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アルフィーン①

~クヨトウ南街、転移サービスKS2番ゲート~


転移サービスと書かれた建物から、

ランパーティー4人が出てくると

ナトスに連れられる様に歩き出した。

ソワソワと落ち着きのないランとエミーレに、

ミノアが話しかける。

「そう言えば、ランさんとエミーレさんの最寄りのゲートってどこになるの?」

「ん?・・あっ、転移ゲートだよね?・・私はKS2.6番だよ」

ランがそう答えるとエミーレも続く。

「・・私は学院寮だから・・」

「そうなんだ!?ごめん、遠出させちゃったね・・」

素直なミノアが申し訳なさそうに

言うと、エミーレは笑顔で答えた。

「大丈夫、寮に居てもやることないし、転移サービスも16歳未満は無料だし問題ないし・・それに・・」

「ピューネおばさん・・だろ」

ナトスがそう言うと

エミーレは照れた様に言う。

「う、うん・・」

それを聞いたナトスは続ける。

「さっきから気になっては居たが、2人ともやけに落ち着きがない・・エミーレはピューネおばさんの件があるから分かりはするが・・リーダーは何なんだ?会いたい人物でも居るのか?」

ナトスの問いにランは、

呆れた様に言う。

「こういうのって灯台下暗しって言うんだっけ?使い方あってるかわかんないけど・・あんた達の親父さん、雷神槍斧ライシンソウフの異名を持つアンプレス・ノウビシウムは超有名人・・冒険者を目指す人なら憧れてる人も多いはず、このクヨトウ、いや、リデニア最強じゃないかって声もあるんだから」

「ライシ・・リデニア最強!?」

ナトスが驚愕の声をあげると、

ミノアも追従する。

「そ、それは無いんじゃ・・だって父さんはSSランクだよ・・リデニア国内にはSSSランクの冒険者は10人居るはずだし・・」

「ランクは関係ないわ、本人がSSSに昇格する為に“武闘大会”へ出ていないだけらしいし、少なくともSSSランクの炎帝闘剣エンテイトウケンのユート・トラフォール様と同格だと言われてるんだから・・・って言うか、何であんたらの親の話を私がしてるのよ」

「ははは・・確かに・・」

ミノアが苦笑いを浮かべると、

突然女性の怒鳴り声が響く。

怒り狂う女性「しつこいんだよ!テメー!!」

一同「!?」

ラン達4人は、その声に反応し、

進行方向に視線を向ける。

ミノア「あ・・(家からだ・・)」

「・・エミーレ、ピューネおばさんは、かなり怖い人だぞ・・」

ナトスがエミーレにそう呟くと、

“A型ギルド「アルフィーン」”と書かれた

建物から怒鳴り声と共に轟音が鳴り響いた。

男性「きっと素晴らしく、明るい家庭になるさ」

怒り狂う女性「毎度毎度!鬱陶しい!!」

ドンッ!

男性「ブファ・・」

その瞬間、糸の切れたマリオネットの如く、

男が路上に転がって来た。

ラン/エミーレ「!!?」

ナトス/ミノア「・・・」

すると執事の様な格好をした女性が、

ギルドの中から駆け出して、

転がった男性の襟を掴んだ。

「ホント凝りませんね・・フューエル様は・・」

その女性がふと顔をあげた時に、

ナトス達に気付き、笑顔で声をかけて来る。

「あら、坊ちゃん方おかえりなさい♪今日は友達と一緒ですか?お騒がせしましたね」

怒り狂う女性「ん?・・」

「ははは・・ただいま、フィーディさん」

ミノアが執事の様な女性フィーディに答えると、

ギルドの中に居た怒り狂う女性が外に顔をのぞかせた。

「・・何だよガキ共、もう帰って来たの?」

ナトスはエミーレに言う。

「エミーレ、彼女がピューネおばさんだ」

エミーレ「はぁ!?」

ピューネ「・・」

ブォン!

パチン!

ナトス「ムグゥ・・」

次の瞬間ピューネはナトスに詰め寄り、

両手の平で顔を挟むようにナトスを釣り上げていた。

「いつも言ってるよねぇ・・ピューネ・・なんだってぇ?」

「・・ピュ・・ピューネお姉さまです・・」

ナトスがそう言うと、

ピューネはパッと手を離し、

踵を返し言う。

「よろしい・・」

顔を摩るナトスと苦笑いを浮かべるミノア、

そして顔をひきつらせたランとエミーレを他所に

ピューネは歩き出すと、言う。

「フィーディ・・こいつが目を覚ますと鬱陶しいから出かけて来る」

「了解!マスターにはそのうち戻ると伝えておきます!」

ピューネがトボトボと歩いて行くと、

フィーディは男を引きずりながら、

ギルドの中に戻りつつ、

ナトス達に声をかける。

「お茶でも飲む?」


~“アルフィーン”カウンター~


ガランとしたギルド内。

カウンター前の円卓に座る4人に、

フィーディがお茶を持って来る。

「はいどーぞー」

ラン「い、頂きます・・」

エミーレ「ありがとうございます・・」

ミノアがフィーディへ疑問を

投げかける。

「今日は誰も居ないね?・・」

フィーディはお茶を配り終えると、

答える様に語りだす。

「お二人が学院に出られた後、ギルド組合から連絡が入りまして、マスターを含むメインパーティーが急遽任務に就く事になったんです」

「ギルド規定・・メインパーティーにはマスターの父さんと、Aランク冒険者の斥候、ギルド職員の資格を持つ魔法士が含まれている」

ナトスが追従する様にそう言うと、

フィーディが続ける。

「っそ、Aランク斥候のティーケーさんはサブマスターだし、魔法士のルイーナさんはギルド職員の兼務をしてる、人員配置で規定を下回る事態になるから休業にしたんです・・ピューネ様も休業じゃなきゃ出かけたりしませんよ♪」

フィーディが説明をしていると、

入口の方から声が響く。

「ただいま~」

一同はその声に反応し、

入口に視線を向けた。

そこには壮年の女生と、執事の格好をした

中年の男性が立っていた。

「あら?あなたたちもう帰ってたの、早かったわね」

ミノア「母さんもおかえり」

ラン/エミーレ「母さん!?」

その瞬間ランとエミーレは立ち上がり、

畏まった挨拶を始める。

「初めまして!息子さん達と同じクラスのランと申します!」

「は、初めまして・・同じくエミーレと申します!」

ナトス/ミノア「?」

2人の態度に違和感を覚える

ナトスとミノアを他所にソロルは笑顔で答える。

「そんなに畏まらなくても大丈夫よ♪初めましてソロル・ノウビシウムです、おかけになって、可愛いお客様♪」

ラン「(び、美人だ・・)」

エミーレ「(綺麗な人・・)」

ランとエミーレが言われるまま

腰を掛けなおすと、ナトスが恐る恐る

ランへ声をかける。

「ラ、ラン・・もしかしてたが、この人えらい感じの人なのか?」

「はっ??あんたマジ?ソロル・ノウビシウムって言ったらノウビシウム家現当主でしょ!上流階級中の上流・・そんな家系の当主様なんて私らにとっては恐れ多い存在でしかないでしょ!」

「し・・知らん・・」

ランのテンションにかなり困惑した

ナトスがそう言うと、

それを聞いていたエミーレも

頭を抱えうなだれた。

「はぁ・・灯台下暗しどころじゃないし・・・」

「ははは・・・」

エミーレの呟きを聞いていたミノアが

苦笑いを浮かべていると

中年の男性が言う。

「こんにちは。ナトス様ミノア様。それにラン様エミーレ様初めまして、ノウビシウム家執事オフィームと申します。来て早々ではございますが11時を回りましたので、私は邸宅の方へ戻らせていただきます。」

ノウビシウム家執事オフィームがそう言うと、

ソロルは思い出したように言う。

「あら、そんな時間でしたね」

「はい。邸宅に戻りリジディへの引継ぎ事項をまとめ、帰宅させていただきます。」

「承知しました、ご苦労様です」

オフィームは深々と頭を下げると

そのまま入口の方へ歩みだす。

「・・あの人は?」

ランが小声でミノアに質問すると

ミノアは答える。

「オフィームさんと言う執事だよ、母さんがまだ学生の頃から執事として仕えているみたい・・・あ・・」

オフィームがギルドから出ようとする時

入れ違いで杖を突いた一人の老人がギルドへ入ろうとする。

オフィームは同じ様に執事の格好をした老人に、

会釈すると、その老人も会釈を返す。

その老人に気付いたミノアの視線につられ、

ソロルが振り返ると、

その老人が声をかけて来る。

「これはこれはソロル様、本日も美しくご機嫌麗しいご様子で・・」

「あれ?・・ワンさん?今日はお一人で?」

深々と頭を下げるワンと呼ばれる老人に

ソロルがそう言うと、

ランとエミーレが疑問を投げかける。

ラン「この人は?」

エミーレ「オフィームさんの代わり?」

その問いにナトスは答えつつ、

ソファーに横たわる気を失った男に

親指を向ける。

「このご老人は、あの変態さんの執事だよ」

ラン/エミーレ「変態!?」

ワンがソロルの問いに答える。

「いえ、先にいらしてるはず、お迎えに上がりました」

同時にフィーディがソロルの肩を叩き、

ソファーに横たわる男性に視線を向けるよう

促すと、男性に気付いたソロルが慌てて言う。

「アレン?・・い、居たんだ・・」

ワンもソファーの男性に気付き

歩み寄りつつ言う。

「・・ピューネ様の姿が見えなかったのでもしやとは思っておりましたが・・いつも通りご迷惑をおかけした様ですな・・・」

ワンは手に持つ杖を、

男の腹部にグイグイ押しやり

続ける。

「アレン様!時間ですぞ!」

「・・ん・・ん?・・爺か・・」

アレンと呼ばれた男が

起き上がると、ワンはソロル達へ

深々と頭を下げた。

「我がフューエル家当主が、またご迷惑をおかけしたようですな・・申し訳ありません」

それにフィーディが答える様に言う。

「大丈夫ですよワンさん、今日は御覧の通り臨時休業で人もいませんし、逆にいつもより派手に殴られていましたので、大丈夫かなと心配しておりました」

それを聞いていたアレンは

思い出したように立ち上がると

嬉しそうに語りだす。

「そうだよそう!爺、今日もまたピューネからの熱く激しい思いを受け止めてあげられたよ!僕は幸せ者さ!これでまた1週間、商談にも熱が入る!」

ラン「(熱く激しい?・・)」

エミーレ「(・・受け止める?・・)」

「・・な、変態だろ?・・」

ランとエミーレにナトスが

そう呟くと、アレンはソロルに詰め寄る。

「これはこれはソロル義姉様、本日も美しくご機嫌麗しいご様子で・・」

「(あ、義姉様って・・)こ、こんにちはアレン・・あなたこそ元気そうで・・はは」

ソロルが苦笑いを浮かべると、

アレンはナトス達に詰め寄り続ける。

「やぁナトス君ミノア君、さっそくガールフレンドが出来たのかい?君たちも隅に置けないねぇ」

ナトス「クラスメイト」

ミノア「ははは・・」

「おっとこうしちゃいられない、爺!今何時だ?」

「11時を回ったところでございます」

「ナトス君ミノア君、叔父さんはこれで失礼するよ、命のやり取りがあるからね」

ナトス「さようなら」

ミノア「き、気を付けて・・」

「行くぞ爺!時は金なり、時間とは寿命!すなわち金は命なり!」

アレンは疾風のように駆け巡ると、

そう言い放ち駆け出していった。

「騒がしくして申し訳ありません、ではわしもこれで失礼いたします」

バシュン!

ワンはそう言い残し、

一瞬で姿をくらました。


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