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魔導士①

~クヨトウ南第三冒険者学院~

~教員室~


「悪いわね、みんなに付き合わせて」

廊下を歩くランパーティーの4人。

教員室に向かうランが、

付いてくるナトス、エミーレ、ミノアに

向けてそう言った。

ナトス「気にするな・・」

エミーレ「早く終われたし・・大丈夫」

「コネクティングがどんなものか知りたかったし、気にしなくて大丈夫だよ・・あっ」

ミノアが返答しつつ進行方向に目をやると、

教員室の扉に何やら張り紙をする

女性を見つけた。

「・・よしっと・・これで良いかな」

“コネクト化希望の生徒は

 この扉からプラフォークへお声掛けを

 魔導士教員:アロエ・プラフォーク”

「あの・・」

「わぁー!」

教員室の前までやって来たランが

女性に声をかけると、

ビックリする様に声を張り上げ

振り返った。

「び、びっくりしたー・・生徒?・・ど、どうしたの、こんな時間に・・」

「あ・・えっと、急にすみません・・」

ランはそう返答しつつ、

女性の背後にある張り紙を見つつ

続ける。

「アロエ・プラフォーク先生ですか?私コネクト化をお願いするために来ました・・」

「え?そうなの??こんなに早く・・いや、ごめんなさい、私がもっと早めに準備してればよかっただけだね・・中に入って、ちゃちゃっと加工してあげるから」

落ち着きを取りもどしたアロエはそう言うと

他のメンバーにも視線を移しつつ続ける。

「4人全員?もしかしてAクラス?」

「いえ・・私だけです、それにBクラスです・・・」

「そっか、じゃぁ見学だね」

ガララララ。

扉を開けたアロエが続ける。

「それじゃぁこちらへどうぞ」

教員室へ入って行くアロエに続き

ラン達も入っていく。

一同「失礼します」

アロエは扉から真っすぐ進み

突き当りの机に腰かけると

ランへ向かって声をかける。

「持ってきた魔石を見せてくれる?」

「あっ・・はい」

ランが魔石を渡すと、

アロエはルーペで確認する。

「OK、純正の魔石で作られた“純白の魔石”で間違いないよ」

アロエはルーペを置くと続ける。

「じゃぁさっそく魂魄強度とコネクティングするから、えーっと・・ネックレスタイプとブレスレットタイプどっちが良いかな?」

「えっと・・ネックレスタイプで」

「OK~」

アロエはそう言うと自分の机から

手ごろな長さのチェーンを取ると、

続ける。

「名前は何だっけ?」

「ランです」

アロエはランの右手に握られた魔石を

手と一緒に動かし、

鎖骨の中心辺りで止めると続ける。

「じゃぁラン、魔石を胸のこの辺りに、動かしちゃだめだよ」

「は、はい・・」

ジャラ・・

アロエは魔石の上にチェーンを置くと

目を閉じて呟くように言う。

「・・はじめます・・」

次の瞬間カッと目を見開き

アロエはコネクティングを開始した。

「魔導錬金!」

魔石とチェーンが青白い光に

包まれていく。

ミノア「(ん?・・似てる・・)」

青白い光を見て

ミノアがそう感じていると、

青白い光はランの首を

覆うように伸びていく。

「魂魄強度連結!魔導錬成!」

アロエがそう唱えると、

青白い光は瞬時に飛散し、

ランの首に赤い花をモチーフとした

ネックレスが残されていた。

「はい完成・・なじむまで個人差はあるけど、大抵すぐに“魔導武装”自体は出来るようになるからね、お疲れさまでした」

「え・・あっはい!ありがとうございました!!」


一同「失礼しましたー」

ガラララ。

教員室から出ると、

ランは自分の魔導武装具である

ネックレスを手に取り

嬉しそうに笑った。

それを見たエミーレが

歩きつつ言う。

「コネクティングは本当に無料だったね」

「そうよ、その前のカッティングカラー加工も無料だよ」

「カッティング??」

ミノアがそう疑問の声をあげると

ランが呆れた様に答える。

「・・ホント何も知らないのね、親がギルドを運営してるんじゃないの?カッティングって言うのは魔石を用途に合わせて色付けする事、私が持ってきた純白の魔石は既にカッティングカラーを純白にしてたものを持ち込んだの、今日持ち込めていないあなた達は魔石を確保したらすぐにアロエ先生じゃなく、魔石加工士の先生の所に持っていく事になるわ」

「へぇ~じゃぁその時の加工代も僕らは無料なんだね・・だとしたら今日持ち込んだランさん達は損じゃないの?カラー加工済みの魔石を準備して来たんでしょ?」

ミノアがそう尋ねると

ランは答える。

「ぜーんぜん、そんなことないわよ」

「え?なんで??」

ミノアが疑問の声をあげると

ナトスが割り込む。

「未来への投資じゃないのか?現に今日持ち込んだランは既に魔道具を所持している、それに比べ俺達は魔石の確保からやらなければならない、魔石は高知能魔獣を討伐しなければならないと言われている」

「っそ、高知能魔獣の討伐は魔導武装できない学生にとってハードルが高いの、地道に基礎レベルを上げて挑む必要があるし、10カ月しかない期間の半分以上をそれに費やす事もあるの、ロミに・・ロミシュ先生が言ったように、クリアしなければならない最初のステップが時間をかける事無くお金で解決できるシステム・・それにこれは持ち込んだ生徒だけが得するものでもないのよ」

「そうなの?」

ランの言葉にエミーレが疑問を投げかけると

ナトスが答える。

「簡単な話さ、さっきランが言ったように高知能魔獣の討伐は魔導武装無しでは骨が折れる、しかしこのパーティーには既に一人いるだろ」

「そうね、本当はどこぞの裕福な兄弟が準備してくれてれば、このパーティーはもっと楽だったんだろうけどね、私の家なんて裕福でも何でもないんだかんね!たまたま働いてるいとこがお祝いに準備してくれただけ!もしかしたらパーティー内に魔導武装持ちが一人も居ない何てこともあったかもしれないんだからね!」

ランが機嫌悪そうにそう捲くし立てると

苦笑いを浮かべたミノアとエミーレが

申し訳なさそうに言う。

ミノア「ご、ごめん・・」

エミーレ「か、感謝してるから・・うん・・」

「・・ごめんエミーレ、言い過ぎた・・感謝して欲しかったわけじゃないの・・ただ、何となくこいつの態度が苛つくのと、2人が持って来なかった理由が知りたかったの・・」

エミーレが怪訝な目でナトスを見ると、

ナトスは言う。

「なるほど・・では、その答えを持つ人物に話を聞きに行こう、もともとエミーレを連れて行こうと思っていたところだしな」

ラン/エミーレ「??」

ミノアも思いついたように

追従する。

「あぁ、そうだね♪時間あるなら2人ともおいでよ、アルフィーンへ!」

ラン/エミーレ「!!」


~教員室~


アロエがランパーティーを見送った直後、

年配の教員がアロエに声をかけた。

「カッカッカ、なかなか面白い輩じゃったのぉ、今期は波乱に満ちるやもしれん・・」

「学長・・いらしてたんですね、もしかして恒例の“鑑定”を?」

アロエが質問すると

学長は髭を摩りながら答える。

「まぁのぉ・・わしの知る限り歴代最強じゃろう・・」

「ほ、本当ですか!?あのリーダーの女の子ですか!?」

アロエが狼狽えつつ質問すると、

学長はニヤケ面で答える。

「男子生徒二人の方じゃ・・(ノウビシウム家・・カッカッカ・・)」

「へぇー・・名前聞いとけばよかったぁ・・あっ!そうだった」

アロエは学長の話を聞きつつ

何かを思い出したように声をあげると

隣の机に手を向け続ける。

「学長、こちらの席を使われてください」

「ん?席?なんのためにじゃ??」

「去年は2人でしたが、高齢で退職されて私一人でどうしようかと思っていたんですよ、学長って確かお持ちでしたよね?」

その時教員室の扉が叩かれる。

コンコン。

「失礼します」

声が響き、扉が開かれその声は続ける。

ガララララ。

「アロエ・プラフォーク先生はおいでか?Aクラス、1~4番、フレイドパーティー4名のコネクティングをお願いしたく参上した!」

その声は成績順位1番~4番の

サイを含むAクラス第一斑フレイド・ナビードルだった。

「はーい!こっちこっち、そのまま入ってきていいよー!」

アロエはフレイドパーティーに声をかけた後

すぐに学長へ視線を向け続ける。

「ほら学長、4人来ましたよ2・2で手分けしてコネクト化がんばりましょう」

「な・・まさかそう言う・・ま、待て、わしは学長・・」

「えぇ知っていますよ、私・・学長の考えに感銘を受けたんです・・“卒業に魔導武装が必要とするなら、金銭的理由でそれが叶わぬという事は有ってはならぬ”・・学院でのカッティングカラー無償化、コネクティングの無償化・・私はその一端を担えている・・頑張りましょう!学長!」

「ぐ・・ぬぅ・・確かにわしの言葉・・・しょ、承知した・・・」

力なく学長が指定された席に腰を落とすと、

アロエはフレイドパーティーに向けて続ける。

「じゃぁ1番3番は私の前に、2番4番は隣に並んでください」

その指示に従い、

サイは学長の前に立つと

先ほどのやり取りを見ていた為、

恐る恐る声をかけた。

「もしかして、ラジャル学長ですか?・・・」

ラジャル学長はふてくされた様に答える。

「如何にも・・クヨトウ南第三冒険者学院学長、ラジャル・テンレスである」

「(ま、まじかぁ・・・)」

サイが苦笑いを浮かべつつ

困惑するとラジャル学長は続ける。

「安心せい、腕は間違いない・・」

「よ、宜しくお願いします・・(ふ、不安だ・・)」


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