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リーダー③

~民間ギルドA型“アルフィーン”入り口付近~


学校を後にしたランパーティーは、

アルフィーンの入り口が見える付近まで

来ていた。

「なんか勢いでアルフィーンまで来ちゃったけど・・いきなりA型って敷居高いよね?」

エミーレが疑問の声を上げると

ランが頷き続ける。

「うん・・やっぱC型行っとけばよかったかなぁ・・私らGランクが受けれる任務なんてA型には無いよね、たぶん・・え?」

すると突然アルフィーン入り口から

大男がきりもみ状に回転しながら飛び出すのが見えた。

バシャーン!!

一同「!?」

その大男はゴミ置き場に突っ込む。

「なんでいつも人が飛んでくんのよ・・」

ランが狼狽えつつそう言うと、

エミーレも続く。

「ま、まさか・・またピューネ様!?」

「・・・いや」

それをナトスが否定すると、

ミノアが続ける。

「多分フィーディさんかタシトさんだね・・」

ギルドから駆け出してきた男が

ゴミ置き場に埋もれた男を抱え、

連れて行くのを呆然と見守るラン達に

ルイーナが声をかける。

「よー駆け出しパーティーじゃないかい?今日は何の用かな?」


「交渉成立だな」

カチン・・・

アンプレスは静かに電話を切ると、

入口へ視線を向けた。

そこにはルイーナに連れられた

ランパーティーが見える。

「タシト、俺の石板型魔導通信機に送られてくる情報を依頼書におこしてくれ」

「了解です」

冒険者たちで活気あふれるギルド内を

キョロキョロと見渡すラン達は、

アンプレスの視線に気付く。

そのままルイーナに連れられて

カウンターまで来ると

ルイーナがアンプレスに視線を送る。

「駆け出しパーティーが任務受注したいとさ」

「・・・」

呆れたようなルイーナの言い方と、

何も言わないアンプレスを見て

ランが苦笑いを受けべる。

「はは・・やっぱりGランクのパーティーが受けれるような任務・・無いですよね・・A型には・・はは・・」

するとアンプレスはグイっと口角を上げ

言い放つ。

「・・そうでもないさ」

ドン!

「なんやかんやで75件ありました、内5件は“指定E”です」

タシトが数十枚の書類の束を

アンプレスの目の前に置くと、

アンプレスは続ける。

「(サバ読みやがったなユナのやつ・・)ふぅ・・ランパーティーは冒険者任務の受注許可が下りたということだな?そして明日、受注するための任務を下見に来たと」

「えっと・・そうだけど、もしかしてあるの?A型のアルフィーンに、僕らでも受けれる任務が」

ミノアがそう言うとアンプレスは続ける。

「いやぁお前らは運がいい♪ここにある依頼書の束・・受けていいぞ♪」

ラン/エミーレ「え・・」

するとナトスが疑問を口にする。

「さっきタシトさんが言った“指定E”ってなに?」

「それはタシトに聞け、俺は忙しい」

アンプレスはそう言うと、

軽食販売カウンターのほうへ歩いて行ってしまった。

「・・・」

状況が呑み込めないランに

ナトスが言う。

「ラン、ロミシュ先生が言ったように、許可証をタシトさんに、彼も専属ギルド職員だ」

ナトスがそう言うと、

ロミシュの言葉を思い出したランが

慌てて受注許可証を取り出した。

ランは何か違和感のようなものを感じつつも、

自信なさげに申し出る。

「えっ、は、はいこれ・・許可証です・・えっと、その説明を・・・」

タシトは許可証を確認すると、

それをランに返しつつ笑顔で答える。

「クヨトウ南第三冒険者学院11期生第12班ランパーティーですね・・確かに確認しました、お返しします」

ランが許可証を受け取るとタシトは続ける。

「当ギルドマスターが先ほど言ったように、この束の中にランパーティーが受注できる任務が70件あります、それは俗にいう低ランク任務と言われるもので、冒険者であれば受注制限がないものだと言う認識で問題ありません」

タシトは一枚の依頼書を手に取り続ける。

「しかし、これを含めた5件に関しては受注できません、Eランク以上の冒険者であることが要件に含まれる“指定E”任務だからです」

「そっかそっか、僕らはまだ冒険者なりたてのGランク、その任務は受けられないんだね」

ミノアの言葉を聞きタシトは続ける。

「・・ランクだけではありません・・“指定E”・・つまりEランク帯の任務です」

「魔導武装・・」

ナトスの呟きに頷くようにタシトが続ける。

「その通りです・・ではどのようにしてランクを上げていくかご説明します」

タシトは“指定E”依頼書を置き、

70件の依頼書の束を指さし続ける。

「卒業した一人前の冒険者にとっては“指定E”も低ランク任務ではありますが、この70件の低ランク任務はそれぞれ10点の“スコア”が存在します、任務完了までの時間や任務不履行数に応じて最大10点です・・4人のパーティーで受ける場合、リーダーに40%、残りを3人で均等に分ける事になります」

「つまり俺たちなら、ランに4点他のメンバーは2点・・」

ナトスの言葉に頷きながらタシトは続ける。

「・・そして、スコア20点以上でFランク、50点以上でEランクとなります」

「なるほど・・リーダーは13件の任務でEランクになれるのに対し他のメンバーは25件・・でもそれも、最大スコアの場合・・」

ラン「・・最大」

エミーレ「スコア・・」

ナトスの最後の言葉にラン達が反応すると

タシトは笑みを浮かべ答えるように続ける。

「“任務不履行数”・・当然皆さんは初めての受注となる為0件です・・その状態を“加算Ⅰ”と言い、任務完了までの時間が24時間以内の場合最大スコアとなります、しかし“任務不履行数”が3件となったとき“加算Ⅱ”となり、24時間以内に完了できたとしてもスコアは8点・・振り分けはリーダーに3点、他のメンバーに2点2点・・1点・・かなり不利な状態と言えるでしょう・・そして、さらに“不履行数”を重ね、5件となった場合“加算Ⅲ”・・獲得できるスコアは4点、全員が1点にしかならない絶望的状況となってしまいます」

ラン「・・い、1点・・」

ランが狼狽える中、

ミノアが素朴な疑問を投げかける。

「一度“加算”が落ちちゃったらもう上げられないの?」

「恐らく無理なんじゃないか?“達成率”じゃなくて“失敗数”である以上、それを無かった事には出来ない、無理をせず慎重に吟味し受注しなければ取り返しのつかないことになりかねない」

ナトスが答えるようにそう言うと

タシトが続ける。

「ご名答・・では何をもって失敗とするか、任務不履行となる条件をご説明します、先ほど24時間以内と言いましたが、これが基本の遂行時間です、これを過ぎた場合、最大スコア10点から2点の減算が起き、48時間以内での遂行で8点となります、内訳は先ほど言った通り・・そして48時間経過した場合さらに減算、72時間以内での遂行で4点です」

エミーレ「さっきの全員1点状態・・」

タシトはエミーレの言葉に頷き続ける。

「・・そして72時間経過した時点で“任務不履行”とみなされます」

「逆を返せば、72時間以内に達成できれば加算を落とす事は無い・・」

ナトスの言葉にタシトは答えるように続ける。

「そうですね、当面は“失敗”しない事を目標とした方が無理もなく安全でしょう、先ほどナトス坊ちゃんが言ったように、何を何時どう受けるか・・その吟味が重要です」

タシトはランに視線を向け続ける。

「説明は以上となります、何かご質問などは?」

「あっ・・えーと・・時間制限があるなら明日改めて受注しに来た方が良いですよね?」

「おっしゃる通り、今受けてしまうと今から24時間が発生します、明日AM5時に来て受ける方が良いでしょう、今下見だけすまし明日何を受けるかを吟味して下さい、これらの依頼書は掲示板に置いておきます、掲示板のスペース的に貼れませんので」

これ以上質問はなさそうだと感じたタシトは

そう言うと席を立った。

するとナトスが質問を飛ばす。

「タシトさん最後に一つだけ確認してもいい?」

「なんでしょう?」

「例えばパーティーで受けた依頼を俺一人で遂行したとして、そのスコアが全部俺に入るってことはない?」

ラン「(え?・・)」

タシトはゆっくり座ると

質問に答えるように語る。

「パーティーで手分けして任務遂行する事は認められています、効率を考えた時手分けするパーティーも多いです・・しかし先ほども言ったように“失敗”しないことを念頭に置いてください、そしてメンバーの一人が如何に頑張ろうともスコアはパーティー分配です、依頼の受注もリーダーしか出来ないためメンバーであるナトス坊ちゃんがスコア全取りする事は出来ないと思ってください・・それとついでにもう一つ、誤解のないように伝えておきますが、受注権を持つリーダーがメンバーの誰かを意図的に外し3人や2人、単独で受注する事も“特段の理由”がない限り認められませんので」

「特段の理由?・・」

ミノアが疑問の声を上げると

タシトが続ける。

「再起不能な怪我や・・死亡したなどの理由・・あと・・まぁ色々です」

一同「・・・」

タシトは再度立ち上がると

掲示板へ歩きつつ最後に付け加えた。

「・・くれぐれも無理はなさらぬよう」

ラン「・・・」

その後ランパーティーは一通り依頼書に目を通した。

ナトス「・・・」

ランの様子に違和感を覚えつつも

明日AM5時にアルフィーン前に集合で

全員合意、解散した。


~その日の夜~

“アルフィーン”2階には8部屋分の居室があり。

その一番奥の部屋はナトスの部屋となっていた。

机の上の石板型魔導通信機が鳴る。

キーンキーンキーン・・

「・・(ラン?・・)」

ナトスは電話の相手を確認しつつ

応答する。

「・・ナトスだ・・」

「あ・・えっと、ランだけど・・」

「こんな時間にどうした?俺とミノアは寝て起きたら集合場所だが、明日は早いんだぞ?」

「え・・そ、そうだけど・・」

「・・・」

何も言わないナトスに

意を決したようにランが言う。

「あ、明日じゃ遅いと思って・・リーダーとして確認したいことがあるの」

「・・確認?」

「・・ナトスって、後悔してるんじゃないかと思って・・リーダーじゃないことに・・」

「・・・」

「今日、タシトさんの話を聞いて、リーダーの優位性を理解したはずでしょ・・メンバーのスコアはリーダーの二分の一だし・・“自分のスコア”を気にしてたから・・私がリーダーであることを良く思っていないんじゃないかって・・」

「・・・なるほど」

「・・・今日サイ君に話を聞いたの・・ナトスとミノアは、本当の実力を隠してるんじゃないかって、正直私もそうなのかもって思ってる・・本当は一人でも低ランク任務なんて簡単に遂行できるんじゃないかって・・私がリーダーであることが・・足を引っ張ることに・・」

「・・・フフ・・」

「え!?」

「フフッあはははは」

「え?な、何笑ってんのよ!」

「いやいや悪い悪い・・つまりこう言うことだな?リーダー決めの際その優位性を細かく説明していないと感じているランは、今日それを知った俺が快く思っていないのではないか・・もしそうならパーティー内で不協和音を生み、任務の支障にもなる、リーダーとしてこれを確認したかった・・そして何よりこのタイミング・・任務受注前ならリーダーの変更が可能・・つまりリーダーを変わることも視野に入れている・・フッ・・答えはノーだ、俺は君とリーダーを変わる気はない」

「え?・・で・・でも」

「前提がそもそも違う、エミーレやミノアと違って俺は理由をもってランを“推薦”したんだ、そしてその理由は内容よりもその行動に対して」

「え・・ん?」

「俺はそもそも説明する必要がないと論じている、議論する姿勢が白いのだと、その内容が浅かろうが関係ないんだ」

「・・・」

「そして俺はこうも付け加えている“疑えない”と」

「?・・え?・・」

混乱するランを他所にナトスは続ける。

「君自身の罪悪感から俺に疑われていると思ったんだろが、そんなことは起きえないと言う話、そして大きな誤解をしている・・俺は自分のスコアを気にしていたわけじゃない、むしろ“全取り”と言う懸念を払拭するためあの質問をしたんだ」

「ぜ、全取りの懸念!?」

「俺やミノアのスコアばかりが上昇するようなことにはならないと聞いて安心したと言う話だよ」

「そ、そうなの!?」

「しかし、そーかそーか・・こうなった原因はサイのせいか・・まっこの後の話がしやすくなったのも事実か・・」

「え?サイ君?」

「ん?だってそうだろ?サイの奴がランに吹き込んだわけだし、それがなければラン自身も俺をここまで“疑う”ことにもならなかっただろうし、こんな時間にこんな話するほど飛躍もしなかっただろ?・・俺が仲間を差し置いて自分のスコアを気にする利己的でゲスい人間に見えたかぁ・・」

「はっ・・ち、違うよ!私が悪いの、仲間を疑ったのは他でもない私・・責められるべきは私なの、ごめん!ナトス!」

「・・そこまで信用してもらえていなかったとは・・」

「本当にごめんなさい!・・仲間のこと信頼し信じてるから・・信じて欲しい」

「・・さっきも言ったが、俺はランを疑わない、君が俺を信じているというなら、それを信じるだけだ・・」

「う、うん・・」

「ときにリーダー、君が仲間の事を信頼し信じていると信じているからこそお願いしたい提案があるのだが」

「へ?・・て、提案?」

「リーダーとしてその提案を実行して欲しい、俺とミノアを信じているなら出来るはずだ・・」

「あなた達・・を?・・」


~アルフィーン1階、トレーニングルーム~


ギルドの一階に設営されているトレーニングルーム。

そこで一心不乱に槍斧を振るうアンプレスが居た。

シュ!シャン!ザバン!!

「・・・」

無言のまま汗を飛び散らせ

槍斧を振るうアンプレスだったが

背面へ槍斧を薙ぎ払った瞬間

驚愕の表情を浮かべピタリと動きが止まる。

「・・当たったかと思ったぞ・・・ミノア」

槍先ギリギリに立っていたのはミノアだった。

ミノアは両手を後ろに組んだまま

平然と返す。

「集中してるみたいで、声をかけるタイミングなくしちゃった」

「・・・」

ザクッ。

アンプレスは槍斧を地面にさし、

タオルで汗を拭きとるように顔を覆う。

何も言わないアンプレスに

ミノアが続ける。

「・・父さんがそこまで真剣にトレーニングするのって珍しいからさ・・少し気になって・・」

「フフ・・」

「?」

「フフッあはははは」

「え?何??僕なんかおかしなこと言った??」

突然笑いだしたアンプレスに

ミノアが困惑していると

涙目で笑うアンプレスがタオルから

顔をのぞかせ答える。

「いや、悪い悪い、そういうわけじゃないんだ・・ただ、昔を思い出してな・・」

「??」

更に困惑するミノアにアンプレスは

続ける。

「同じような場面が昔あった・・交わした言葉も、その相手も同じと来てる・・さらには思い詰めている俺自身の状況まで酷似してるとなると、笑わずには居られなくてな・・クックッ」

「何その“相手も同じ”って、僕はそんな場面覚えてないよ」

尾を引くように笑うアンプレスに

怪訝な表情を向けるミノアがそういうと、

アンプレスは自分を落ち着かせるように言う。

「・・ふぅ・・まぁ確かにな・・相手はお前じゃなかったか・・」

「??」

困惑するミノアにアンプレスは続ける。

「何やら気にさせてしまったミノアに一つ話しをしてやろう」

「話し?」

「そうだ、どうせ明日は任務に就くんだろ?知ってて損はないぞ・・・」


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