メジューワ①
神々の世界に有る神殿“ナーオス”。
ここには17名の神が住んでいる。
絶対神セオス・アポユートを筆頭に、
その下位神が6名。
更にその下に10名の女神が居る。
このナーオスの一室で、
一同が会していた。
彼女たちは、世界・国・時代が全く違うような、
多種多様な文化を思わせるほど違った風貌をしていた。
その部屋に、15歳ぐらいの男性に見える絶対神セオスが、
50歳ぐらいの女性に見える神エクセリス・セオスに
手を引かれ入室してきた。
「セオス様、わたくしはここで、自分の席に参りますわ・・・」
セオスはエクセリスに促されると、
ひときわ大きな椅子に飛び乗るように座った。
「ありがとう、エクセリス!・・みんなも出迎えありがとう♪」
セオスが無邪気に言うと、
一同立ち上がり会釈した。
「御帰りになるのを、首を長くして待っておりましたよ」
神ディアモル・セオスがそう言うと、
セオスは座ったまま椅子ごと浮き上がりクルクル回りだした。
「いやぁ、遅くなってごめんねー109番目の世界創造が思いのほか楽しくってさーエクセリスとバカンスになってたかも♪あっ、みんな座って良いよー」
セオスに促され、16名の神と女神は座る。
セオスは回るのを止め、その前をスーッと
移動しながら続けた。
「・・僕も気になる事があったから直ぐに帰ろうとは思ったんだけどね・・・聞きたいんだけどさー」
セオスは露出の高い冒険者風の格好を
した、頬杖を突き気だるそうな
女神の前でピタリと止まり続けた。
「僕のお気に入り107番目の世界“メジューワ”が歪なんだけど、何か知ってる人いる?」
その問いに、神トゥルチア・セオスが答える。
「端的に説明します、女神ゼイア・セアーの重大な“掟破り”が発覚し殲滅いたしました、今セオス様の前に居る女神はその後生まれた新たなゼイア・セアーです」
するとセオスは無邪気な笑顔のまま言う。
「人が悪いなぁトゥルチアはー、端的過ぎだよー」
それに対しトゥルチアは、
ため息交じりに答える。
「・・はぁ・・セオス様なら御存知のはずなので・・・」
「トゥルチアは手厳しーなー」
セオスが無邪気に言うと、
目の前の女神がすまし顔のまま挨拶をする。
「・・初めましてセオス様、10番女神ゼイア・セアーです」
それを聞きセオスは元居た場所へ
スーッと移動しながら言った。
「いやー前の子より美人さんだなぁー、やっぱりここは華やかで楽しいやッ♪」
セオスは元の位置に椅子事降りる。
「僕でもわかんない事があってさー」
セオスは自身に一番近い位置に座る、
長テーブルの両端の神に視線を送り続ける。
「・・トゥルチアとアルモニアの力ってこの中ではずば抜けてたと思ってたんだけど・・・どこかに置いてきた?」
ドキッ!!
「え、えーと・・それは・・」
神アルモニア・セオスが狼狽えて
答えようとするのを見て、
トゥルチアが割って入った。
「ゼイアは“神域の種”を使用しました、その影響は甚大で修正に力を使用したにすぎません」
「君とアルモニアが手を組んでかい?」
間髪入れずセオスが聞き返した。
その質問に意図を理解したアルモニアが答える。
「・・そうですセオス様、思想も違うし、言っちゃえば仲の悪い私とトゥルチが手を組まないといけない状況だったんです」
それを聞きセオスは一拍置いて
語りだした。
「・・・一女神のやる事に二大神が関わるなんて、掟を軽んじ過ぎだとは思っていたけど・・・裏に何かあるんだね?」
何かを感じたセオスが
そう問いただすが、
アルモニアもトゥルチアも答えようとはしない。
それを見た神エレリオス・セオスが答える。
「それは私から報告するよ」
トゥルチア「え!?」
アルモニア「エレリオ!?」
エレリオスは立ち上がり続ける。
「ゼイアの後ろに“あの方”の存在があったよ、アルモニアもトゥルチアも他の神には知らせず自分たちで処理できると思ってるんだろうけど無理だよ、私は自分の価値観“掟”に従い介入させてもらった、当てが外れたねアルモニア」
それを聞きトゥルチアはアルモニアを睨む。
「アルモニアさん・・・あなた・・」
それに対しアルモニアは苦笑いを浮かべ呟く。
「はははは・・・予定とは違うけど想定内・・OKOK・・・」
「“あの方”って・・まさか・・・」
突然怯えた声で、そうセオスが言うと、
震えながら続けた。
「ぼ、僕は疲れてる・・もう寝るよ・・そうだディアモル、僕が眠るまで近くで見守ってよ」
そう言うとセオスは
そそくさと飛んで行ってしまった。
「あっ、お待ちくださいセオス様」
ディアモルも慌てて後を追う。
慌ただしく退室した二人を見送った後
残された神々に沈黙が流れる。