊急でその作戦の

最前線へ参加していた。

「かなりの数が居ましたね・・」

魔導武装をしたバルパルがそう言うと、

近場の魔獣を掃討し終えたティーケーも

魔導武装状態で一息ついていた。

「そうだな・・しかしうちのリーダーは魔導武装無で良くやる・・」

ティーケーの視線の先に、

魔導武装状態のルイーナが発動させた

火属性魔法で魔獣を飲み込む瞬間が映る。

そしてその中に生身の状態で突進していく

アンプレスも映る。

「あー!私の獲物!!」

ルイーナがそう言うのと同時に、

アンプレスが自身の持つ槍斧で魔獣を

飛散させた。

「俺のが早いー♪さらに生身の俺の攻撃力もお前より上だもんねー♪」

「うっさい!あっちで一人でやってろ!あんたら化物と一緒にすな!!」

アンプレスはご立腹のルイーナに

追い出される様にティーケーたちの元へ歩いて行く。

そんなアンプレスにティーケーは言う。

「・・世界広しと言えども、このデンスティアを魔導武装無に闊歩するのはあなたぐらいでしょうね」

「まさか、他にも居る・・」

アンプレスがそう答えると同時に、

バルパルが慌てた様子で駆け寄る。

「司令塔です!来ます!455レベル高知能魔獣!」

それを聞いたティーケーが静かに言う。

「マスター・・流石に相手が悪そうです・・魔導武装を」

「そうだな・・魔導武装でさっさと・・」

近くまで来ていたルイーナが叫ぶ。

「来たよ!マスター早く!」

「・・えっと・・」

バルパルも慌てる。

「何やってんだアンさん!生身じゃ流石に危険っすよ!」

「ど、どうしたんだマスター!」

いつもクールなティーケーも

狼狽えると、アンプレスは苦笑いを浮かべ言う。

「・・えっと・・その・・家に忘れた・・」

一同「はぁぁー!!」

「あーっと・・皆あぶねーぞ・・離れろ・・」

一同「はっ!」

魔獣の攻撃に気付いた皆が回避行動をする中

アンプレスは魔獣の攻撃を右半身に受けてしまう。


~回想終~


「はぁ・・・」

話を聞いたソロルが頭を抱える中、

ランとエミーレは言葉を失っていた。

ラン「(う、嘘でしょ・・デンスティア最前線の掃討任務って言えばSランク任務・・魔導武装無で!?・・ふ、普通じゃない・・)」

エミーレ「(450レベルを超える魔獣の攻撃を生身で受けてさっきの怪我!?あれだけで済んでるの!?う、嘘でしょ・・)」

アンプレスは狼狽えた様に言う。

「しょ、しょうがないじゃないか・・魔導武装で戦う習慣が無いんだ・・ついつい忘れてしまうんだよ・・」

「なるほど・・それで義務の話ね・・」

ナトスはそう言うと続ける。

「・・冒険者規定・・Eランク以上の任務は魔導武装が出来る事が要件に含まれている・・」

「ふん、残念、俺は魔導武装可能なSSランク冒険者だ、問題ないだろ」

アンプレスがそう言うとナトスは続ける。

「解釈違いだよ、そもそも要件に含んでいるのは安全性の確保の意味合い・・魔導武装が出来るか出来ないかはその任務中にこそ意味があるって事・・」

するとティーケーが追従する。

「俺も同じ見解だ、魔道具を忘れて出発した以上魔導武装できない冒険者となり、冒険者規定違反と考えられる・・そんなマスターが義務だなんだのと・・フ・・」

「う、うるさいぞそこの理屈人間2人・・俺に関してはきっと恐らく多分大丈夫だ・・任務も遂行できたしな・・うん・・まぁしかし・・この件は黙っておこう・・な・・」

アンプレスがそう言うと

バルパルが言う。

「子供が居る手前バレなきゃいいってのは教育上良くないっすよアンさん」

「まぁバルパルが言うのはごもっともだけど・・知ってる?近くの喫茶に新作スイーツが出たらしいの」

ルイーナがそう言うと

ティーケーが追従する。

「“喫茶かぷかぷ”だな?俺はそこのオムライスが好きだ・・とだけ伝えておこう」

「え?あっ!なる・・そうだね僕は大盛パスタで手を打ちます!」

バルパルもそう追従すると、

観念したようにアンプレスが言う。

「・・はいはい、じゃぁーそれで手打ちな・・驕ってやるから、この話もう終わりな」

するとニコニコと笑顔を向けるミノアに

アンプレスが気付き声をかける。

「な、なんだミノア・・」

「僕らも聞いたよ♪因みにクラメイトのランさんとエミーレさんね」

ラン/エミーレ「えぇぇ!!」

「因みに母さんとフィーディさんもね」

ナトスがそう追従すると、

ソロルとフィーディは苦笑いを浮かべた。

「・・しょ・・しょうがない・・手を打とう・・」

アンプレスが観念したようにそう呟くと、

ルイーナが言う。

「んじゃ、残念ながらマスターの右腕も無事だったし、回収した魔獣を下ろしがてら任務完了報告に行ってきます」

「そうだな俺達で行ってくるからマスターはお留守番だ」

「アンさん“かぷかぷ”はレシート持ってくるんで!支払いはいつでも良いっすから!んじゃ行ってきます」

立ち去る3人を見送るアンプレスは

呟くように言う。

「・・なんか言い方に棘あるし・・リーダー俺だし・・たかられちゃうし・・」

アンプレスはソロルに視線を向け

続ける。

「お小遣い・・前借!お願い!」

「知りません!」

冷たく言い放つソロルにアンプレスは続ける。

「そこを何とか!お願い!」

「身から出た錆!自業自得!自分で何とかしてください!」

「えぇぇ・・」

そんなやり取りを見ていた

ランとエミーレは思う。

ラン/エミーレ「(・・か、カッコわる・・)」

何を言っても動かないソロルに

諦めたのかアンプレスはラン達に視線を向け

話しを切り替える。

「・・はぁ・・しょうがないか・・そう言えば後回しになってしまったが、ランパーティーは面々は何か用事でもあったのかい?」

「え!?・・」

突然ランパーティーと言われ

驚きの声を漏らしたランが続ける。

「(ク、クラスメイトとしか言ってないはず・・)な、なぜ私がリーダーだってわかったんですか?」

「ん?・・簡単な消去法みたいなもんだ・・そもそも25%だしな」

アンプレスはそう言いつつ

エミーレに視線を向け続ける。

「エミーレちゃんは、俺が怪我をし現れた瞬間一番前に居た、恐らく怪我の具合を確認する為、治癒士の習性みたいなもんだが、今はどうだ?誰よりも後ろに立ってる、基本的に目立つ位置に居る事を嫌う性格・・リーダー足りえない」

アンプレスはミノアに視線を向け続ける。

「ミノアは頼まれたらリーダーでも何でもやるだろう・・しかし他にやりたい人物が居るなら譲るタイプだ、リーダーはみんながやりたがるもんだろ?他にやりたい人間が居る可能性が高い以上ミノアがリーダーの可能性は低い」

アンプレスはナトスとランに視線を向け続ける。

「後はお前ら2人、50%、ナトスがリーダーの可能性は大いにある、向いているとすらまぁ思う・・しかしこの二択なら間違いなく君、ランちゃんだ」

「え?・・な、何でですか・・」

ランが恐る恐る質問すると

アンプレスは言い放つ。

「フン・・美人のリーダーが居るパーティーは名が売れると相場が決まってるだろ!」

一同「・・は?」

「お前たちもそのジンクスにあやかった・・当たりだろー♪はっはっはー」

皆が頭を抱える中、アンプレスは続ける。

「っで、遊びに来ただけか?」

その問いにランとエミーレは

一瞬硬直する。

ラン「え・・っと・・(あれ?何しに来たんだっけ?)」

エミーレ「(い、いろいろ起きすぎて・・わすれたし・・)」

するとミノアが前へでる。

「・・聞きたい事があったんだ、父さんと母さんに」

「聞きたい事?」

アンプレスが聞き返すと、

ミノアは続ける。

「うん、今日純白の魔石を準備していかなかったんだけど、何でかなーって・・僕らそう言うの持って来ても良いよーって言うのも知らなかったし」

「(あっ!そうそう・・)その・・裕福な家庭なら普通に準備して来るかなって思ってて・・二人なら持って来てるんじゃないかなぁって期待したと言うか・・まぁ気になりまして・・」

ランが思い出したように

ミノアに追従すると、

アンプレスとソロルは

キョトンとした顔を見合わせる。

それを見たランが疑問を投げかける。

「もしかして学院からの事前通知とか来なかったんですか?お二人とも知らなかったとか・・」

「・・いや、そう言う訳じゃない、通知も来ていたし、そもそも冒険者学院のその手のシステムは熟知している」

エミーレ「え?・・」

ラン「じゃぁ・・どうして・・」

エミーレとランが疑問の声をあげると

ソロルが笑顔で答える。

「あなた達の言いたい事って、お金さえ出せばせっかく初日からスタートダッシュできるのに、それをしなかったのは何故かって事でしょ?」

「まぁ言いたいことは分かる、このタイミングを逃せばもう持ち込めない、認められるのは学院の演習中に獲得した魔石のみになってしまう、しかもその演習は零一遺跡の10階層以下への侵入が認められたパーティーしか受けられない、この時点でかなりの時間を有する冒険者も少なくないが、問題の魔石・・これを獲得できる高知能魔獣の討伐がさらにハードルが高い・・挫折する冒険者パーティーが出てくるだろう・・」

「そっか・・じゃぁやっぱり持って行った方が有利だったんだね・・ごめんね二人とも、僕と兄さんが持っていけてればかなり有利なパーティーになれてたのに・・」

アンプレスの話を聞いたミノアが、

素直に謝罪をすると、

アンプレスが続ける。

「・・お前とナトスの二人が持ち込んでいたら必要な魔石はエミーレちゃんの一つだけだった・・しかし上流階級のノウビシウム兄弟は持ち込みしておらず、必要魔石は三つ・・既に魔導武装用の魔道具を持っているランちゃんにとっては、ガッカリさせてしまったかもな」

「え・・はは・・」

アンプレスの視線が

自分の首飾りに向いているのを感じた

ランが苦笑いを浮かべると

アンプレスは続ける。

「・・しかし、魔石を一つ獲得するのも二つ三つ獲得するのも大差ない・・現時点でもね・・」

ラン「え?」

エミーレ「ん?」

ランとエミーレが疑問の声をあげると

アンプレスは立ち上がり言い放つ。

「ガッカリさせたお詫びだ・・ついてこい」


~トレーニングルーム~


ギルドに設営されている

トレーニングルーム。

ラン達を連れてきたアンプレスは

ランに向けて話し出す。

「ランちゃんは既に魔道具を持っている、聞いているとは思うが既に、魔導武装できる状態と言える・・今ここでやってみないか?」

「今ですか!?・・で、出来るかな・・」

ランが自信なさげにそう言うと

アンプレスは続ける。

「・・魔導武装するためのワードは知っているよな?」

「・・は、はい」

「では、やってみよう」

自信の無いランだが、

アンプレスに言われるまま、

鎖骨辺りにある魔道具を握る。

「コネクトソウル!魔導武装!」

・・・

一同「ん?」

「あれ?」

ランが魔導武装化しない事に

疑問の声をあげると、

アンプレスは笑いだす。

「はっはっはっはー、まぁそんなもんだろうな」

「へ?」

「・・因みにだが今のその状態も魔導武装は発動できている、見た目は変わっていないがステータスの値は数%上昇しているはずだ」

それを聞いたエミーレが言う。

「・・ステータス・・身体強度とか、そう言う値ですか?」

アンプレスはそれに答える様に語りだす。

「そのうち学院でも習うと思うが、予習を兼ねて教えておいてやろう・・冒険者の、いや・・人間や魔獣の戦闘力は“身体強度”“精神強度”で表せられる、知っての通りレベルの上昇や年齢、鍛錬に左右され上昇も低下もするが、最も重要なステータスは“魂魄強度”だ」

黙って聞き入るラン達に、

アンプレスは質問する。

「鑑定を使えるかい?」

ラン「い、いえ・・」

エミーレ「鑑定なら・・」

それを聞いたアンプレスは続ける。

「知って居るとは思うが、鑑定を使えなくても、自身のステータスなら所謂“一段目”の確認は可能・・そして鑑定を持っているのなら“二段目”の確認まで可能となる・・身体強度と精神強度はこの二段目に表示されているステータス、ランちゃんは確認できないだろうがエミーレちゃんは確認できている数値・・しかし“魂魄強度”は確認できない、それは“三段目”に表示されているからだ・・・ランちゃんの魔導武装が切れたようだな・・・」

ランに視線を向けてアンプレスが

そう付け加える。

「え?・・あっ、確かに・・さっきまでの変な感覚がなくなったような・・」

アンプレスはランの言葉を聞きながら、

自信の愛刀と言うべき槍斧を左手で持ち、

右手でポケットをまさぐると、

チェーンのついた何かを取り出した。

「まっ、まずは見てもらおうかな・・」

ナトス「ん?」

「コネクトソウル・・魔導武装・・」

アンプレスが不意にそう唱えると、

黄色い閃光に包まれる。

次の瞬間、そこに立つ姿を見た

ランとエミーレは息をのんだ。

ラン「(・・ぜ・・全然ロミにぃと違う・・)」

エミーレ「(・・ぶ・・武器ごと!?・・)」

アンプレスの魔導武装は、

ほぼ全身をメタリックなアーマーが覆っており、

露出する部分は頭部の左半分のみ。

全身を覆ている右半身は、黄色が多く、

左半身は純白で銀の紋様が浮かび上がっていた。

見事に左右で色分けされたその姿は、

一世を風靡したメタルヒーローの様だった。

しかしそれ以上の違和感。

身の丈程の槍斧が綺麗さっぱり消え去っていた。

「・・父さんの魔導武装初めて見たよ♪かっこいいね!」

ミノアがそう言うとナトスも興奮気味に続く。

「む、昔見たテレビ番組のヒーローじゃんか!」

「んふっふっふ!その通り!あの番組は父さんがモデルなのだ!」

ミノア/ナトス「マジか!!」

テンションが上がるミノアとナトスに

ランとエミーレが少し引き気味に

苦笑いを浮かべつつ、

エミーレは疑問を投げかける。

「・・あ、あの・・普通は魔導武装で武器も出現するはずですよね?・・むしろ武器ごと魔導武装したように見えましたし・・消失してしまってる・・」

アンプレスは左拳を前に出し、

答える様に言う。

「・・愛刀“エネア”ならいつも傍にあるさ」

その瞬間左拳から雷光が走り、

稲妻の如く帯電した槍斧が握られていた。

ゾワッ・・

一同「・・・」

ラン達4人は、その瞬間から

異様な悪寒に襲われる。

アンプレスは何も言わず

一歩前へ踏み出した。

「父さん!?」

「ミノア待て!」

それを見たミノアが

飛び出しそうになるのを

ナトスが静止した瞬間。

ズバン!!

アンプレスの雷槍はラン目掛けて

突き出されていた。

ラン「!!?」

エミーレ「!?」

ランは一歩も動けず

その場に立ち尽くすだけだったが、

アンプレスの雷槍はランを大きく外れていた。

シュン・・・

アンプレスは魔導武装を解き

槍斧を担ぐと、呟くように言う。

「ランパーティーの名が、世界に轟くのを期待する・・」

アンプレスはそのままトレーニングルームを

後にしていく。

突然の出来事に、

ラン達は、しばしその場を動けなかった。


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