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地味な魔導武装①

「以上、29番から56番までの28名がこのBクラスとなる、知ってるものが多いと思うし机ごとに区切っているのでわかると思うが、番号順に4人づつ、それが編成される班だ・・」

ロミシュは懐から魔道具を取り出すと、

教壇に置き続ける。

コトン。

「ここからが重要な話だ・・これが何か、分かる者は居るか?」

ロミシュがそう質問すると、

一人の生徒が手をあげる。

「・・31番、オフィー・ケスゲイサー、答えてくれ」

「・・それは“魔導武装”に使う魔道具・・」

態度の悪いオフィーと呼ばれた

男子生徒は座ったままそう答え、

あるものをポンポンと

見せつける様に投げ、

続ける。

「・・この“純白の魔石”で作る魔道具です」

「正解だ」

ロミシュはそう言うと、

続ける。

「・・魔石の話が出たのでついでだ、事前に申請を出し、今日純白の魔石を持って来たものは立ってくれ」

その声に、教室内の数人の生徒が立ち上がる。

その中の一人ランはニヤけた顔で思う。

「(ふふふ・・どうだ、羨ましいだろ、私の班はノウビシウム兄弟二人を含め三人も魔石を持った状態・・Aクラス並みよ・・かなり先行できる・・)」

「いち・・にい・・さん・・・全部で8人だな、申請通りだ・・そして、各班にまんべんなくいるからバランスも良い・・」

「え?・・(8人!?・・バランスが取れてる??・・)」

ロミシュがそう言うと、

疑問に思ったランが目を開け、

ナトス達を確認した。

「・・へ?」

ランの間抜けな声に反応した、

ナトス達3人がランに視線を移すと

狼狽えたランが言う。

「・・ちょ、ちょっと・・なに座ってんの・・あのノウビシウム家なら簡単に純白の魔石を準備できるでしょ・・持って来てるんでしょ?・・」

「手ぶらだ、45番のあいつもそうだ」

「な、なんかわかんないけど・・ごめん、持って来てないよ・・」

ナトスとミノアがそう言うと、

ランが食って掛かる。

「うそでしょ!?冗談辞めてよ・・4人中3人も魔石持った状態からスタートできると思ったのに・・」

「コラ!そこ!うるさいぞ!!」

「す・・すみません・・・」

ロミシュの注意を受け、

ランが委縮すると

ロミシュは続ける。

「はぁ~・・持って来ている者はこの後教員室へ行くように、魔導士の資格を持つ先生が“魔導武装”ようにコネクティングしてくれる・・・座って良いぞ」

ロミシュに促され

立っていた生徒が座ると、

ロミシュは続ける。

「さっきも言ったが重要な話なのでしっかり聞く様に、まず君たちは卒業までの10カ月でいくつかのステップをクリアしていく必要がある・・・その一つが・・」

ロミシュはそう語りながら教壇に置いた

魔道具を手に取り前に出る。

「コネクトソウル!魔導武装!」

ロミシュがそう唱えると、

体育の先生の様なラフな格好から、

騎士を髣髴するような装備へと変貌していた。

生徒一同「おぉぉぉ!!」

生徒たちから羨望の眼差しを受けつつ

ロミシュは続ける。

「この“魔導武装”だ・・冒険者たるものこの体得は必須、そして君たちの最初のステップと言える・・なぜなら、Eランク以上の任務は全て“魔導武装”が可能である事が要件に含まれている・・そして、10か月後の10月31日までに冒険者ランクD以上にならないと、君たちは卒業できない・・・」

ロミシュは魔導武装を解除すると

教壇へ戻りつつ続ける。

「まっ、この辺もみんな知っていたとは思うが、念の為説明させてもらった・・」

ミノア「(え・・そうなの?)」

ナトス「(・・知らん・・)」

ロミシュは続ける。

「・・さて、今日は基本的に、クラスの確認と班の顔合わせがメインで授業は行わない、通達していた通り半日で終わる予定だ・・が、この後最後に決めなければならない事がある、それ次第では半日で帰れない班も出てくるかもしれない・・」

ロミシュの話を聞いていた生徒たちに、

緊張が走る。

そんな生徒たちの反応を感じ取りつつ、

ロミシュは続ける。

「・・皆、お待ちかねの様だな・・班のリーダー、つまりパーティーリーダーを決めてもらう、班で話し合い決めてくれ、決まり次第俺の所に報告にこい・・その班から今日は終了帰って良しとする・・では、始めてくれ!」

生徒たちがざわざわとする中、

ロミシュは教壇に備え付けられた椅子へ

腰を落とした。

そして、名簿票に視線を移し

ある項目を見る。

“リーダー適正”

「(・・はてさて、どれぐらい時間がかかる事やら・・・)」

ロミシュの号令の後、

すぐにミノアが口を開いた。

「僕らの班ってこの4人なのかな?」

「・・そうよ・・私からあんたまでの4人がパーティー・・今からそのリーダーを決めんのよ」

さっきまで上機嫌だったランが

ぶっきらぼうにそう言うと、

エミーレが言う。

「・・わ、私はホント・・リーダーとか興味ないし、誰でも・・」

「は?何言ってんのまったく・・リーダーはその責任も多いけど、有利な事も多いのよ、特にランクに関してはリーダーが最初に上がるの・・卒業のハードルDランクにリーダーがなれてても他の3人はEランク何てことザラなのよ」

ランは他の班に視線を移しながら続ける。

「あぁやって誰がリーダーやるかはもめるの・・皆冒険者になりたくて編入して来たんだし、当たり前でしょ・・さ、私たちも話し合いをしましょ、早くしないと遅くなるわよ・・」

機嫌の悪そうなランがそう言うと、

ナトスが言う。

「エミーレは誰でも良いんだな?」

「え?・・あっ・・うん」

「ミノア、お前はどうだ?」

「僕も誰でも良いと思うけど・・」

「では俺から推せ・・」

ナトスが話を進めだすと、

ランが割って入る。

「ちょっと、なに勝手に話薦めてんのよ、私だって期待した班に裏切られてショックを受けつつもこうやって前を向いて頑張っていこうとしてるのよ・・私だって立候補したいわ」

「よしでは決まりだな、俺が推薦したいのは他でも無い君だ、ラン」

「・・は?」

「君に立候補の意思があり、他3名は君がリーダーであることに異論がない」

「そうだね、何か色々知ってそうだし良いかもね」

「うん、私がリーダーじゃなきゃ誰でも良いよ」

ミノアとエミーレが追従すると、

茫然とするランにナトスが

立ち上がりながら言う。

「そうと決まればラ・・いや、リーダー、ロミシュ先生に報告に行こう」

「え・・ちょ、ホントに?・・へ?・・」

混乱するランを他所に

エミーレとミノアも立ち上がると

手荷物を持ち歩き出したミノアが言う。

「このまま今日は帰れるんだよね?」

「そうだと思うけど、リーダーが魔石を持って来てるから教員室に寄った方が良いかも」

歩いて付いて行くエミーレがそう言うと、

未だ席に座るランにナトスが言う。

「おいてくぞリーダー」

「え!?・・あっ・・」

ランは慌てて荷物をまとめ立ち上がった。

ロミシュは教壇からその動きに気付き、

再度名簿に視線を移す。

「(もうリーダーが決まったか・・流石適正“S”・・)」

ロミシュは揉めているであろう他の班を

見渡すと、目の前まで歩いてきたミノア達4人に、

視線を移した。

「こんなに早く決まるとはな・・他の班はまだまだかかりそうだ・・」

ロミシュがそう言うと、

ミノアが言う。

「48番、ランさんに決まりました」

その言い方にランが噛みつく。

「何でわざわざ番号言うの!?まさかアレね、この中で一番順位の悪かった私がリーダーになったのに対する当てつけじゃないでしょうね」

ロミシュ「(な!?・・ランがリーダーだと・・)」

「え?・・あっごめん・・全然そんな意味は無いよ、ただ今朝の順位表を思い浮かべて読み上げちゃっただけ・・ホントごめん・・」

ラン「(は?読み上げた?)」

ミノアの弁明を聞いて、

ランが困惑すると

ロミシュが言う。

「ひ、一つ確認だが・・なぜランがこのパーティーのリーダーに?」

てっきり適正Sのナトスがリーダーだと

思っていたロミシュが

そう尋ねると、

ナトス、エミーレ、ミノアは顔を見合わせた。

それを見たロミシュは続ける。

「後々もめ事が起きないよう、この場で必ず聞く事なんだ、一人一人答えてくれないか?」

するとエミーレが言う。

「リ、リーダーが同じ女性の方が色々相談しやすいかなぁって・・あっ私はホントリーダーは向いていないので・・自覚してます」

「何て言うか、僕の知らない学園の事とか知ってそうだし・・まぁその、そんな感じです・・」

ミノアが追従すると

ナトスも語りだす。

「リーダーの人柄に惚れ込み推薦しました、本人もやる気に満ちている為、異論は有りません」

ラン「(ほ、ほれ・・惚れ込む!?)」

ナトスの説明を聞いたロミシュは

質問を飛ばす。

「人柄ねぇ・・具体的には?」

ナトスは一拍置いて説明する。

「・・・ミノアが言ったように俺達は知らない事が多い、ランだけが知っていてランだけが気付いているそう言う知識・・圧倒的なアドバンテージを彼女はいとも簡単に手放し、フラットにして見せた・・リーダーを決める時何も知らない俺達にその有利性を説明する行為はまさにそれ・・ラン目線、わざわざそんな事せず“あんた達何も知らないみたいだから私がリーダーやるわね”っで良かった、それが通る状況だった・・みんなの足並みを揃え、議論する姿勢は今後運命を共にするパーティーメンバーへの配慮・・そう感じてしまう俺目線信用に値する人物で、その人柄を疑えない・・以上の理由で推薦しました」

スラスラと自分の考えを口にする

ナトスの話を聞いて、

エミーレとランがギョッとする表情を

浮かべる中、

ロミシュは一拍置いて答えた。

「(・・なるほど、流石は適正“S”・・)良く分かった・・」

ロミシュは名簿のリーダー適正の欄をみて

観念したように言う。

「(ランの適正はB・・悪くはないか・・)ランパーティー結成を・・認める」


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